修士◆B1E4/CxiTwの物語



【崩れ落ちる英雄】 [3]

ふぅ、と彼は一息吐いた。
これで一応は落ち着いただろう。
あとは彼女の四肢をさらに強力に拘束にし、ダグファかゾクを呼べばいい。
そして一刻も早くペトロの安否を確認しなければ。

・・・・・・そのとき、穴を開けた際の一瞬の隙に乗じて取り出したのか、
ローブで覆われた彼女のもう片方の腕に、何かが握られているのを、彼は知った。

一条の考えがクリフトの頭をよぎる!
すぐに彼は、彼女を完全に拘束するため、呪文を発動した。
しかしわずかの差で、彼女の持つそれは宙に投げられた。


ビュン!!


彼女の姿は、一瞬にして上方の彼方へと消え去った。
その左腕から投げられた『キメラの翼』の効力によって・・・・・。

・・・・・・・・彼は残された穴を、自らの不備を強烈に責めつつ見上げていたが、
最後の大きな物音の在処を探しに、同じ階の者たちが扉を叩いたのを聞くと、
きりっと表情を正し、扉を開けた。

クリフ「驚かせてすまない。ダグファとゾクを呼んでほしい。大至急。
   それと、後でペトロの部屋に行く。
   ・・・・え?彼女? ここにはいないよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・

その後、眠りの呪をかけられ
部屋のクローゼットに押し込まれていた、ペトロの姿が発見された。
その呪は、いかなる呪文もはねのける特殊な効力を持つもので、
彼女はしばらく間眠り続けることとなった。

やがて、ペトロを名乗っていた女のおおよその行動が判明した。
体調を崩したと称した彼女は、それでも少しは勉強したいと言い、
関係者だけが入れる書庫から、近年新たに加えられた書ばかりを
何冊か持ち出していた。その書の中には、
『アーシュの知識を記載した一連の書籍』が含まれていた。

ノームの二度目の旅立ちと、ペトロを名乗った女の行動。
それらは別々の出来事だった。
しかしクリフトは、未来の接合点にその奇妙なつながりが起こる可能性と、
アーシュの存在の意味を強く感じ取った。


・・・・・・・・・・・・・・・

クリフ「ペトロは今も、部屋で眠っている。
   あの偽者の狙いは、君の知識だった。

   そしてもう一つの問題だが、無名書に記されているのは
   君の世界のものだけではないと、我々は解釈している。
   少なくとも、賢者トートは君とは別の世界から来た可能性が高い。

   それと、さっきガーデンブルグのハルサのことを話したね。
   彼がもし本当に別世界の知識を得ているとしたら、
   それは、これらとはさらに異なる世界のものかもしれない」

・・・・・・・・・・・・・・・・

細かい話は既に思い出せない。
いろいろなことを一気に聞かされたからだろう。
でも、最初のやりとりだけは鮮明に覚えている。
舞台は、あの会議室だった・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・

クリフ「バル。君は来月に立身の儀を迎えるね」
バル「は、はい。来月で21になりますので・・・・・」
クリフ「君を大人として迎える最後の儀式だ。君は我々と、同等の立場になる。
   そしてこれから話すことは、我々が共有すべきことだ」

ゾク「アーシュ、君もだ。
  君にまだ望郷の念があることは、我々も承知している。
  心して聞いてほしい」

そして、円卓の向こうに座るゾクさんが、口を開いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『――それでは、先日送付いただいた論文に対する質問書をお送り致します。
今回も詳細は別紙をご参照ください。
差し当たり、論文の2ページ目、装置駆動部の詳説が話題の中心となっております。
それでは、毎々のことで恐縮ですが、ご回答をよろしくお願い致します。

ファン・モール学園 科学研究所 所長:バーズ』


アーシュ
HP 17/17
MP  5/5
<どうぐ>携帯(F900i) E:旅人の服 ゾロフの靴
<呪文> ホイミ メラ