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4の人◆gYINaOL2aEの物語

サントハイムの決戦(前編)[1]
マーニャの道案内で俺とソフィアとクリフト+1名はコーミズ村西の洞窟にやってきている。
+1名とはぶっちゃけアリーナの事だ。まあ、一悶着あって今は俺の背中で眠っている。
キングレオからハバリアへ戻った俺たちは、二手に分かれて魔法のカギの入手と、お告げ所での情報収集をする事にした。
だが、それにアリーナが一人だけ反対したのである。

「すぐにサントハイムに行かないとヤダヤダ!」
 〃〃∩  _, ,_
  ⊂⌒( `Д´)  
    `ヽ_つ ⊂ノ  ジタバタ

「寄り道するのヤダヤダ!」          
   _, ,_
  (`Д´ ∩ 
  ⊂   (
    ヽ∩ つ  ジタバタ
      〃〃

「お父様…みんな…」
    ∩
  ⊂⌒(  _, ,_) 
    `ヽ_つ ⊂ノ ヒック...ヒック...


    ∩
  ⊂⌒(  _, ,_) zzz…
    `ヽ_つ ⊂ノ  


そうして、暴れ疲れて眠ってしまったと言う訳である。
あの時、サントハイムと聞いて顔色を変えた少女であったが、その後の落ち着きを見て大丈夫かとも思ったのだが。
いや…むしろ、大丈夫な訳が無いのか…。

「しかし…なんで俺が背負ってるんだろう…」

此処まで来る間に何度かした問いを繰り返す。
クリフトが僅かばかり苦笑しながらも律儀に応えてくれた。

「姫様をハバリアに置いておくと何をするか解りませんからね。私が姫様を背負うなど恐れ多い事ですし…」

「あんた、師匠の私やソフィアに背負わせる気?」

じろりとマーニャが睨んでくる。
ヒイ!と、軽く情けない悲鳴をあげる俺。
しかし、恐れ多い、ねえ。じゃあ俺は不敬罪じゃないのかな?

「いえいえ、そんな事にはなりませんよ。…それに、貴方には感謝しています。姫様を助けて頂いて」

ふーん。クリフトは本当にアリーナの事を心配してるんだなあ。
俺で言う所の――眞子様佳子様か?
あ。ちょっと解らない事もないかも。あの子達を背負うってなったら少し気が引けるかもなあ。

洞窟の最深部にあった宝箱の底を探ると、何やら小さなスイッチが見つかった。
カチリ、と押すと、地面にぽっかりと穴が開き降り階段が現れる。
こういう仕掛け好きだねえなどと軽口を叩きながら階下へと下りると、小さな研究室が俺たちの前に姿を現した。

「父さんったら…この分じゃ、色々隠し事してたのかも?
ま、あの父さんに限ってそんな事もないっか」

マーニャが父の面影を窺い知り、懐かしそうに部屋を見回す中、ソフィアが奥にあった箱から魔法のカギを取り出す。
俺は、壁際にあった本棚に何気なく視線を走らせた。
様々な本が並んでいる。
……座標融解現象……。
……魂の相似について……。
主に、学術書のようで俺にはちんぷんかんぷんだ。
マーニャの許可を得て、それでも多少解りやすそうな本を数冊持っていく事にした。
その中の一冊をぱらぱらと斜め読みする。どうやらこれは手記のようだ。

……進化の秘法……。

…これか?俺が更にページを繰ろうとした瞬間。

「――うぅん」

何やら悩ましい声と共に俺の背中でアリーナが寝返りを打った。
ぐ、ぐぱっ、む、胸が。
まだまだ幼い感じだし決して大きくはないけれど中々どうしてぶっほお。
毒男の俺はこういう状況に慣れていない為身体がびっきびきに固まってしまう。
ふと、視線を感じそちらを見ると、そこにはソフィアが立っていた。

――俺は、彼女のこんな冷たい視線を今迄見たことが無い。

いや、ちょっと大袈裟だけど。それにしても、なんだ。ジト目って言うのか。
あぁん、だけどちょっとツンとしてるソフィアも可愛いな。
業の深い感想を抱く俺をじとーっと見た後、少女はたかたかと走っていってしまった。
俺はなんか悪い事をしたんだろうか…。
アリーナ姫様は俺の背中が気に入ったのか、すやすやと暢気に寝ておられた。人の気も知らないでいい気なもんだ。

洞窟から脱出した俺たちは、マーニャとミネアの生まれ故郷でもあるコーミズの村に寄る。トルネコが待っている手筈になっていたからだ。
彼は、宿屋にいた旅の商人と腰を据えて交渉をしていた。

「いやあ、トルネコさんには敵いませんなあ」

「いえいえ、ありがとうございます」

「そういえば、以前砂漠のバザーをやっていた場所に新しい町が出来たという噂を聞きましたな」

「本当ですか?いや、それは一度行ってみたいものですね」

何やら朗らかに談笑しながら茶など啜っている。
俺は早速首尾を聞いた。

「ええ、かなり良い品が揃っていましたよ。少々無理をしてでも購入しておけば、後々楽になる筈です」

そう言って、買った品物を俺たちの前に並べる。
バトルアックス、はがねのよろい、てっかめん……武器も防具もあり、実に久しぶりの大きな買い物になったようだ。

「ライアンさんには厳しい役目を担ってもらうでしょうから、バトルアックスと鋼の鎧と鉄仮面を。
後は、ソフィアさんにも鋼の鎧を用意しました。
マーニャさんとアリーナさん、ブライさんには、このみかわしの服ですね。これは良いですよ。何と言っても軽いです」

トルネコはにこにこしながら物を並べつつ、解説してくれる。
この男、本当に武具が好きなようだ。
ソフィアが鋼の鎧を四苦八苦しながら装備しようとしている。
どうも、鎧でがっちがちに身体を固めるのを彼女は嫌がるのだ。
基本的に鎧は全身を覆う分のパーツ一式が用意されるものなのだが、ソフィアは重さで動きが鈍るのを嫌い、
その中から部分、部分を抜き出す。
今回、ショルダーガードと胸当て、腰回り、具足と言った辺りを着ける事にしたようだ。
…二の腕とか、太ももとか、布地すら無いんだけど良いのかなあ…。

「そうそう、貴方の分なんですが、鋼の鎧か、みかわしの服かを用意できますがどうしますか?
鋼の鎧は見た目通り頑丈ですが、重いです。みかわしの服は軽いですが、鉄のまえかけより純粋な耐久力は劣りますからね」

俺は、今迄幾度と無く命を救ってくれた鉄のまえかけを見た。
大掃除のときに中々物を捨てられないタイプである。
それにこれは、元々ソフィアやマーニャ、ミネアが買ってくれたもので、何となく気が引ける。

「んー。これも、もうボロボロね。買い換えときなさい」

みかわしの服を装備し、機嫌よさそうにくるくると踊っていたマーニャがひょいっと顔を覗かせてきた。
そのまま、勝手にトルネコと打ち合わせを始め、その後俺にみかわしの服を放ってきた。
勝手な女だ。…まさか、俺が遠慮するのを見越したなんて事はあるまい。

「ライアンさんがバトルアックスを使うとなると、破邪の剣が一本空きますから、貴方が使ったらどうですか?」

それを聞いたソフィアの肩がぴくっと動いた。な、なんだろう?
俺はそうっすねとトルネコに相槌を打つ。トルネコの方も、ソフィアの様子に気付いたのか、軽く頭を捻っている。
ソフィアがつつつ、と妙な足取りでこちらに近づいてきた。しかして、絶対にこちらを見ようとはしない。なんなんだ。
少女は無造作に自分の剣を鞘ごと外すと、俺に押し付けてきた。
勢いに押されて受け取ってしまう。

「ライアンさんがバトルアックスを使い、ソフィアがライアンさんの破邪の剣を使うので、ソフィアの破邪の剣を俺に…と、言う事っぽいすけど…」

「うーん、そうなんでしょうね…とりあえず鋼の剣の方は他に使える方もいませんので、下取りに出しておきますが…」

ソフィアはそんなにライアンのお下がりを使いたかったのだろうか?
俺はなんだか釈然としない気分だった。
マーニャが、アホね、と呆れたように嘆息していた。

ハバリアで合流した俺たちはお互いの得た情報を交換する。
俺とソフィアを驚かせたのは、あのお告げ所の女が消えてしまったという話だった。
なんでも、俺たち…じゃねえや。導かれし者達の倒すべき相手を告げようとした途端だったらしい。
地獄の帝王、エスなんとか。
ミネアの言うには、その地獄の帝王に消されたんじゃないかという話しだが、だとするなら恐ろしい話である。
俺、消されないだろうな?怖ぇなぁおい。
地獄の帝王って、ネーミング最悪wwwうはwwwワロスwww
なんてバカにしてみたら逆鱗に触れちゃったりしてな。なはは、そんな訳はないない。ぶっちゃけありえn




なんてなー!
ふう…長さんのいない今、このネタをやっても寂しくなるだけか…。
毎度お馴染みの一人相撲も程ほどに、俺たちは船に乗り込みサントハイムを目指す。
船上で、ブライとクリフトからサントハイムの状況について話を聞いた。
城内の人間全員が消えてしまった、か。
まるで、マリーセレスト号事件だな…まるっきりホラーだ。
しかし誰もいなくなってしまったからと言って城をほったらかしにして旅に出るアリーナ達も大概だよなあ。
と、言ってもじゃあ他にどうしたら良かっただろうかと考えると、この世界の国とか、政治とか、そういうのいい加減なんでさっぱり解らんが。

「城に赴くメンバーですが…どうしますか?勇者殿」

ライアンがソフィアに意見を求める。
此処は俺の出番!と、ソフィアと意思疎通を図るが、まだ怒ってるのかつーんとしたままだ。
ブライが訝しげな表情でこちらを見てくる。はわわ、マズイ。
俺は適当に俺の意見を言ってしまう事にした。

「えーと、バルザックと相対するのに、色々な事情からマーニャとミネアは外せないだろうし…。
アリーナも、黙ってられないだろう?」

勿論だとばかりにぶんぶんと頭を振るアリーナ。

「それに、ソフィアを加えて半分なんで…。バルザックが何処にいるか次第だけど、
出来るなら全員で、場合によっては女達を押し上げる形になるんじゃないかな。
――って、ソフィアちゃんが言ってました!」

ライアンがふむ、と頷く。
ブライやクリフトも、アリーナと離れるのは心配ではあるのだろうが、城の方も気になるしと言った按配のようだ。
ちなみにトルネコは舵取りをしている。
いや、マジで偶然だから!意図的な何かなんてありえないから!!

「では、男たちで縁の下の力持ちをするとしましょう」

男臭い笑みを浮かべながらライアンが言う。
この男、かなり頼もしい。マーニャなどは、この手の熱血漢は苦手などとぼやいていたが、
仲間を守る壁となるに最も相応しい、まさに戦士だ。

「現状の指針も決まった事ですし、一度解散しますかな」

三々五々に会議室として使っている船室を出て行く一行。
此処からはそれぞれの業務へと移って行く。とある者は炊事や家事であったり、ある者は見張りであったり。
俺はアリーナの様子が気になり、彼女の部屋を訪ねてみる事にした。
部屋の前には、クリフトとブライが所在無げに立っていた。なにやら、少女は着替えているらしい。
そういえば、アリーナ用のみかわしの服は…。

「はーい、いいわよん♪」

マーニャの声だ。どうも嫌な予感がする。
扉を開けた俺たちの前に現れたアリーナは――。

レオタードを着ていた。

しかも、ピンクの。

さらに、網タイツまで履いている

なんだ!?何が起きた!エマージェンシーエマージェンシー現況を報告せよ!
クリフトが顔を真っ赤にしてぶっ倒れた。ヤツには刺激が強すぎたか…。
戦友(とも)よ、安らかに。いずれ靖国で会おう。

「姫様!なんという格好をしておられるのですか!!はしたないにも程がありますぞ!!!」
「えー?でも、これ、かなり動きやすいししかも丈夫なのよ。トルネコも褒めてたし。
しまいにゃ着ますよ!?とか言ってたけど」

トルネコのレオタード姿とか、なにがどうしてそういう話になったのかは解らんが、
とりあえず俺は軽い前傾姿勢でテレマークを維持している。
やったよ船木ぃ、はちょっと古いか?けど、なんかそういうどうでも良い事を考えてないとなんか色々おかしくなっちゃいそうで。
こちらを見てマーニャがまた(・∀・)ニヨニヨしている。いつか死なす。
マーニャを睨んでいたのだが、ふわりと、重力から解放される感覚が俺を襲った。

「姫様!!!」

「ブラーイ!お説教はまた今度ね!!」

アリーナが俺の首根っこを掴み、強引に部屋からの脱出を試みたようだ。
なんで俺を連れて行くんだ!?死ぬ、首が絞まる、誰か、助けt……。
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