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◆fzAHzgUpjUの物語
[DQ4]

エンドールへの旅の扉
 キメラの翼でフレノールに行き、南下して小さな祠にたどり着いた。朽ち果てたブロック積みの壁が崩れて、向こう側が見通せるようになっている。アリーナちゃんたちに敬礼してから見張りのサントハイム兵が見せてくれたものは、……私をこの世界に連れてきてイアンさんから引き離した、あのぐるぐる水だった。
「この先はエンドール国領となります。出現する魔物もサントハイム国領とは違いますので、どうか、お気をつけて行かれますよう……。我々は姫様たちのご無事をお祈りしております」
 姫様「たち」とは言ってるけど、この兵隊さん絶対アリーナちゃんのこと好きだ。目で語ってる。クリフトくん。うかうかしてられないんじゃないの……? こんなに優しくて大丈夫なのかな、この人は。
「ここから先がエンドールなのね。武術大会に選手として出場できるだなんて……!きゃ〜っ!夢みたい!」
 喜びにくるくる回るアリーナちゃんが、私の目には大回転しているように見える。喉の腫れや呼吸のつらさは王様がくれたさえずりの蜜の残りでよくなったけど、相変わらず熱は下がらない。ただ、熱があるのに全然体はつらくないんだよね。我ながらおかしな体だなぁ。
「よーし!行くわよ!いざ行かん、武術大会へ!」
「エンドールへ、じゃろうに……。姫様のおてんばには本当に先が思いやられるわい。旅の扉なんぞ、老体をいじめるもの以外の何物でもありませんぞ」
 ぶつぶつ文句を言いながら、さっさと「旅の扉」に飛び込んでしまったアリーナちゃんを追ってブライ様が渦の中に脚を入れ、ゆっくり沈んでいった。続くクリフトくんも、新天地への期待と不安で複雑な顔をしながら入っていく。
 もしかしたら元の世界に帰れるかもしれないと淡い期待を抱いた。でも、あのときの渦は「反時計回り」だった。この旅の扉は、時計回り。右回転をゆっくりと繰り返している。
 ものはためしだ。戻れたらそれでラッキー、戻れなかったらまたアリーナちゃんたちについて反時計回りの渦の謎を突き止めればいい。

 洗濯機で洗われている服の気持ちがよく理解できた。向こう側の旅の扉につくなり併設の宿屋のご主人に
「お手洗い貸してください!」と言って返事も待たずトイレ駆け込んで、今朝食べたものと盛大な再会を決め込んでしまう程度には理解できた。具合が悪いときに旅の扉はヤバイ。本当にヤバイ。
 白い顔で出てきてうがいをする私を見るなり、アリーナちゃんは私の横で何か言いたそうにこっちを見ている。
「どしたの?」と聞くと、ぐにゃー、と視界がぶれた。
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