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暇潰し◆ODmtHj3GLQの物語

〜Forbidden Fruits〜[2]
次の日、使用人に(1人を除いて)優しく起こしてもらい、再び女王の間へ。
「おはようございます。旅の疲れは取れましたか?」
「はい・・・正直なところ占いが気になってあまり眠れませんでした」
(だから星なんか見に行ってたのかな?)
無理矢理起こされた真里奈はダルそうだ。
「そうですか・・・お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
 それでは昨夜行った占いの結果を伝えましょう」
皆の息が詰まる。それを確認するように間を空け、女王は話し出す。
「イシスには古来より女王戴冠の儀式というものがあります。
 女王候補がピラミッドから先祖の財宝を1つ受け取って来るというもので、
 財宝を無事にイシスまで持って帰って来られれば女王になれるのです。
 その試練をもってして今回の婚姻が正しいのか否か定めよ、と仰せ使いました。
 ですからあなた達には次の女王候補であるプエラとピラミッドへ向かってもらいます。
 プエラ、入ってきなさい」
プエラと呼ばれた姫は、白い衣に身を纏い、背中まである髪を静かに揺らしながら
真理奈達の前に姿を見せた。少し恥ずかしそうにうつむいている。
(うわ〜可愛い〜)
真理奈の10倍はかわ・・・ごほごほっ!ナンデモナイデス。
「プエラです。よろしくお願いします・・・」
フィリーがプエラに釘付けになる。これは一目惚れしたな・・・
「・・・そして今回あなた達に授からんとする財宝は、黄金の爪です」
「黄金の爪?」
「それでは行きなさい。神の召すままに・・・」
王子の疑問には答えない女王。
「はい!」
しかし王子は女王の言葉の全てを受けて、答えた。

真理奈達とプエラは軽く自己紹介をし、さっそくピラミッドへ向け出発した。
「それにしても、儀式に我々も付いていってよいのですかな?」
「儀式とは言っても、今では形だけのものです。
 昔は女王候補と、その婚約者だけで行っていたらしいのですが・・・
 危険も大きいので護衛を連れてもいいと決められたのです」
「なるほど。それで黄金の爪についてはご存知ですか?」
「黄金の爪はイシスの財宝の中でも、一番の秘宝と言われています。
 何でもピラミッドの地下深くに眠っているそうですが・・・
 ピラミッドにはモンスターが巣食っております。
 皆様お気をつけ下さいませ。私も微力ながら善処致します」
「姫自ら戦っていただかなくても、このフィリーがあなたを守ってみせますよ!
 なんとしても黄金の爪を手に入れましょう!」
「はい!頑張りましょうね」
プエラがニッコリと答え、その笑顔にフィリーがますます張り切りだす。
「さぁ行きましょう!黄金にも勝る2人の輝かしい未来の為に!!」
「ふふふ」
いつもよりテンションの高いフィリーはむやみに鉄の槍を振り回し砂漠を進む。
危ないっての・・・
「・・・ねぇ、プエラ?イヤだったら止めてもいいんだよ?」
昨晩の事を引きずったままの真里奈が堪らずに口にする。
「どうしてですか?」
「どうしてって・・・こうなったのはプエラの意思じゃないじゃん」
「そうですね。しかしこれはイシスの姫として生まれた私の運命なのです。
 それに・・・フィリー様は楽しい方ですわ」
(えぇ〜どこが・・・?)
それはさすがに口にしなかった。
「お気遣いありがとうございます。
 大丈夫ですよ、正しいかどうかは神様が決めてくださいます」
そう言って微笑むプエラに対して、真理奈は何も言えなくなった。
多くの運命を定める王家の墓、ピラミッドはもう目の前に迫っていた。

ピラミッドは王家の墓であり、財宝庫であり、イシスの象徴であった。
見るもの誰もがその大きさに圧倒されるだろう。
そして夕日がピラミッドに沈む光景には自然の偉大さを感じ、
夜の暗闇に佇む姿に畏怖と崇高さを覚える。
ピラミッドという存在は、ファラオの力を一番端的に示しているのだ。
「こっちの世界にもピラミッドあるんだね〜ますますエジプトみた〜い」
エジプトみたい、じゃなくてそうなんだけどね・・・
「よ〜し、一番乗りだ〜!!」真理奈が正面の入り口に駆ける。
「こらっ!ここは王子である僕が一番に決まってるだろ!」
フィリーが真里奈の後に続く。
「あっ、フィリー様!私も行きます!」
「待て待て、ここは危険が無いかワシが調べてからじゃな―――」
プエラ・パトリスもピラミッドに入って行った。
皆が宝探しにワクワクしている中、残されたジュードは
「は〜やってらんねぇぜ。何であんなヤツの為に・・・」と1人ダルそうにしている。
「・・・・」コクコクッ
ジュードの隣でフィリアが同意、とばかりに頷く。
「何だ?お前もアイツ嫌いなのか?」
「・・・・」コクッ
「だよなぁ〜あのうるさいトコが気にくわねぇ。お前もそうか?」
「・・・・」
違うよ、という目でジュードを見る。
「あ?違うのか?」
「・・・・・・・・・名前、似てるから」
フィリアとフィリー。
「名前?あぁ確かに似てるな!ってか同じじゃん!ははっ、こりゃ笑える!!」
爆笑するジュードの事を軽く睨み、フィリアは脇腹にパンチを入れる。
「いでっ!!・・・何だよ・・・」
ジュードを無視し、フィリアもピラミッドに向かう。
ごめんねフィリア。あんなのと似てる名前にしちゃってごめんね・・・

ピラミッドの入り口はそのまま大回廊となっている。
が、横幅が無いので2列なって進むしかなかった。
先頭に真理奈とパトリス。真ん中にフィリーとプエラ。しんがりはジュードとフィリア。
暗く、静かな廊下に唸り声が響いてくる。そして突然襲い掛かってくるモンスター。
「げげー!!これってミイラ?!」
「そうじゃな。気をつけるんじゃぞ真理奈。ここは狭いからの」
「大丈夫だって!うりゃあ!!」
ミイラ男にお得意の蹴りをかます。体をくの字に曲げ吹っ飛んでいった。
「王家の財宝を守るモンスター、か。もしくは財宝荒らしを獲物にしとるんじゃな」
しかし財宝が眠っているのに、このピラミッドの造りは何だろうとパトリスは思う。
普通何かを隠したり、大事なものを守ろうとする場合には厳重な扉をつけたりする。
それがピラミッドにはまったく無かった。イシスの兵士が警備をしてるでも無い。
「どうぞお取り下さい」とばかりに開け放たれている。
その代わりにモンスターがいるのかもしれないが・・・
(意図的にそうしている・・?まぁモンスターは財宝に興味はないからのぅ)
「それにしてもおじいちゃん達はジュードみたいに鎧を装備しなくていいの?」
真理奈の問いかけによって思考は中断されてしまう。
「ん?あぁ、あんな重たいモン装備しなくてもワシには呪文があるからの。
 例えばスカラという呪文がある。対象者の守備力を上げる効果があってな。
 これを使えばワシやフィリアのように防御力が低い者でも、
 モンスターの攻撃に耐えれるようになるんじゃ」
「へ〜」
「むっ!信じておらんな?よ〜し、スカラ!!さっ、真理奈よ。ワシに攻撃してみぃ」
「いいの?」「あぁ。逆に真理奈の方が痛いかもしれんがな。フォッフォ」
「じゃあいくよ〜」ボコッ!!!
「!!!!!!!」
「あっ、ゴメン!やっぱ痛かった?」
「いやいや、スカラのおかげでちっとも痛くないわい・・・おおぅ・・」
パトリスは真理奈に見えないように、懐からそっと薬草を取り出したのだった。

回廊を真っ直ぐには進まず、小さな部屋を片っ端から見て回る。
その途中で宝箱をいくつか見つけたが、どれもからっぽだった。
「まぁ、黄金の爪は地下に眠っているという話じゃからのぅ」
「でもどうやって地下に行くの??」
「・・・分からん。もっと先に進まんと地下への階段がないかもしれんな」
しかし、モンスターが引っ切り無しに襲ってくるので、中々先に進めない。
大体は真理奈の一撃やパトリスの呪文で倒せるのだが、
この狭い回廊では倒したモンスターをまたぐ必要があるので面倒なのだ。
そうこうしている内に大王ガマが姿を現す。
と、それまで珍しく静かにしていたフィリーが声をあげた。
「ええい!僕はロマリアの王子だぞ!僕だって戦える!!」
一番前に飛び出し、赤いカエルに突っ込むフィリー。
攻撃を仕掛けようとした瞬間、踏み出した足元の床が抜け、フィリーは姿を消した。
「フィリー!!」プエラが叫ぶ。
穴の中からは「わ〜!!助けて〜!!」という声が・・・
真理奈がすぐさま飛び込み、フィリーの上に着地する。
上の階より暗いが、周りにモンスタ−がいるのが雰囲気で分かる。
「ぐえっ!」という声を無視して、足に力を入れモンスターに飛び掛る。
「フィリー!?」
プエラが穴から降りて、これまたフィリーの上に着地する。
「うぎゃっ!」
「あっ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「ぜ、全然平気ですよ・・・」
「そんなカッコで言ったって説得力ないわよフィリー。
 ったく、どうせ姫にイイトコ見せようって思ったんでしょ?」
モンスターを追い払った真理奈がちょっかいを出す。
「まぁ、そうなのですか?」「っ!!」
赤面するフィリー。まぁ暗くて表情はあまり見えないんだけどね。
「違いますよ!僕はただロマリアの王子としてですね!」「ふふふ」
フィリーはプエラに手を引かれて立ち上がる。
そんな2人を見て真理奈は、うまくいけばいいなと思う。
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