修士◆B1E4/CxiTwの物語



【レオ王国国王 シルバーレオ】 [1]

入口の両端に立つ兵士たち。僕らは右の二人に近づく。

兵士1「やっぱりジィさんか。護衛さん連れてないんで、目を疑ったぜ」
兵士2「どうも、お久しぶりです」

ジーク「こちらこそ、お久しぶりです。王様への謁見と、
    護衛の兵士をお貸しいただけないかと思い、こちらへ来ました」
兵士1「酒場もだろ。 護衛は雇わなかったのかい?身一つで来るなんて、珍しいな。
ジーク「ははは。商品の売れ行きがいつも以上に芳しくなく、持ち合わせがちょっと」

兵士1「あぁ、なるほど。わかった。そっちの人は・・・・・・・・!?」
兵士2「君のその服・・・・・! もしや」
僕「あ、あの、これは・・・・・パジャマで」
兵士1・2「ぱ、パジャマぁ!!?」

目の前の兵士さんたちが急に声を上げ、僕は面食らう。
向こう側の兵士さんたちは・・・・・聞こえなかったみたい。
でも、僕の服はしっかり見ている。

ジーク「あ、えっと、実はですね
兵士2「学校の生徒さんですか!? なぜ一人で出たんです!」

?? 何だかよくわからないぞ。話が合わないし、
可笑しがるならともかく、何をそんなに興奮してるんだ?

僕「どうしたんです? これ、持ってないんですか?」
兵士1・2「持ってる訳ねぇだろ!!」
僕「えっ?」

兵士1「お前はどこの町出身なんだ、と・・・・・!
    まさか、公家の・・・・お方?」
ジーク「いやいや! 実は王への謁見はこの方のことなのですよ!
    ちなみに公家の方じゃありません!・・・・と私は思います」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

兵士1「違う・・・世界? にほん、だと?」
兵士2「俄か(にわか)に信じられませんが・・・・・」
兵士1「ホントかお前!? どっかの山師じゃあるまいな?」

僕に指を指し、いぶかしむような目線を送ってくる。

僕「そ、そんな・・・・」
ジーク「私もアーシュさんの話を伺い驚きましたが、私には真実に思えます。
    アーシュさんは、何か企む訳ではなく、ただ家に帰りたいだけのようで。
    随分と戸惑っていまして・・・・薬草だって知らなかったんですよ!
    それで、王様かお付きの誰かに、誰かこういう事象に詳しいお方がいないかと」

兵士1「むむむ・・・・・・」
兵士2「・・・・とにかく、私は上に報告してきます。ジークさんとそちらの・・・・・
    アーシュさんでしたね。どうかお待ちください。レビ、後を頼む」
レビ「あいよ」

一人の兵士が慌てて走り去っていった。
それを見た向かい側の兵士が一人、こちらにやってくる。
レビと呼ばれた残った方の兵士が、事の次第を説明している。
この兵士はヌットさんというらしい。

ヌット「あそこの森か。じゃあ・・・・・・・わからんぞ」
レビ「だからそれが怪しいって言ってんのさ。お前みたいに、あん辺りのこととなると
   満更嘘じゃなさそうに思うやつは、結構いるからな」

・・・・・・・!
入り口の奥から、・・・・・二頭の馬がこっちへ来る。
その馬は、僕らの前に・・・・・・・・・止まった。
見上げると、先頭の馬の馬上には壮年くらいの男性が、
後ろの馬には、さっきの兵士が乗っている。

・・・・・・先頭の馬に乗る人が、馬上から僕らに話しはじめる。

?「ジィさん、久しぶりだな。護衛をつけていないというのは本当だったのか」
ジーク「あぁ、これはこれは。お久しぶりです」

顔見知りらしい目配せをジークさんにする。その目が僕を向き、真剣な表情になる。

?「モーズより連絡を受け参った。小隊長のオキュロだ。
  アーシュというのはお前か」
僕「あ・・・はい」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オキュ「なるほど・・・・・・・・・・ふむ。嘘だとしたらよく出来ている。
    その、けーたいという持ち物もな。確かにそんなもの、俺は見たことがない。
    ・・・・・・面白いじゃないか。もし本当のことなら、もっとお前の話しを聞きたいぞ」

小隊長と名乗る人は手綱を引き、馬の向きを城のほうに変える。
顔をこちらに向け、言葉短く告げる。

オキュ「王のお耳に入れてくる。暫し(しばし)待て」

そう言い残し、さっきの人と二人で駆けてしまった。
・・・・ここまで来たのに、まだ落ち着けないようだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どれくらい待っただろう。僕らの横を、何人、いや、何組もの人々が入ってゆく。
僕は入口からなるべく離れたところで、なるべく人目に付かないようにしている。
レビさんたちは旅人を迎える仕事に戻り、空は赤みを帯び始めている。

・・・・・・・・・・・と、奥から馬が駆けてくるのが見えてくる。
乗っている人は・・・・・さっきの人たちだ!

オキュ「王の許しを得た。我らが国王シルバーレオは、お前の話に興味を持たれた。
    そして、お前から直接詳しい話を聞きたいと仰せだ。
    同じ説明をさせて悪いが、私と共に城までゆき、
    国王陛下に直接説明してほしい。お前、馬に乗ったことはあるか?」
僕「いや、まったく」

オキュ「そうか。では私の後ろに乗れ。舌を噛むなよ。
    ジィさん、あんたも来るんだろ?モーズの後ろに乗ってくれ」
ジーク「わかりました。ではアーシュさん、行きましょう」
僕「はい。ええと・・・・小隊長さん、よろしくお願いします」

・・・・・馬にうまく乗ることができない・・・・と、小隊長さんが引っ張りあげてくれる。
・・・・・レビさん、アホを見るような目はやめてください。

いざ、出発!