暇潰し◆ODmtHj3GLQの物語
〜Forbidden Fruits〜[6]
「はぁ・・・」
ため息。それは1回つく毎に他人を3回不幸に落としいれるものだと言われる。
しかし今の真里奈には他人の事など関係なかった。
「はぁ・・・」
携帯の画面の明かりで真理奈の沈んだ表情が微かにうかがえる。
「はぁ・・・」
これで誰かがもう9回も不幸になってしまった。
このままでは世界を救うどころか、逆に滅ぼしかねない。
披露宴が終わり、浮かれていてもいいはずの夜なのに・・・
携帯の画面では仲間と写した写メが待ち受けにされている。
画面の右上では、電池の残量表示が1つ。赤く光り、警告している。
それもそうだ。
こちらの世界には充電しようにも電気が無いのだから。
携帯充電器も使い切ってしまった。
このままでは使い物にならなくなるのは時間の問題である。
では電源を落としておけばいいだろ、と思われるかもしれない。
しかし、真理奈にはそれが出来なかった。
真理奈にとって今や携帯は元の世界と今の世界を繋ぐ唯一のものなのだ。
それが使えなくなるという事は、元の世界との関係が切れてしまう事に思える。
常に圏外なので、電池の残っている今でも使い物にはならないのだが、
ルビスがいつ電話をかけてくるか分からないし、
メールを送る機会が無いとは言い切れない。
ルビスが自分の願いを聞き入れて向こうの世界と繋げてくれるかもしれない。
現に1回は送れたのだ。
届いたかどうかはこちらでは分からないが・・・
真理奈はヒマな時、母親や友達にメールを作っていた。
未送信ボックスに残された、たくさんの届かない想い。
突然変な世界に連れてこられた事。
こっちで出会った仲間の事。
勉強より冒険が楽しい事。
早く戻ってしたいことが山ほどできた事。
それは元の世界では有り得ない今のこの状況を整理するのに一役買っていたが、
寂しさを増やす要因にもなっていた。
みんなで冒険をしてるときはいいのだ。
余計な事を考えなくていいから。
話をして、戦って前に進む。
それだけしてればいい。
思い出さなくていい。
この世界で自分だけが違うことを。
♪♪♪あの〜虹を〜渡って〜
ピッ 「・・・・もしもし」
「ルビスです。お疲れ様でした」
「・・・・・」
「この調子で―――」
「・・・・てよ・・・」
「あなたなら―――」
「帰して!!戻してよっ!!」
「真理奈・・?」
「このままじゃ帰れなくなっちゃう!!電池がっ・・・!!」
「真理――」 プツッ!ピーピーピーピーピー・・・
携帯が電池切れを告げる。
「どうして私なの・・・?ウッ・・・うぅ・・」
真理奈は携帯を耳に当てたまま泣き続けた。
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