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◆fzAHzgUpjUの物語
[DQ4]

さえずりの塔1
 お城って初めて見たけど、綺麗だったな〜。ヨーロッパの観光名所なんて、きっと比べ物にならないくらい。本音を言えばもうちょっとゆっくりお城の中を案内してもらいたかったけど、そうは問屋がおろさないって奴だった。

 旅芸人のメイさんを助けたあと、フレノールの南の洞窟へ黄金の腕輪を戻しに行こうとしたら、とんでもない問題が起きてしまいました。うん、話を聞けば誰だって想像はつくだろうけど、案の定……抜けなくなっちゃってました。
 腕輪がきつくて抜けないんじゃないのがまたタチが悪いの! なんで抜けないかって言うとね、手首のところまできたら、腕輪がきゅう〜っと縮まるのよ、これが! で、二の腕のほうまで持っていくと、ぐい〜っと輪の部分が広がるの。別に私としては汗疹が出来ないなら困ることもないけど、ほかの三人の心配と不安が痛くて仕方ない。
 まーまー、なんとかなりますって〜なんて言いながら、私たち四人は砂漠のバザーにたどり着いた。この世界のドライフルーツを食べ歩きながら武器屋や防具屋を回って装備を整えていると、サントハイムの紋章をつけた兵隊さんが、アリーナちゃんを見つけるなり吹っ飛んできた。
 こんなところまで兵隊さんが探しにくるなんて、よっぽどのことがあったに違いない! ということで、バザー見物も終わったからと彼女たちの国、サントハイムに。戻る途中の魔物は鬱陶しかったけど、クリフトくんと新しく買った「ホーリーランス」はものすごく使い勝手がよくて戦闘が苦にならなかった。

 サントハイムに着くと、すぐに玉座の間に通された。アリーナちゃんのお父様であるサントハイム王が、必死に身振り手振りで何かを訴えようとしていた。なんと、突然声が出なくなってしまったのだそうだ。
 泣き出しそうなのを我慢してアリーナちゃんは拳を固く握り締め、玉座に座るお父さんの前から立ち上がった。
「待っててねお父様。絶対に、お父様のお声を取り戻してみせるわ!」
 意気込みも強く、アリーナちゃんは旅芸人のメイさんからもらった盗賊のカギで、お城のすみっこにあった小屋みたいに小さな部屋の扉を開けた。部屋の中では、ブライ様なんかまだ若いって思えるほどよぼよぼのおじいちゃんが、一生懸命ノートに羽ペンを走らせていた。ゴンじいと呼ばれているその人の話によると、サランの町にいる吟遊詩人のマローニさんは、喉を痛めたことがあるのに今も美しい声で歌っているから、話を聞きに言ってみてはどうかと言われた。
 マローニさんは「私が喉を痛めたときは砂漠のバザーで見つけた『さえずりの蜜』を飲んだのです」と言う。砂漠のバザーに行けば「今はもうさえずりの蜜はないんだよ。西にあるさえずりの塔にはエルフが降りてくるって言うけど、ひょっとしたら……」と、なんとも見事な堂々巡りをやってのけてしまった。

 そんなわけで、私たちは今、さえずりの塔にいるんです。が、……。
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