総長◆Lh6WfP8CZUの物語
再会[2]
…ちゃn……そうちょう……てば…
もう!総長ちゃんてば!ボーっとしてないで呼んでるんだから返事してよ!
ふと我に返るとそこにはみんなが立っていた。
もう!何一人で恐い顔してんの!探したんだよ!そろそろ出発する段取り決めようよ!
総長ちゃんがいなきゃ話進まないよー
なんだか勇者の顔を見ると一気に気が抜けた。
そうだ。何も難しく考える必要はない。一つ確実なのはあいつにしろ魔王にしろいけ好かねえって事だ。
俺のぶっ飛ばすリストにひとしの名前が加わっただけだ。
知能腕力共に常人を遥か凌駕して優れている俺だ。グチグチ考えるのは性に合わねえ。
天才は悩む必要などないのだ。俺が正しいと思ったをするしかないのだ。
ッしゃァ!この国にきて色々あったがとにかく気合入れ直してガンガン行くか!
また長い船旅になるからおまえら心しておけよ!
ならないわよ。
ねーちゃんがあっさりと否定する。え…なんでっスか…
次の目的地はアリアハンよ。ルーラでアリアハンへ飛ぶわよ。
お父様から連絡があったの。アリアハンへ行けば道が開けるって。
ああそうですか…俺の気合は空回りですか……?
て連絡があったってどういう事だ?
夢よ。夢に出てきたの。
ああなるほど。まああの糞イケの魔力ならそのくらいできるだろうよ。
しかしせっかくの睡眠時間なのにあんなのが出てきたらたまらんな。俺の夢には絶対に出て来ないで頂きたいもんだ。
ん?しかし船はどうするんだ?俺達だけ移動してもダメだろ?
船も一緒に飛ばせるよー!
言葉に出したわけじゃないが俺の疑問を察知したらしく勇者が答えた。
この船にはよくわからん護符みたいなもんが付いてて勇者がルーラで飛んだあと自動的に近くの海に着水するらしい。
なんだかわからんがすげー仕組みだ。というかそもそもルーラって魔法自体がすげえ。
攻撃呪文でも回復呪文でもないから軽視しがちだが瞬間的に長距離を移動できるなんてありえねーだろ。
この世界の人にはそれが当たり前過ぎて何とも思わないだろうが俺にはどんな呪文よりも強力な呪文に思える。
……この呪文を応用したらすっげー破壊力の呪文が作れそうだな。まさに逆転の発想。
まあ今考えるのもめんどうだしもういいや。
俺達は最後の挨拶にヒミコの所へ向かった。
ヒミコは多少疲れた顔をしている。そりゃそうだろうな。わだかまりは俺様が大宴会により溶かしてやったにしろ民衆共から不信を募った事に間違いは無い。
まあしかしこいつならこの国をしっかり立て直す事ができるだろう。
そうかもう出発するのか。もう少し留まって欲しい所だがそなたらも目的がある旅故仕方ないの。
ヒミコはそう言うとさらに続けた。
ゆっくり礼を言う暇もないな。そなたら何か望みはないか?できる限りの事はするぞ。
マジか。何かないかな。別に金に困ってるわけでもねーし。しかしせっかくの機会だ。あっそうだ。
大事な事を忘れていた。俺はヒミコにやまたのおろちの墓を作った事を伝えた。
まあぼちぼち暇な時にでも花でも酒でも備えてやってくれ。
わかった。あの怪物も今回の件では利用されただけだからな。今日この日を記念日としやまたのおろちは古来のようにこの国の土着の神として毎年手厚く奉る事を誓おう。
他には何かないか?
他には…そうだ俺達も酒をもらおう。ここの地酒はまた格別だった。樽でたくさんもらおう。
そう思いつき言葉にしようとした瞬間勇者が遮って話だした。
ヒミコさま。わたし達は望む事はただ一つ。ジパングをみんなが笑顔で過ごせる国にして下さい。
そうか…。そうじゃな。今度そなたらが来る時までにはそなたらが望むような国にする。
ジパング正統王室相続女王の名にかけてでもな。また顔を見せにきておくれ。
勇者はにっこりと微笑む。ヒミコのつられて微笑む。
よく見ると兵士達もニコニコしている。急にこの場が和んだようだ。やっぱ勇者はすげーな。
ってそうじゃねーよバカ!だいたい将来的にはこの国も俺の支配下になるんだからそういう事はむしろ俺に言え!
俺が望んでるのは酒だっつーの!酒をよこせ酒を…ッ痛ッ!!!
ねーちゃんが俺の耳をつまんで歩き出す。いやまてまだ帰るのは早い!勇者が何言おうが俺の用は済んでねーって!
城の外まで引っ張られた。もう!オーブももらったんだしもういいでしょ!どうせ総長ちゃんのことだからお酒でもくれって言おうとしてたんでしょ?
この女鋭い。あーあせっかくの機会だったのに…しょうがない今回は諦めるか。
すいませーーーーーん!
どこからか呼び止められる。ああなんだてめーか。そこにはあの例の酒場の店長が立っていた。
本当に…本当に色々ありがとうございました!
もう出発されると聞きまして…何せうちにはお酒しかないものでせめてもの気持ちです。
と俺に大きな瓶を差し出した。これは…店長GJ!
まあ気を使ってもらってすいません…。ほら!ちゃんとお礼を言いなさい!
ねーちゃん…いつからそんなお母さんみたいなキャラになったんだよ。
俺はなされるがままに礼を言った。おまえの店はなかなか酒も料理もイケてたぞ。
世界征服した暁にはまた来てやる。
店主が見えなくなるまでみんな手を振っていた。
さて。そろそろ出発するか。
勇者が目を閉じている。久しぶりだなあ家に帰るの…そう呟いた。あっそうかアリアハンてこいつの地元なんだよな。
ルーラ!!!!!!!
©2008-AQUA SYSTEM-