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暇潰し◆ODmtHj3GLQの物語

〜Jacob's Dreame〜[2-6]
「そっか〜だからパトリスあんなに親しげにしてたんだねー。
 ね、どんな人か教えて」
「そうじゃのう。たまには昔話もいいかもしれんなぁ」

そう言って、お酒をぐっと飲み干した。

「レキウスがまだ王子じゃった頃、突然旅に出たいと言い始めての。
 それで3人で一年限定の旅に出る事になったんじゃ。
 当時の王も良い勉強になれば、と楽観視しておったな」
「ほ〜う。あと1人は?」
「お城付きの女性じゃった。僧侶になりたてのな。
 レキウスは格闘に興味があったようで武道家を。
 ワシは言わずもがな魔法使い。
 3人ともレベルは低かったし、チームワークも知らない。
 外の歩き方さえ知らない、まったくの初心者じゃった。
 いつ振り返っても酷い旅じゃったのう。野宿は当たり前。

 傷は絶えず、服もボロボロ。
 それでも死ななかったのはルビス様のご加護と僧侶のサポートがあったからじゃろう。
 彼女は物覚えが早く、旅に一番早く適応したのも彼女じゃった」

目を細め、楽しそうに話すパトリス。
その様子から当時の雰囲気がありありと伝わってくるかのようだった。

「レキウスは武道家のくせに慎重じゃった。敵のスキを見てから攻撃するタイプ。
 反してワシは先制攻撃が大好きでな。
 新しい呪文を覚えた日には先頭切って歩いておった」
「え〜信じられない! 今と全然違うじゃーん」
「それだけ年を取ったという事じゃ。
 そしてロマリアからカザーブへとたどり着き、
 ヤツの誕生日プレゼントと称して鉄の爪を贈ったんじゃ」
「へぇ〜素敵ね」
「最もヤツは武器より防具を買うべきだと主張しておったがな。
 しかし嬉しそうじゃった。
 そしてその頃には、出発してから既に九ヶ月が過ぎておった。
 そこで最北の村ノアニールを最終目的地にして見事到着。
 旅はそこで終わりじゃ」

それからパトリスはレキウスについての馬鹿話を次々と真理奈に語った。
戦闘中は慎重なクセして、食事ではよく喉を詰まらせていた事。
賭け事を多少は嗜み、しかし弱かった事。
帰った後は、真面目に王としての役割を果たそうと考えていた事。
鉄の爪の元所持者の過去が、その頃を懐かしむかのように語られた、

「なるほどね〜」
「ま、そんなとこじゃな」
「面白かった〜」

2人の顔はとうに赤く染まっている。
ちょっと飲みすぎー。

「でもそしたらノアニールに寄ってからでも良かったのに〜
 どうして行くのを嫌がったの?」

小船に乗らなかった事を言っているのだろう。
旅の最終地点だったノアニールに思い出もあるはず。

「別に行きたくない訳じゃ……」
「え〜でもあれは行きたくないって顔だったもん。
 船漕ぎたかったのにさぁー」
「どうせルーラで来るんじゃからどっちも変わらんじゃろ。
 それにどうせフィリア達を迎えに行く時に行くしの。
 真理奈が気にする事ではない」
「ふ〜ん……」

はわわ〜とあくびをして、腕を枕に真理奈はテーブルに突っ伏す。
パトリスも目は虚ろだ。

「……でもホントは嫌じゃった。
 そういう場所って誰にでもあるじゃろ?」
「うん……パトリス……」

むにゃむにゃと何かをつぶやく真理奈。
パトリスは自分の手をじっと見つめて動かない。

「まぁ今さらどうしようも無い事じゃがな」

見つめているのは、指輪だ。

「……しかしお前が残した星は、今も輝いておるよ」
(あら、私は輝いていないの?)
「お前はワシの手の中に」
(いつまでも……)

薬指の指輪が光る。
それは星の瞬きのように。

「……帰ろうか。マリア」

結局2人は閉店まで目を覚まさなかった。
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