[] [] [INDEX] ▼DOWN

◆yeTK1cdmjoの物語

俺の屍を越えてゆけ[1]
「我々ヵゞτ〃(≠ゑσレ£⊇⊇маτ〃T=〃」
「ここまで来れば十分だ。さ、他のモンスターに見つからないうちに帰んな」
「……」
「何か用でもあるのか?」
「不思言義ナょ人間ぇ幸ナニ″。――レヽ⊃@日カゝ、ぉ前ぇ幸@ょぅナょ人間カゞ土曽ぇゑ⊇ー⊂をネ斤зぅ」
「できれば俺らの無事も祈っててくれや」
「……±らレ£〃T=〃、勇気ぁゑ人間達∋」

 順を追って話そう。
 魔の島に渡るには虹の雫が必要。虹の雫を手に入れるためには太陽の石、雨雲の杖が必要。太陽の石を手に入れるためには(ry
 ゲーム通り進めばやたら面倒な過程を踏まなきゃならん。
 しかし、俺としては一刻も早く元の世界に戻りたい。セーブしちゃったしね。
 太陽の石や雨雲の杖なんかを取ってられないのでというか面倒というかアレなんで、直接空から行こうと考えたわけよ。

 俺って天才じゃね?
 日本で一番最初に新一=コナンって気付いただけのことはあるくらい天才じゃね?

 で、問題はどうやって飛んでいくか。
 ヒント:ゲゲゲの鬼太郎。

 ブランコの両端をカラスが持って空飛んでるシーン見たことないか?
 カラスの代わりにキメラで代用。
 キメラは空も飛べるし力もそこそこある。ドラキーだとちょっと頼りないしな。
 そのためにキメラを捕らえて半ば脅迫のような形で取り引きを持ちかけたわけだ。

 結果、交渉成立。
 キメラ一族の命を保障するという言葉が決めてだったのかはわからんけど。
 ともあれ、無事に魔の島に辿り着いたってわけだ。

 そんなわけでハッピーバレンタイン!
 さすがゴッグ!バレンタインなんて関係ないぜ!とか言っちゃってる奴らも実は気になってんだろ?
 義理チョコでいいけどあわよくば本命を…なんて思ってんだろ?
 アレフガルドにはバレンタインなんてありませんが何か?今のパーティーは男だけですが何か?
 そもそも今日が本当にバレンタインなのかすらもわからんね。実はまだ正月を迎えてないのかもしれんし、ハロウィンすら迎えてないのかも。
 できることならば夢オチ希望。

 そんなこんなでキメラ達を見送った後、俺達は真っ直ぐ竜王の城を目指した。
 鎧の騎士やキラーリカントなんかが出てきたが、俺のヤる気を見せつけただけで逃げていった。
 馬鹿め、人間様に敵うとでも思ってるのか。

 ファミコン神拳の歩く速度が速くなったのは一刻も早く竜王を斃そうという意思の表れだな。
 っておい、待ってくれ。ちょ、速いよ、待てって。待ってくれよ!待てっつってんだろ!

「変態だす!変態が来ただす!」
「誰が変態だよ」
「いきなりモンスター相手に股間露出する奴が変態じゃなくて誰が変態だって言うんですか!」
「お、怒ることないだろ…」
「しかも元気すぎだ。なんで上を向くくらい元気なんだ」
「でっかい男はビッグマンって言うだろ?」

( ゚д゚) ←ゆう帝

(;゚д゚)  ←ミヤ王
  _,._
(;゚Д゚) ←キム皇

 ……え?何この空気?
 なんかまずいこと言った?
 ま、まあ、竜王の城に辿り着いたからいいよね?
 ……ね?


 竜王の城は玉座には左からぐるっと回らなければならない構造。
 地下の玉座に辿り着くまで魔物と戦わざるをえないはず――なんだが、魔物は一匹もいない。
 あっという間に玉座まで辿り着いてしまった。
 しかも玉座はバリア床になってるはずなのにそれすらもない。
 それどころか――

「よく来た、哀れな人間どもよ」

 ゲームとは違う現実――玉座には竜王が座っていた。
 玉座に辿り着いても竜王の姿はなく、玉座の後ろを調べることで地下に続く階段を発見するはずだ。

「お前が竜王だな」
 違う、そんなわかりきったことを聞いてどうする。
 他の魔物にはない威風堂々たる存在感、威圧感、どれをとっても竜王そのものじゃないか。

「光の玉、返してもらいます」
「返すとはおかしなことを言う。――クク、そうか、お前達は何も知らないのだな」
「何をゴチャゴチャ言ってやがる。力ずくでも返してもらう」
「何も知らぬならそれでいい。愚か者どもめ。我が力、思い知るがよい!」
「行くだす!」

 キム皇の叫びと同時に、ミヤ王とゆう帝が竜王の左右へと走る。
 ミヤ王が左下から斬り上げ、ゆう帝が右から突きを放ち、正面からキム皇の魔法。

 三人の攻撃が竜王にヒットした――そう見えた次の瞬間にはミヤ王とゆう帝は地面に叩きつけられていた。
 そして、自らの放った魔法に包まれるキム皇。

「愚かな人間どもよ、よもやこの程度ではあるまいな?」
 静かに、どこか呆れた口調で、竜王は地に伏した三人を見下ろした。

 絶望的な戦いが繰り広げられていた。
 すでにミヤ王とゆう帝の剣は折れ、キム皇の回復が追いつかないほど怪我を負っている。
 俺も立っているのが不思議なほどだ。
 皮の盾はとうのむかしに灰になり、鎖かたびらも役目を果たしていない。

「ベギラゴン!」
 キム皇の放つ閃熱系最強呪文ですらも、杖の一閃でかき消されてしまう。

「ロトの時代に使われたと云う古代呪文か。人間にしてはやる」
 微塵も疲弊した様子すらない様子で竜王が笑う。
 ミヤ王の爆裂拳を軽くいなしながら、だ。

「……強い!」
「そりゃそうだ、相手は王の中の王だからな」
「王の中の王――ふむ、面白いことを言う人間だ。それにあのラルスよりはずっと見所もある」
「どういう意味だ?」
 少しでも回復する間を欲しいがための苦し紛れの問いだ。
 だが、その問いに意外な答えが返ってきた。

「己の命を助けて欲しいがために自らの娘を差し出すような人間とは違う、ということだ」
「な……」
「わしが望んだのは亡き母の形見――光の玉のみよ。光の玉さえあればこの世界などはいらぬ」
[] [] [INDEX] ▲TOP

©2006-AQUA SYSTEM-