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◆fzAHzgUpjUの物語
[DQ4]

武術大会1
 回復魔法の素質があってくれて、本っ……当に良かった。私の世界のどこに、人に向けて弓矢を打つ人がいると。
 アリーナちゃんと戦うまでに、四回の「予選」があった。予選の「せん」は「戦闘」の「せん」のほうが、この場合しっくり来そうだけれども。二回目の予選で戦った弓使いのクラウスとかいう人に、思いのほか苦戦を強いられてしまった。こっちは接近戦向きの槍、あっちは遠距離戦向きの弓矢。刺さったところが悪かったらと考えると、今でもぞっとする。鉄の盾で必死に防御しながら、ホイミと物理攻撃を何とか駆使してここまできた。途中の魔法使いの踊り子さんも、女の子なせいか打たれ弱くて助かった。
 なんか分身する変な魔物は、ホーリーランスを横凪に振り払えば必ずどれかには当たったから、意外とすんなり。今まで、槍は「突く」とか「振り上げる」しかしなかったけれど、こういう使い方もあるんだね。この方法なら、ブライ様に「グループ魔法の才能がないのぅ」と言われたのも、ある程度カバーできそう。
 アリーナちゃんと当たるのは決勝戦かと思ってたけど、実際は準決勝でぶつかった。「デスピサロ」という、やたらと強くて残酷な人がいるらしい。コロシアムに入ったときも、中の人たちはそのデスピサロの話題で盛り上がっていた。対戦相手を殺すまで攻撃をやめないらしい。物事にはたまに、手加減と容赦が必要なのを知らない人なんだろうなぁ。……そんな危ない人とアリーナちゃんを戦わせるわけにはいかない。彼女は曲がりなりにも、一国のお姫様だ。何かあったらサントハイムの国中が大変なことになっちゃう。ギターのため、そして彼女のためにも、ここでアリーナちゃんに負けるわけにはいかない。

 試合開始の声がかかった。アリーナちゃんは良い意味での手加減なしに、こっちに向かって飛び掛ってくる。彼女の動作は風みたいに速い。ときどき目で終えなくなることもあるぐらい。強烈な蹴りを鉄の盾で受け止める。左手に伝わってくる衝撃はすごかった。鉄を蹴ったら脚が痛くなるだろうと思って心配すると、そんなそぶりはまったく見せずに次の攻撃動作に入っていた。
 ホーリーランスを振り上げると、アリーナちゃんの「鉄の爪」についている鉤と鉤の間に受け止められてしまう。盾を装備できないアリーナちゃんは、とてつもない動体視力で相手の攻撃を見切っている。腕力では彼女のほうが上。ってことは、ここで私が勝つには、温存していた魔力で魔法攻撃に出るしかないってこと。
 ちょっと情けなく映るけど、私はアリーナちゃんに背中を向けて走り、距離をとった。外野からちょっとしたヤジが飛んできたけど、……そんな言葉程度で傷ついちゃうほどこっちは若くないんです。くぅ……。
「メラ!」
 ハンドボール大の火球が飛ぶ。予想では、アリーナちゃんにメラがぶつかるのはもっと遠い場所のはずだった。けれど、背中を向けて距離を取ろうとする相手をみすみす逃がすほど、アリーナちゃんは容赦を持ち合わせてない。
 アリーナちゃんのスパンコールドレスにぶつかって煙を上げる火球が弾けるのと同時に、右腰のあたりを思い切り蹴られた。吹っ飛ばされて壁際に転がる。かなり痛いけれども、寝っ転がってる暇はない。わああ来た来た来た来た!やばい! 距離はあんまりない! 回復しないとノックアウトされちゃう! でも攻撃もしないと勝てない!
 ……よし決めた。ヒャドを唱えよう。それでなんとか距離を作って、そのあとはホイミで行く!
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