修士◆B1E4/CxiTwの物語



【大賢者】 [1]

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

教授「――――――――。それで一昨日から帰ってないってよ・・・・・・。
   お前のとこ、あいつから何か連絡ないか? 事務の話では、
   今日も連絡が取れない場合は捜索願を出す、って親御さんは言ってるらしいぞ」
?「いやもう・・・・・・・メールしても返事なくて。体調不良だと思ってたんですけど」

教授「・・・・・・・・あのさ、ちょっと今、電話してみてくれないか?」
?「え? あ、はい。ええと・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・あー。電波が届かないところみたいです」

教授「んー・・・・・・心配だよー、ホント心配。なにがあったんだよー。
   ・・・・・・・・後でうちの研究室のメーリングに流すけどさ。
   時間あったら、連絡取ってみてよ」
?「はい」

教授「それで悪いけどさ、午後の実験のTA、お前、代われるか?
   俺、その時間さ、企業の人と打ち合わせなんだよ。
   いつもあいつに任せてたからさー」
?「あーっと・・・・・・・・5時まででしたら。その後はちょっと、予定が」

教授「・・・・んー・・・・・・・わかった。頼むよ。
   それじゃ・・・・・・・・・・・・・はい。これが実験の資料。やり方はわかるよな」
?「まぁ。実験やらせて、課題を来週までにレポートにまとめさせて・・・・・
  あ、あと事前レポートの採点ですね」

教授「そうそ。まぁ採点は急がなくていいよ。あいつが帰ってきたら引き継ぎで。
   エアコンの原理とかエンタルピとか、必要なことは最初に俺が話すから。
?「わかりました。・・・・・・・では、失礼します」



廊下を歩きながら、僕は考える。

・・・・・・・・・・・行方不明だって?
・・・・・・・・・最後に会ったのは、一昨日の夜、俺が帰るときだ。
実験室の施錠、あいつに任せて・・・・・・・・。
時間外申請は出してない。10時には警備員に帰されるはずだ。

実際、警備員が来たとき、既に部屋は施錠されてて、
次の朝、鍵はいつも通り、鍵ボックスに返却されてたらしいし。

こんな身近で・・・・・・・・・・・・・あーもー。実験に集中しよう。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

?「それではー、今日からこちらのバッジをお付けくださいー」
僕「あ、え? これって・・・・・」

ここはギルドの受付。
受付嬢、アイロネートさんから、緑色の馬のような動物が描かれたバッジを貰う。

僕「・・・・・・・ひょっとして、バッジってどんなに経験積んでも付けます?」
アイ「そーですけどー・・・・・。あー、最初に説明しませんでしたっけー」
僕「たぶん」

アイ「ああー、すみませーん。
   今度のはー、ギルドで仕事した回数が、100回までの方が付けるバッジですー」
僕「はぁ・・・・・・」
アイ「これより上のバッジももちろんありますよー。
   ステップアップの証だと思ってくださーい」

ま、いいけど。
さて、今日は何の仕事にしようかな・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・これなんかいいな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

その夜。宿の部屋にオキュロさんが来る。
なんと、調査の報告を明後日行うらしい。
アクデンさんと執務室で話すそうで、昼に兵がこちらに来るから、
予定を空けておいてほしいと言われた。

僕は二つ返事で承諾する。
誰かわかる人がいただろうか。
帰れる目処が立っただろうか。

僕は、久しぶりに高鳴る胸を抱え、眠りに就いた・・・・・・・・・・。



――――――――二日後。魔術課程実戦修練地区 総合舎 執務室―――――――――

扉を明けてもらうと目の前には、じゃばら腹のアクデンさん。

挨拶を済ませると、アクデンさんは、
人間が使うには大きすぎる執務机の椅子に、どっかと腰を下ろし、
僕に対し、横の大きなソファに腰を下ろすよう、促す。


そして僕は、今日までの報告を聞かされる。
史学課程の教職員も動員しながら・・・・・・・・・・・・・・未だ成果はないという。

・・・・・・・・・・・・・・・なんだ、そうか。
これを聞かされるために、僕はここへ来たのか・・・・・。

しかし、話はここで終わらなかった。

アクデ「そなたの体験と似たものなら、実は過去にもあるのだ」

僕はアクデンさんに、かつてこの世界で起きたという、三つの話を聞かされる。