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暇潰し◆ODmtHj3GLQの物語

〜Tower of Babel〜[9-2]
  「これで勇者ロトの話はおしまい」
  「私…私、能登真理奈って言うんです」
  「のと…? そっか。これは偶然じゃないのかも」
  「でも笑えないギャグですよ」
  「そうだねw」

結局笑っておいて、プレナはキレイな色をしたお酒を口に運ぶ。

  「でも大丈夫よ真理奈ちゃん。
   真理奈ちゃんが自分の気持ちを大切にしていれば、いつかきっとあなたの世界に帰れるわ。
   だって勇者がいつも見守っているんですもの。
   これ、何のマークだか知ってる?」

プレナが真理奈の胸を指す。
アリアハンの宿屋の女将が勝手に施した刺繍。

  「それ、勇者があの後装備していた鎧の紋章なのよ。
   今では伝説の武具として有名なんだけど。
   だからこれを付けていればいつでも勇者に会えるわ」
  「勇者…ロト…」

真理奈がドラクエ世界に来た当初から付きまとっていたその名前。
今初めてそれに何だか親近感を感じた。

真理奈は決して勇者ではない。
けれど、勇者のようになれるかもしれない。
そう、それこそルビスの望むように、世界を救う事が……

商人の町に音楽が流れる。演奏しているのはスー民族。
商人の町との交流があるとは言え、未だ原始的な生活を守っている彼らの音楽は
真理奈が聴くような曲調とは違い、基本的に単調なリズムの繰り返しである。

彼らの音楽はルビス様への感謝の証なのだ。
"退屈な日々の繰り返しさえもルビス様のおかげとして喜び合おうじゃないか"
今流れているのはそういう曲である。

  「ジュードっ! 飲んでる〜?」

後ろから肩を叩かれ振り返ると、コップを片手にした真理奈が立っていた。
頭にはなぜかモヒカンの毛が…
広場の中央で盛大に焚かれている炎の灯りが真理奈の頬に当たり、微かに揺れている。
顔が赤く見えるのはそのせいだろうか。
……いや、その頭で居られても全然ロマンチックじゃないな。

  「……。どこ行ってたんだ?」

真理奈が横に座るのを待ってから聞いてみる。

  「ん? え〜っと、寝てたぁ。んでさっき起きたトコロ」
  「ふ〜ん」

ジュードは真理奈がさらわれた事を既に聞かされていた。
けれどそれを聞いたのは、パトリスがエジンベアに真理奈を迎えに行った後だった。
ジュードは刺されたプレナの方に付っきりだからだ。
フィリアがプレナの治療をしてくれたので、命にかかわる事態にはならなかったが。
そんな訳で、すぐに真理奈のところへ行かなかったのが引っかかったのかもしれない。
だからとっさに知っている事を聞いてしまった。
まぁ真理奈にはそこまで伝わってないようだが。

  「聞いたよ〜プレナさんの為に戦って兵士長やっつけたんだって?」

ジュードは酒に口をつける。あんまり旨いと思わないのはまだ若い証拠だろうか。

  「照れんなって〜! あっ、もしかしてプレナさんの事好きになっちゃった?!」
  「ちげーよ。あんな人に会ったの初めてだったからさ」
  「ムフフw そっかそっか! プレナさんキレイだもんね〜」
  「…ってかその頭なんだよ!!」
  「えへへ、面白いでしょ? 何か貰ったの〜ってかやっとツッコんだね! ずっと待ってたのに〜」
  「外せ! こっちが恥ずかしい!」
  「あ、話変えようとしてもダメだよ〜正直に言いなさい!」
  「だから〜――」

言い合いが収まるまで少々お待ち下さい

………… ……… …… …
夜が深まるにつれ、広場の火の灯りが徐々に落ちていった。

  「私さ」
  「ん?」

真理奈は膝の上でモヒカンの毛を撫でている。

  「魔王に会ったよ」
  「は?」

そんなに気に入ったんだろうか。

  「私の世界の人だった」
  「え? お前それって…」

まぁその行為に意味なんて無いんだろうけどさ。

  「うん。でも全然敵わなかったんだー」

  「そっか」
  「だからさ…」
  「うん?」
  「連合作るの、最後まで手伝っても、いいかな?」

ジュードは一瞬分からない。
そんな事でケンカしたのも、大分昔のように思えた。
でも真理奈はまだ覚えていたようだ。

  「…変なヤツ」
  「なに〜? 人がせっかくお願いしてるのにー!!」
  「手伝いとかお願いじゃねーんだよ」
  「え?」
  「俺らのリーダーはお前だ。アリアハンの王様も言ってたろ?」
  「そうだっけ?」
  「ったく…… だからさ、お前がやるんだったら、やっていいんだよ」
  「…そっか」

真理奈が嬉しそうな顔をする。

  「じゃあ改めてヨロシクって事で」

差し出されたコップにジュードは自分のを合わせる。
カツンっと音が鳴った。

  「よ〜し、じゃあ何か飲み物貰って来て!」
  「は? 俺が?」
  「そう。リーダー命令だよ〜」
  「てめぇ!!」
  「キャーww」



能登 真理奈

武道家
レベル/ 17
ちから/ 82
素早さ/ 79
体力/ 60
賢さ/ 15
運の良さ/ 58
最大HP/ 163
最大MP/ 0
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