総長◆Lh6WfP8CZUの物語
俺と凶器[2]
ねえ…総長さんその剣持って何も変化はなかった?
握ったあと剣が離せなくなったりとか意識が朦朧としたりとか…
ない。
俺はもう一度剣を拾う。そして置く。それを何回か繰り返して見せる。
こんな事って…
ねーちゃんが困惑の表情を見せる。
だから何なんだよ!とねーちゃんに詰め寄った。
呪われた装備品についての知識はある?
呪われた装備…。あるわけねーよ。この世界の事なんてまだまだわからない事だらけだ。
聞いた所によるとこの世界には「呪い」のかかった武器や防具があるらしい。
そういう類のものを手にすると気が狂って仲間を斬りつけたり金縛りにかかって動けなくなったりしてしまうらしい。しかも一度装備してしまうと本人の意思では外せなくなり外すには特別な魔法や特別な儀式が必要だそうだ。
まさか…この世界に呪いそのものを受け付けない人間がいるとは…
ピエロが呟く。この世界…。ああそうか。きっと俺は元々この世界の人間ではないから呪いがかからないのでは
ないのだろうか。どういう理屈だかさっぱりわからないしわかりたくもないがとにかく俺は呪われないのだ。
という事はこの剣を持っていっても問題ないだろう。
俺は再度剣を拾い上げた。見れば見るほど妖しいオーラを放っている。
それは「はかいのつるぎ」という剣よ。
絶大な攻撃力があるわ。ただしその呪いが故に普通の人なら動けなくなってしまうものなのだけど…。
ねーちゃんが説明してくれた。一振りしてみる。
軽く振っただけなのに空気を切り裂く鋭い音が室内に響く。こいつはすげえ。
もう二度、三度と振ってみる。ちょっと強めに振ってみる。思いっきり振り回してみる。
すげええええ!気に入ったぜ!俺はこいつを新しい相棒にする事を決めた。
はかいのつるぎ。なかなか素晴らしいネーミングセンスじゃねえか。
なんたって破壊だからな破壊。まさに破壊王たる俺に相応しい剣である。
この剣なら魔王だかなんだか知らねえがズッタズタのボロボロにしてやるぜ!!!ガハハ。
…やっぱり少し精神に異常が…
いやしかしこの程度なら支障はあるまい…
また二人でコソコソ話してやがる。
しかし呪われた武具が問題ないとなるとここには強力な武具なんて山程あるぞい。
なんせ誰も装備できなくてまとめてここに放置してったからな。
とピエロが言った。マジか!?そいつは素敵だ。俺は呪われた武具を片っ端から漁った。
探せばもうほんと沢山あるある。どいつもこいつも不気味な風貌でかっこいいぜ。
「はかいのつるぎ」
「じごくのよろい」
「ふこうのかぶと」
の三つを装備した。体の奥底から力がグングンと湧いてくる。なんだか今の俺なら魔王にもタイマンで
勝てそうだ。
悪魔…悪魔じゃ…
おっさんを始め以下みんなが俺を見て絶句している。こいつらは本当にファッションセンスってもんが
わかっていない。
キャー総長ちゃんかっこいい!!!どうしたのそれ!?
いつのまにか追いついて来た勇者が駆け寄ってくる。え…もしかして今ここでこの俺の格好いいコーディネートを理解できてるのは勇者だけなんじゃ…それはそれで逆に不安だ。
わたしも新しい服欲しい!うーーーーんっとかわいいやつ!
あーあ、これは長引きそうだ。女ってのは服を買いに行くとあーでもないこうでもないと異常に時間がかかるがそれはこっちの世界でも同じらしい。総長ちゃんもよさそうなのがあったらこっち持ってきて!だと?
ほほう俺のセンスを頼るとはやっぱこいつなかなかわかってるじゃねえか。どれどれ。
俺はさっきまでとは打って変わって女の子目線で使えそうなものを探し始めた。
かわいくてそれでいて強さも兼ね備えた実用的なやつ。うーんこれはこれで意外と難しい。
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