暇潰し◆ODmtHj3GLQの物語
〜Jacob's Dreame〜[2-13]
「もし、また彼女に会えるのなら……」
オレはアイツの事を何とも思っていなかった。
いや、そうじゃないな。
金になるとしか考えてなかった。
今思えば最低な野郎だ。
ただこの村から抜け出したかった。
もっと大きな世界を見たかった。
それだけだった。
けどその為に取った手段は、償わなくてはいけない類のものだった。
どこで魔が差したのかはもう覚えてない。
記憶にあるのは彼女の澄んだ瞳だけ。
男達にどれだけ玩ばれようとも、俺を見る視線に変わりはなかった。
そんな彼女にサヨナラを告げられた時、彼女の心に初めて触れた気がする。
けれど俺はどこまでも愚かだった。
汚れた自分に自身をつける為に、この期に及んでなお彼女を試したのだ。
約束の時より遅れて到着すると、彼女の手には赤い糸。
その宝石に彼女が落とす俺の為に流された涙を見て、ようやく決心した。
もう彼女を離しはしない、と。
この地底湖に誓おう。
俺はそこで初めて彼女にキスをした。
「もし、また彼女に……アンに会えるのなら……」
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