暇潰し◆ODmtHj3GLQの物語
〜Tower of Babel〜[4]
―――4―――
四度目の航海ともなると、船揺れで寝れなかったりする事も無くなって来るものだが、
真理奈は夜、目が覚めてしまった。
ベッドの上で上半身を起こし、少しぼーっとしたまま隣のベッドで眠るフィリアに目をやる。
窓から差し込む月明かりにフィリアの幼顔が照らされて、何だかそれは、
物語に出て来る妖精の様だなぁ、と真理奈は感じるのだった。
フィリアの顔のすぐ横にはブルーが寝ている。
そのツーショットは、かなり微笑ましいものなのだが、
最近は一緒に寝てくれないブルーに、心のモヤモヤが沸きあがる。
"ブルーが可哀相だと思う"
それは、やっぱりそういう事なんだろう。
いつまでもウジウジしてる自分が悪いのだ。
でもしょうがないじゃん。と、いつもの言い訳を自分にして真理奈はベッドを抜け出す。
(夜空を見に行こう。今日はきっと天気が良いはず)
真理奈もきっとこの鬱屈した気分から抜け出したいのだ。
フィリアを起こさないよう部屋をそっと抜け出し、外に出る為廊下を進む。
「!!うわっ!!」
夜目に慣れない内に何かにぶつかってしまった。
「な、何???」
「触るな」
正面のものを確かめようとしていた手を引っ込める。と同時に、人とぶつかった事を理解する。
「あ、何だ。兵士長じゃん」
「……どけ」
彼はそう言うと、真理奈を無理矢理横に退かして進路を確保した。
「ちょ……!何なのよー」
彼はキャビン。エジンベアの兵士長。王の指示だとか言って今回の旅に参加している。
要はお目付け役だろう。アルドゥスはさすがに全てを任せる程バカでは無いらしい。
「やな感じー」
「おっ、ジュードじゃん。どうしたよ」
甲板に出ると、ジュードが船側に肘をかけ、星を見ていた。
そこにジュードが居た事にびっくりしたのと、
微妙にケンカ中だったな〜とか思い出して、思わず男言葉で声をかけてしまう。
ジュードは目の端で真理奈をチラリと見て、すぐに目を星に戻す。
「何だよ、好きな女でも出来たか?」
ジュードの隣に行き、おちゃらけた調子は止めずに肩を叩く。
「ふー……いいよな、お前は気楽で」
「あんだと〜俺だって色々あんだぞ」
少し無理矢理、場を明るくしようと試みているのだろうか。
しかしジュードは真剣な表情を崩さずに真理奈の方に顔を向ける。
「…な、なによ?」
「……」 「……」
夜の穏やかな風が肌を撫でていく。
波の割れる音が聞こえる。
時間の流れが遅く感じる。
「……お前今やる気ねぇんだよな?なのに何で俺らに付いて来るんだ?」
「…え…?」
「連合作るだけだったら俺らだけで出来んだよ。やる気が無いなら辞めちまえ」
ジュードはそう言うと、真理奈から離れて行ってしまった。
真理奈はその場に立ち尽くす。
心臓の音だけが、やけに響いた。
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