修士◆B1E4/CxiTwの物語



【あいつ】 [4]

クル「おろ? そういやいつもの傭兵さんはどうしたんね?
   ・・・・・後ろの坊やは誰かね? ジィさんよ、弟子でも取ったん?」

坊や、って・・・・・・・・

ジーク「いや、そういう訳ではないのですが、まぁ・・・・いろいろありまして。
    彼、ミルウッドの森の辺りで不思議な体験をされたそうで、
    王様へのご報告と案内も兼ねてキングレオ城まで。
    アーシュさん、この方にはきちんと話しておきましょう」

僕「あ、はい。わかりました。
  どうも、はじめまして。アーシュといいます」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

クル「・・・・・・違う世界とな。なんとまぁ、たまげたねぇ。
   いやぁ、世の中には、ホンに不思議なこともあるんじゃなぁ」
僕「信じてくれるんですか!?」

クル「あそこには何かある。わしんがばぁちゃんからよく聞かされたそれは、
   この地方ではホントのことのように語られとる。

   見てきたと思うが、あんあたりは眺めが最高でな。それでも
   エフォンの町からここに来るまで、あの辺りはぽっかりと人が住みつかん。
   盗賊なんぞが岩山に住み着く、ずっと前からそうじゃった」

僕「あー、そうなんですか」
ジーク「この辺りではよく言われていることです。まぁ、それだけですけど」

クル「そう。まぁ言い伝えじゃ。それより坊や、これだけは覚えとき。
   最近じゃ盗賊は消えたと言うが、まだ気をつけんと。
   わしゃあ、またいつか戻ってくると思うとる。
   ・・・・・・・そういや、それが寝巻きかね。不思議な格好じゃ」
僕「あぁ・・・・はい」

ジーク「すみませんが、余りの靴はございますか?」
クル「あぁ、この坊やの分ってやつかい。・・・・・・うーん、ないねぇ」

クルミエさんいわく、後ろの森はミルウッドの森ほど深くないとか。
僕には広大な森に見えるが。

帰りがけにクルミエさんから、後ろの森に実る、パリアという実を貰う。
この、少し弾力のある茶色の殻の中には、白くてほんのり甘い、
蜜のような液と種が入っているらしい。穴を開けて中身を飲むそうだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

七日目。

昨日は、ここを抜けた先に城があるという森の、少し外れの宿屋に泊まった。
三日目に見た森とは別のものだ。

昨日からあちこちで、道端に休んだり、火を焚き食事をしている人たちを見掛ける。
この頃には、ジークさんの知り合いと何人も接触していた。

昨日の夕方訪れた休憩所はとても賑やかだった。
最初のところを除き、休憩所では人に会えた。でもあそこは、雰囲気が段違い。
僕たちのルートでは最も城に近い休憩所らしい。

8つのテントが全て埋まっており、保管庫も2つあった。
テントの収容人数を明らかに超えた人々が、そこにいた。
多くは僕らと同じように、近くの宿屋に泊まる。ただ、こういうところの宿屋は
結構値が張るそうで、金欠気味の人は同じ境遇の人と寄り集まり、野宿するらしい。
過密する休憩所の近くは宿屋の需要が尽きず、そんな代金でも営めるらしい。

休憩所は、最後の休憩所を含め計11箇所。城に近いほど多いようだ。
一足遅れで巡回があったようで、備え付けの紙は白紙ばかり。最後の休憩所もだ。
ジークさんいわく、服もろくなものはなかったとのこと。


家はクルミエさん宅を皮切りに、7軒訪問してきている。

鉄鍛冶屋のカヤモさん。幼い孫のカリエちゃんと二人暮らし。
ジークの話通り、無愛想で気難しい人だったが、なんとこの人から靴をもらえた。
ジークさんいわく、気難しいのは、人のいい性格を押し隠すための裏返しだとか。

クルミエさんと同じく、木こりのハサドさん。こっちは奥さんのポニンさんと、
小学生くらいのアフム君付き。毛むくじゃらの人だった。

大きな牧場で牛や馬を飼っていた、ダンパフパさんとシリルさん夫妻。
4人の子供、セアちゃん、カーティくん、ユケッドくん、パナくんたちに、
牧場を案内してもらったっけ。ジークさんが、亡き父を継いだばかりと言っていた。

機(はた)織り機のようなもので織物の内職をしている、ホルルお婆さん。
お城勤めの孫娘さん、リースによろしくって言われたっけ。


後の3軒は無人だった。今回は空き家が多いって、ジークさんも話していたっけ。

本書きのノーゼンさん。静かな環境を求めて町を出た、ちょっとした変わり者。
内容は人間模様・ホラー・架空の大戦記・自然史と幅広く、この国の有名人だとか。
奥さんのトーマさんとよく、近くの自然を散策するそうだ。
一人息子のハーケンスさんは今、世界を旅しており、何年も帰っていないとか。

武闘家のダイアさん。強くなるため、大自然の中で厳しい修行がしたくて
この辺りに住んでいるんだとか。
たまに地方に武者修行に行くので、旅費稼ぎのための体力仕事を求め、
留守にしているかもしれないとのこと。
兄のガイアさんも武闘家で、今はお城の方で指導する立場だとか。

職なしのエリンケさん。一人暮らしであまり素行のよい人でないらしく、
町から追い出される形で、空き家だった家に住み着いたらしい。
元々家にいないことが多いのだそうだ。

そしてどこでも、僕の服装は注目を集めるのであった・・・・・。
なんとか誤魔化せたが、どう言い訳したかは・・・・・恥ずかしくて言えない。
水場で洗濯してるし、臭くはないと思うが・・・・・他に何か着たい。


そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 


まだ夕方でもないお昼過ぎ。頭上を鳥が飛び交う。

森の広い道を抜け、大きな平原に出る。足元の草はくるぶしまでしかない。
そして、平原の入口から50mもないところ。左右に広くそそり立つ、灰色の壁!
横幅は、100・・・・200・・・・・なんてもんじゃない。でかすぎる!

壁の中央には、壁から垂直に切り出され、上が開放された入口がある。
入口の横幅もかなり広い。駅前から伸びる、大きな道路くらいある。
壁の中の奥まで、まっすぐ同じくらいの幅の道が続いているようた。
入口左の壁には・・・・入口を塞ぐ引き戸だろうか、石の板らしきものが見える。

僕らは入口に向かってゆく。
・・・・・・入口の両サイドには、甲冑を身に纏った兵士が2人ずつ、合計4人立ち、
こちらに向いている。さっきはわからなかったが、手に槍を持っているようだ。
頭の位置から察するに、壁の高さは4mくらいだろう。
壁の向こうから、屋根の平らな建物が何戸か突き出ている。特に、入口のすぐ上には
見張り台らしき塔が覗いており、兵士が一人こちら見ている。

入口から平原のほうに少しだけ、埋設された石畳の道路が伸びている。
その周辺の草はさらに短く刈られている。
僕らの前に何人かの先客がいたようで、入口で兵士と接触し・・・・・中に入った。

そして、兵士の頭上、左右の壁の入口側最端部の上に、大きく丸い玉があり、
さらにその上に、四本足で立ち、正面を向き、たてがみを揺らせ、吼え猛る様を象った、
獅子の全体像が置かれている。
また、左の壁の引き戸にも、一面を使い獅子の顔が彫られている。

あぁ、そうか。ここが・・・・・キング

そこでジークさんがこちらに向きなおり、僕に話しかける。

ジーク「ようこそ!教育の国、レオ王国へ!
    お城の方々も、学校の皆さんも、みなさんきっと、あなたを歓迎してくれます。
    さぁ、中へ入りましょう!」

ここが・・・・・・・・・。いよいよ来たのだ。キングレオ城に。
ここで僕は・・・・・・・何と言えばいいのか、いったいどうなるんだろう。

ジークさんと僕は、入口に歩を進めた。

アーシュ
HP 13/13
MP  0/0
<どうぐ>携帯(F9001) E:パジャマ 革のくつ

ジーク=カナッサ
HP 21/21
MP  0/0
<どうぐ>いろいろ E:布の服 聖なるナイフ