修士◆B1E4/CxiTwの物語



【現地からの報告】 [2]

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

眩しい朝日で僕は目覚める。
トーヤさんの宿で迎える、10日目の朝。
簡素な掛け布団が、僕を包んでいる。


1階で朝食を取っていると、宿屋に兵士が僕を訪ねてくる。
王様から僕に話があるらしい。

なんだろう?僕の研究の説明は4日後が初日だし・・・・・・あ!
もしかして森の探索のことか!?

僕は兵士に連れられキングレオ城へ。一人で謁見の間へ進む。

シルバ「朝からすまぬ、アーシュよ。
    昨晩遅く、ミルウッドの森の探索日程が決定した。
    3日後の午前に出発。10日ほどの旅になる予定だ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3日後。出発の朝。

城壁の外、出入口付近には、ゼットー小隊長さんが指揮する、30人くらいの小隊。
僕は、その近くにいる、天蓋の付いたウィブーに乗っている。
・・・・・・・・・どうやら準備が整ったようだ。

ゼット「アーシュ。今日から短い時間であるが、よろしく頼む。
    私以外は皆、ミルウッドの森について、詳しくないのでな」
僕「はい。よろしくお願いします」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出発より、3日目。

僕らは、僕が森を抜け出てきた、あのポイントに到着する。
・・・・・・馬をここで待たせ、徒歩で進むようだ。
世話係を数名残し、残りは三列縦隊となり、森の中へ・・・・・・。

ゼット「各隊、必要以上離れるな。点呼を徹底せよ」

兵の一人・・・いや三人が、方位磁石を確認しながら進む。
僕が何となく見覚えのある方を示し、全体がその方向を中心に、放射状に進む。

迷子になったり・・・・・しないよな・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5日目。

キャンプにて虫に集(たか)られた最悪な気分が、
昨日と今日、みなの心を支配していた。

そこに疲労が蓄積され、次第に雰囲気が殺伐とし始めた頃、西の方角から、
通常とは異なる点呼が聞こえる。・・・・・・呼び出しの点呼というそうだ。

僕らはその方角へ・・・・・・・・・・・・!!

前方に、光。
近づくとそこは、森の中のものではない光の降り注ぐ・・・・・・・
一面の薄緑色、草原。

僕らは草原の元に出る!
角度低く照らす日の光が、夕方が近いことを感じさせるが、
森の中と違い、開放感にあふれている。

ゼット「アーシュ、ここか?そなたの言う空き地とは」
僕「え、ええと、ちょっとまだ全体が見えないので・・・・・・・」

僕は草原を足早に歩き回る。この草原の形、見覚えある、あの形なのか。
と、僕は足元に、何か黒い糸のようなものを見つける。

・・・・・あ!これって・・・・・・・充電コード!

僕「間違いありません!ここです!」

兵士たちの間に、安堵の声が漏れてゆく。

ゼット「よし・・・・インス!ブランボ!ディプ!ここまでの経路を確認する」

森の中で方位磁石を持ち、時々紙に何か記入していた兵士たちが、
ゼットーさんの前へ。

三人「「「はっ! この通りです!」」」


ゼットーさんは大きな紙を受け取り、覗き込む。

ゼット「・・・・・・・・なるほど、思った以上に遠回りだったようだ。
    全兵集合! 点呼確認をせよ!」

兵士が整列し、班ごとに1、2、と番号が声に出され、
・・・・・・・点呼は無事終わる。だが全員、漫画のような気をつけの姿勢を崩さない。

ゼット「全員、休め。

    これより周辺地域の調査に入る。
    2班はこの先、南東の方面から森に入り、周辺を探索。
    3班は北西の方角から同様に森の探索。1班は空き地内を私とともに探索。
    各班、班長の指示に従うこと。

    夕方も近い。本日は周囲の確認を主とし、日没までに戻るように!」
兵たち「はっ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日から、僕らは草原を拠点に、周辺の捜索を行った。

草原の探索は初日に終わり、それ以降は各班の隊員が、
日替わりで1名ずつ、計3名、加えて僕、ゼットーさんが草原に残り、
夕暮れに戻る調査隊を待機することに。
夕食後、ゼットーさんと各班長は、記録地図をつき合わせ、明日の方針を決める。

夜になると、僕たちの集まる一角だけが、生きて活動しているように思える。
静けさ。日中の森の中、そこから何か、つながっているような・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・8日目。

今日まで結局、僕らは何も見つけられなかった。
生き物は小さい虫の類ばかりで、動物は見当たらなかったとか。

朝食後、全体で荷物をまとめ、森の中へ入ってゆく。
僕は今一度振り返り、この世界で最初に目にした、
あの時と変わらない光景を、最後に見た。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9日目。

森を離れ、僕らは草原を進んでゆく。
僕は、森の向こうのあの大山脈を見上げる。

行きにこの辺りに来たとき、ゼットーさんが言っていた。
南に聳(そび)える大山脈の向こう側には、レブナード、コーミズ、シクなど、
幾つか村や町があるが、森を抜けて山を越える道は、未だ開拓されていない、と。

昔から、幾人もの人間が山越えを挑んでいるようだが、
予想以上に高く険しく、途中で諦めて帰還したか、
・・・・・・・・・あるいは、二度と帰還しなかったのだ、と。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12日目の昼。
僕らは、城壁内に帰還した。