修士◆B1E4/CxiTwの物語



【ワークギルド】 [2]

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰りは王国交通の乗合馬車に乗り、しばらく。
僕は、ワークギルド正面の停留所で降る。
・・・・・・と、扉の横の壁に張り紙を見つける。

『Welcome! 一般仕事は1階、技術系仕事は2階へ』

1階だな・・・・・・よし、入るぞ!


僕は扉を開ける。
・・・・・・・・中は大広間のような造りで、休憩のためか、
イスとテーブルのセットが、10組くらい置かれている。
既に何人か座っており、この一帯に似合う雑多な雰囲気を醸(かも)し出している。

向かって左の壁には、郵便局や銀行にあるようなカウンターとイスがあり、
5、6名ほどの女性が、カウンター沿いにずらりと座り、応対している。
どのカウンターにも、既に何人か並んでいる。

視界の上方に、何かが見える。
思わず見上げると、『受付』と書かれたボードが、天井から吊るされている。

そして三方の壁には、所狭しと、メモ用紙ほどの大きさの紙が貼られている。
僕は一枚の紙に近づく。紙はピンのようなもので留められているようだ。

『−水路のどぶさらい−

1.仕事内容
担当地域の水路清掃。主にどぶさらいを行う。
担当箇所は、ギルド受付にて担当地域の決定後、
当該地域の警備詰め所、生活係より指示。

2.給与
全日2000G 半日1000G 全日の場合、別途昼食代支給

3.就労条件
なし

4.備考
なし』

これは・・・・・仕事?どぶさらいって・・・・・。

と、僕は、紙の横に沿うように貼られている、小さなポケットを見つける。
ポケットの中には、『受付票』と書かれた紙が入っている。
一枚抜くと、そこには、『受付票 水路のどぶさらい』と書かれている。

・・・・・・ははーん・・・・・なるほど。


要領を得た僕は、図書館掃除の仕事を探す。
『迷子のペット捜索』・・・・『デッサンのモデル』・・・・『教会前のお掃除』

ええと、どこだ・・・・・・・・・・・・!
あった!

一面、張り紙の中に、僕は目的のものを見つける。

『−中央図書館の書庫清掃−

1.仕事内容
中央図書館の書庫の掃除。状況により書籍整理あり。担当箇所は現地にて指示。

2.給与
全日1400G 半日700G 全日の場合、別途昼食代支給

3.就労条件
なし

4.備考
仕事中の読書は禁止!』

思いっきり禁止って書いてある
僕は受付票を手に取り・・・・・意を決し、一番近い受付へ。
・・・・・・・二人の先客が済み、いよいよ、僕の番になる!

?「いらっしゃいませー。受付票を拝見しますー」
僕「あ、はい。これです」

僕は、同い年くらいの女性に受付票を渡す。

?「中央図書館の清掃ですねー。今からですとー、半日労働の扱いとなりますー。
  よろしいですかー?」

これはまた・・・・愛くるしい話し方なことで。

僕「あ・・・・・はい。それで、あの・・・・・えっと、すみません。
  僕、ギルドの仕事するの初めてなんですけど・・・・・・・・」
?「あらぁ! そうですかー。
  ではー・・・・はい! これを胸に付けてくださいー」

僕は小さなバッジを渡される。文字はなく、青い鳥のような模様が刻まれている。

?「ギルドの経験10回未満の方が付ける、初心者バッジですぅ。
  恥ずかしいかもしれませんがー、規則ですのでー。
  それとー、こちらの書類への記入もお願いしますー。名簿を作成しますのでー」

簡素な書類を渡される。一番上に、名前の記入欄。
そういえば、文字を書くのは初めてだ。どんな言葉で書けば・・・・・・・・!

頭に、抽象的なイメージが浮かぶ。言語だろうか?
それが自身の言葉とリンクするような感覚に囚われ、手が動き出す。
書かれた文字・・・・・・・『アーシュ』と読める。

不思議な感覚は、次第に体に伝播し始める。呆然とする僕の目は、下の記入欄へ。

『出身地・または出身国』

あ・・・・・・・どうしよう。・・・・・・・・でえい!いっちまえ!

僕「はい!」
?「はーい。えーと、アーシュさん。出身はー・・・・・・へ? 異世界!?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女性は手元の書類と身分証を見ながら、驚きと興奮の目で僕を見ている。

?「ちょっとというかー、かなりびっくりですがー、なんて・・・・・・
  なんて素敵なんでしょう!

  ・・・・・・・あらいけない。仕事仕事・・・・・
  ではー、この書類を持ち、図書館に向かってくださいー。
  この書類にはー、受付者と就労者の名前を記していますー。
  さっきの書類は、こちらで保管しますねー。

  最後に、受付票のことですぅ。
  これはー、仕事の依頼主が指定した、およその人数分しかありませーん。
  ボックスに紙がなければ、定員オーバーで希望できませんー。ご了承くださーい。
  それでは! お元気でー!」

僕「あ、ありがとうございます」

僕は礼もそこそこに、店を出て・・・・・・乗合馬車で図書館へ出発した。