修士◆B1E4/CxiTwの物語



【世界最大教育機関】 [2]

アクデ「私はわからぬが・・・・・学園に、そういった事象に詳しい者がおるやも知れん。
    今少し待ってほしい。そなたの言葉、嘘ではないと知った今だ。
    会議に挙げてみよう。

    ・・・・・・ヒントになるかわからぬが、陛下から、そなたに学園を案内するよう
    仰せつかっている。紹介になるだけかもしれんが。

    そなたの体験、私は非常に興味あるし、本来なら私直々に案内したいところ。
    ただ、昨夜急に依頼されたため、どうしても外せない用事があってな。
    申し訳ないが、代りの者が案内する。

    衛兵!」

アクデンさんが呼ぶと、扉を開け兵士が一人入ってくる。

兵士2「は! 何用でしょうか!」
アクデ「セラウェを呼んでくれ。朝説明した客人に、本学園を案内させる、とな」
兵士2「は! 直ちに」


・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

兵士が出てしばらく、僕は部屋で待つ。僕は許しを得て、周りの本棚を見て回る。

『魔道哲学』・・・・・『勇気ある決断とは』・・・・『火炎魔法学』・・・・
『エボスの書』・・・・『勇者の軌跡』・・・・『天空の向こう』・・・・『デラ族の生活』

眺めるだけだが、題名から多種多様な本があるのがわかる。
あの体でこの小さな本を読んでいるのか。・・・・・・ちょっと笑える。

・・・・・・・・と、扉がノックされ

?「ただ今参りました。セラウェでございます」
アクデ「急に呼び出して済まない。入ってくれ」
セラウ「失礼します」

女性が一人、入ってくる。
見たところ、大人の女性という感じだ。髪は青い。
ローブは羽織らず、上着とスカートが分かれてた、畏まった服。
職員のような出で立ちだ。

アクデ「異世界から来た陛下直々の客人、アーシュ殿だ。学園の案内を一通り頼む」
セラウ「はい。承知しました」

セラウ「ではアーシュさん、ここからは私が案内いたします。
    本日は長くお付き合いさせていただきますが、よろしくお願い致します。
僕「はい。よろしくお願いいたします」

アクデ「大した話もできずにすまないな、アーシュよ。
    また会うときが来るだろう。今日は貴重な体験だった。ではまた」
僕「あ、いえ。ありがとうございました」

セラウ「それでは先生、失礼します」
アクデ「あぁ」


僕らは扉を出る。
・・・・・・・まず、資料館という建物に行くことになる。
この建物と通路で繋がっているらしいが、門から反対側にあるらしい。
僕らはそこへ向かって歩く。

・・・・・・・・・・・・・・・

セラウ「本学園の設立経緯はお聞きになりましたか?」
僕「あ、いえ。ええと・・・・城壁内の全体図を見て・・・・
  そういえば、昔はこんなにも大きくなかったんですか?」

セラウ「ええ、元々は小さなものでした。やはり巨大という印象を?」
僕「ええ! 僕の国でも、一番大きい学校で7万人くらいなので」
セラウ「それも十分大きいですね」


2階へ下りて廊下を進み・・・・・・一本の通路が窓の外、右手に見える。

僕「ええと、セラウェさんでしたよね。ここの生徒さんではないんですか?
  入口・・・・門の人たちはそう見えましたが」

セラウ「私は卒業生です。たまたま職員募集があったもので、
    ここに残ることになりました。

    表のみんなは在学生で、まぁ、アルバイトみたいなものですね。
    教育の一環で、自立心を育てるため、日替わりで担当するのです」
僕「・・・・へぇ〜〜」


さっき見た通路を進み・・・・・観音開きの扉の前にたどり着く。
兵士が一人、右側にいる。

セラウ「お客様を一人、ご案内します。開けてもよろしいでしょうか」
兵士4「ええ、どうぞ」

セラウェさんは鍵を取り出し・・・・開けた。

・・・・・・・・壁に沿って展示品が陳列されており、壁の上部には、
絵画や絵巻のようなものが掛けられている。
えっと、上への階段はないみたいだな・・・・・あれ? ここ二階だよな。
・・・・・・・・あ、端っこに下への階段がある。

セラウ「ここが資料館です。
    どこからお話しましょう・・・・・勇者様一行のことはご存知ですか?
僕「勇者・・・・・アクデンさんの話に一瞬出たような。一体何なんです?」
セラウ「わかりました。ではそこからお話しましょう」

セラウェさんが、周りの歴史ありそうな絵巻や肖像画を順に回り、説明してゆく。


セラウ「地上には太古の昔より、人々を襲い命をも奪う、魔物という人外の存在がいました。
    ただ、遠い昔に魔王エスタークが封印されて以来、凶暴さは多少収まっていました。

    しかし、魔界にて魔族の王ピサロが指導者となると、徐々に様相が変化します。
    彼は、魔界の絶対的支配者、魔王になるため、地上への侵攻を開始したのです。
    ほとんどの魔物は彼に感化され、凶暴化してゆきました。

    
    人々がかつてのような暗黒の日々を過ごす中、
    勇者と呼ばれる者が一人、ブランカを旅立ちました。
    その者は、仲間を得て数々の試練を乗り越え、人々は次第に希望を持ち始めます。

    その頃、魔物側では事件が起こっていました。ピサロの恋人でエルフのロザリーが
    人間に殺されたのです。恋人を失った悲しみから、ピサロは、
    これまで以上に人間に憎悪を抱き、遂に精神と力を暴走させてしまいます。

    しかしこれは、彼の部下のエビルプリーストが、ピサロを自滅させ
    自らが魔界の支配者になるためのに講じた、策だったのです。

    最後の戦いの直前、勇者一行の計らいで真実を知ったピサロは、正気に戻ります。
    そして、なんと勇者一行に加わり、
    強大な力を得たエビルプリーストを打ち破ったのです。

    
    この戦いの後、ピサロは、ロザリーを生き返らせた勇者一行への義理として、
    今後、人間への殺戮行為の一切をやめるよう魔物に号令を掛け、
    自身はロザリーと共に、魔界に帰ってゆきました。
 
    殆どの魔物は彼に従い、地上から魔物が去り、元から地上世界が好きな者、
    人間と共存の道を選んだ者が残りました。
    これが、今から200年以上前にあった、勇者一行と世界のお話です。


    そして、その後の伝説では、ピサロとロザリーの二人は、今も時々地上を訪れ、
    どこか美しい森の中、景色を楽しんでいると言われています」


人々に襲いかかる奇妙な生物が描かれた絵巻や、勇者という人の肖像画が示される。
勇者? 魔王? それは・・・・・本当にあった出来事なのか。

と、セラウェさんはそこを離れ、これまでとは異なる、
数々の人物の肖像画、建物の風景図を背に、説明を始める。