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◆fzAHzgUpjUの物語
[DQ4]

武術大会3
 コロシアムの救護室で目を覚ました私は、まだずきずきする体を起こしてあたりを見回した。
「デ、デスピサロは?」
 隣のベッドで横になっていた武道家さんにいきなり尋ねると、「棄権したんだ」と教えてくれた。私がアリーナちゃんにやられて気を失っている間に、決勝戦が行われたらしい。相手はやっぱり、あの悪評高いデスピサロって人で、アリーナちゃんも相当緊張していたって話だった。だけど、待てども待てどもデスピサロは決勝戦の場に現れず、痺れを切らした王様が控え室を兵士に調べさせたら、なんとまあそこはもぬけの殻だったそうだ。
「じゃ、じゃあ、優勝は」
「サントハイムのアリーナ姫だよ。なあ、アンタはサントハイムつきのギタリストらしいけど、ありゃホントにお姫様か?男の俺よりも強烈な拳打を打ち出しやがる。並の剣士だって彼女にゃ勝てねぇよ」
 ああ、思い出した。この人「ミスター・ハン」って人だ、一回目の予選で、アリーナちゃんにやられちゃってた。
「よっ……こいしょ」
 ホイミを唱えて体のずきずきを消して、ベッドから起き上がる。やっぱり優勝はアリーナちゃんだったんだ。それにしても、デスピサロが棄権してくれてよかった。あの子にはまだ、「世界を見て回る」っていう夢が残ってる。ギターがどうのって、そんなことこの際どうでもいいや。早くあの子の顔が見たい。
「メイさぁん!」
 美しすぎる放物線を描き、アリーナちゃんが飛び込んできた。ベッドに腰掛けていたのにぼすんと押し倒されて、脚が天井向いて体がL字になる。……一応けが人なんですけど、私。
「あっはは……。アリーナちゃん、優勝おめでとう」
「へ?なんで知ってるの?」
「そこの人から聞いた。……でも良かった。デスピサロが棄権したんだってね」
「いくじなしのデスピサロなんて、わたしにかかれば秒殺よ!それであの、メイさん。これ、優勝商品。はい」
 柔らかい木綿の布にくるまれた、何か大きなものを差し出された。な、なんですかコレは。……ん?こ、の、輪、郭は、ま、まさか……。
「……うっそ!?えっ、いや、何これ何これ、うわあああホントに!?あっ、ありがとう!」
 布を取り去ってそこに現れたのは、上品な木目の茶色が存在感を強く引き立たせる一本のアコースティックギターだった。この世界でも普及している楽器製造の技術がふんだんに使われているみたい。喜びに興奮して、ギターの細部の特徴を若い娘みたいに口に出した。
「すっごい、うわ、ソリッドボディになってる!しかもネックはデタッチャブルワンピースメイプルネック!?信じられない……この世界にもこんな技術があって、しかもそんなギターが私の手にあるー!」
 遅れて、王様の従者さんから黒い革で造られたハードケースが届いた。幸せの絶頂でふわふわ足のつかない地面を歩きながらみんなでお城を出た。
 その直後、嬉々とした気分をぶち壊すようなとんでもない光景が目に飛び込んできた。
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