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◆fzAHzgUpjUの物語
[DQ4]

フレノール:夜
「その腕輪、本当にあいつらに渡していいのかしら……」
 不安げな声でアリーナちゃんが呟いたのは、夕方に差し掛かる前にフレノールへ戻ってきたときだった。人攫いたちからの手紙には「黄金の腕輪を持って『夜』、墓場へ来い」と書いてあった。夜までにはまだ時間がある。
 確かにね、お三方の言うように、この腕輪が本当に強大すぎる力を持っているものだったら、悪い人に渡したところで悪いことにしか使われないだろうって考えるのは当然のことだよね。……だけど、なんでよりによって
「黄金の腕輪の偽物を作りましょうよ!それをあいつらに渡して、これはもう一回あの洞窟へ戻しましょう!」
「さすが姫様!このクリフト感激いたしましたぞ!」
「バレたとしても、あの娘さんを助け出す時間稼ぎになればいいじゃろ」
ってなるんですか。そんでもって、なぜその腕輪の偽物を私が作るはめになるんですか。
 クリフトくんがもっていた聖なるナイフの柄に取り付けてあった金細工をひとつずつはがしていく。ありがたいことに、私のメイク道具の中にあった金属製の毛抜きや眉きりバサミが、金細工をギリギリはがすのにはぴったりだった。
 武器屋のおじさんに取り外した金細工を溶かしてもらってから、道具屋で買ってきた玩具の腕輪にぴったりはまるよう、形を整えてもらう。玩具の腕輪と外側にする金をくっつけてから、聖なるナイフの柄にはまっていた青い宝石を入れて、完成。
「……ねえ、アリーナちゃん。ちょっと見た目がチープすぎる気がするんだけど」
「大丈夫よ!渡すのはどうせ夜だもの。暗いから奴らの目を欺くには丁度いいわ。それに、人質さえいなくなってくれればそれでいいの。バレたとしても、あんな連中わたしがぶっとばしてやるんだから!」

 静かな墓場の森の影から、腕輪を渡せと人攫いが言う。アリーナちゃんが神妙な面持ちで投げたフェイクの腕輪は、月の光の中で鈍く光りながら人攫いたちの足元に落ちる。赤いドレスの偽お姫様が突き飛ばされて解放された。アリーナちゃんが転びそうになる偽お姫様を受け止めると、人攫いはフェイクの腕輪を拾い上げてすたこらさっさとどこかへ行ってしまった。……神様。今までうそをついたことは何度もありますが、人に対して詐欺をはたらいたことはありません。今回一度限りでいいので、今だけ見逃してください……。
「ああ、ありがとう。あたしメイ。ごめんなさい、もう気づいていると思うけど、お姫様でもなんでもないただの旅芸人よ。……そうだ、助けてくれたお礼に、このカギをあなたたちにあげるわ」
 アリーナちゃんの手にそっと、変わった形のカギを握らせて、私と同じ名前の旅芸人はドレスの裾を夜風に翻し、付き人役の男性二人と闇の中へ消えていった。
「……ああまで簡単に騙される悪人なんざ、かわいいもんじゃのぅ」
 つぶやいたブライ様が大あくびをしながら宿へ向かって戻っていく。みんなで続いていくさなか、私は左腕にしっくりと納まっている黄金の腕輪を革ジャンの上から撫でた。魔力の匂いも力の気配も、微塵も感じないのは変わらない。



Lv.9 メイ
HP:34/44 MP:23/51
E 鉄の槍
E うろこの盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス・黄金の腕輪

戦闘呪文:ホイミ・メラ・ヒャド
所持金:647G
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