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◆fzAHzgUpjUの物語
[DQ4]

魔法発動対象決定論
フレノール南の洞窟1

「お前さん、どうやら不器用なタイプらしいの。ただ、濃い魔力の匂いは強く感じ取れる。使用適正としてはメラ系とイオ系じゃな。グループ攻撃魔法のギラ系やバギ系には残念ながら恵まれとらんのー」
 痛いところを思い切り突かれて、私はぐっと唸ってしまう。手先の器用さには多少の自信があります。でも、性格とか内面とか気質とか、そういう精神が司ってる部分の器用さは欠如してるっていうかもう、皆無です。
「対象をひとつ、またはあなたが『味方である』と認識した相手全員に限定する、回復・味方補助の魔法も使えるようになると思います」
 暗い洞窟にもぐり、小難しく魔法理論を説いているのは、さっきの三人いた人の二人であるクリフトくんと、さっき手紙を覗き見て私の同行を決意させたおじいちゃん、ブライ様。クリフトくんは「サントハイム」という国の神官で、ブライ様は王宮お付の魔法使いだ。魔法に長けているのは当然だよね。そう言われてからブライ様を見ると、重力に逆らったスーパーヘアもなんだか魔力めいたものに見えてくる。
「ねー、あなたたち二人揃って、もっと楽しい話はできないの?メイさんだって退屈よね?ねっ?」
 先頭を堂々と進んでいくのは、彼ら二人が仕えているサントハイム王家のお姫様、アリーナちゃん。お姫様だなんて、最初は信じられなかった。さっきの人攫いに連れて行かれちゃった娘も「お姫様」って呼ばれてたし。
「魔法は、発動するだけじゃダメなんじゃ。『誰に』『どこに』に向けて発動した効果を影響させるのか。魔法を使えるということがわかったら、次に重要なステップはそこ、『発動の対象』じゃ」
 魔法の効果をぶつける相手は、特例を除いて大きく分けて五つのタイプに分かれる。ひとつめ、敵と認識した相手単体。ふたつめ、敵と認識した相手一グループ。みっつめ、敵と認識した相手全員。よっつめ、味方と認識した相手単体。いつつめ、味方と認識した相手全員。
「対象をひとつのグループと認識することは、とても簡単だと思う人と、とても難しいと思う人に分かれます。メイさんはきっと、そういったことが少し苦手なんでしょうね」
 優しい苦笑を浮かべるクリフトくんが、ブライ様が私にさっきからチクチクと突き刺している「不器用」という言葉をやわらげてくれている。むう……優しさが痛いとはこのことか。
「『あのひと一人!』っていうのとと『あのひとたち全部!』っていうのは簡単でしょう?一か全かですから。けれども、『あのひとたちの中のあそこだけ!』ってグループ視するのは面倒くさいですよ。なんかこう、魔法を打ち込んだら効果がはみだしちゃいそうで」
「ぷ……。魔法の発動効果を『はみ出す』なんて言い方で表現する奴は初めて見たわい」
 長くて白いひげに隠れた口元で、ブライ様が笑った。
「……あっ、ねぇ!メイさんの話を聞かせて!わたし、外の世界ってまだちゃんと見回れてないのー!」
 暴れ牛鳥の角を掴んで投げ飛ばしたアリーナちゃんが、まばゆい笑顔を浮かべて振り返った。人数が多いと頼もしくてつい忘れてしまう。今が魔物との戦闘中だってことを。
 気を取り直すと、たぶん食べたっておいしくはないであろうオバケきのこに、ブライ様から習いたてのヒャドをぶつけた。
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