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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

東へ[4]
……寒い…

おうやっと来たか。おせーぞてめーら。とっととやまたのなんとかってやつ倒して帰るぞ。
俺は寒いんだ。

ぃぎやぁぁぁぉおおおぁぁぁおううううぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!
パンツ。

ぞうぢょーーーーぢゃーーーーんんん!!!!!!
勇者。

二人とも俺の声を聞くなり涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして奇声を上げながら飛びついてきた…おいコラ!あっ鼻水ついたきたねっつの!離れろ!あーもう!
こいつらほんと涙もろいな。何はともあれ俺たちはようやく合流した。

絶対来てくれるって信じてたんだ!

勇者が満面の笑みで言う。いいから顔ぬぐえ。まだ鼻垂れてんぞ。
俺たちは嫌な空気がプンプンする洞窟の中へ入った。なんて事はない普通の天然洞だ。

へックシュッ!クシャミが止まらない。勇者が総長ちゃんはこんな寒いのにそんな薄着でウロウロするから風邪ひくんだよとかぬかしやがる。
いや誰のせいで…そういやこいつら二日間も何してたんだろうか。ねーちゃんに聞いてみる。

やまたのおろちについて色々調べ事してたのよ。強敵だから。でもあまり有益な情報は得られなかったわ。
一つだけあったんだけど…弱点が

おいおい弱点だなんて有益この上ないじゃないか。さすがねーちゃん。

どうやらやまたのおろちの苦手な植物がこの辺に生えているらしいの。
それをつかってつけたお酒を使えばかなり動きを鈍くできるみたい…
ただそのお酒探し回ったけど見つからなかったわ。
一軒だけ置いてるお店見つけたんだけど最後の一本旅の人にあげちゃったみたいで…正攻法で攻めるしか無いわね。

うーむそんな貴重な酒を持ってくとはかなりの酒通の旅人ですな。
しかしもしかしたら簡単に退治できたかもしれぬのに実に残念ですな。

やべ。俺は持っていたビンをそっと捨てた。
だって飲んじゃったんだもん…この二日間凍死せずにすんだのもこの酒のおかげ…神酒だけあって確かに燃えるようなうまさだった…

総長ちゃんぶつぶついっちゃってるけど頭大丈夫!?もしかして風邪が頭まで回った!?

………。仮にそうだとしても普段のおまえらよりは正常な自信はある。絶対に。
そうして俺たちは巨大な門の前に着いた。

しかしでかい。しかも開いてない。鍵はかかってないようだがこんなもん開けれるか。
おいおいこれじゃ開かなねーぞどうするよ?なんだよ。はいはい。わかりましたよ。
俺とパンツは左右の扉の前に立つとあらん限りの力を振り絞って押した。
く…ピクリともしない。ねーちゃんが俺とパンツにバイキルトをかけた。力が漲る。
ふんッ…ぬうううう…ぬおおおおおぉおぉぉぉ…

血管がはち切れそうになりながら必死になる俺とパンツ。やがて扉は少しづつ開いていく。
ある程度開くとあとは惰性でわりと楽に開いた。

熱い。さっきまでの寒気が吹き飛ぶほど熱い。なんだこの熱気は。
そりゃそーだ。これは溶岩だ。所々地面の隙間から熱気が噴出している。
とにかく俺たちは進むしかない。汗を拭いながらひたすら歩いた。
そうしてたどり着いた先は行き止まりだった。一際大きな空洞で立ち止まった。
つーか熱いだけで何もねえ。
…ん?今微かに地面が揺れたような。いや気のせいだろう。気のせいという事にしておこう。

…やはり揺れている…。
……しかも徐々に振動が大きくなる。みんな終始無言だ。

ねえ…ちょっと…揺れてない…?

勇者がついに口を開く。あーあやっちゃったよ。こいつ明らかにズラの人に向かってカツラですか?
って聞くタイプだな絶対。ここは総長としてみんなを鼓舞しなければ。
先頭を歩いていた俺は振り返る。

いいかおまえら。例えこれから相対する敵がどんな怪物だとしてもだ。例えどんな
山のような化け物だとしてもな…鬼浜爆走愚連隊は最強だという誇りをもってだな…

なんだ?みんな目が点になっている。俺の顔になんかついてるか?そんなジロジロ見んな。
おっさんがガタガタ震えながら後ろを指差す。何だよまったく。
俺は後ろを振り返った。そしてとんでもないものを目撃した。

………ダッシュ……

俺が小さな声で呟くやいなやそれはそれは凄い速さで転進した。おそらくマッハはでていた。

むおおぉぉぉぉおおぉぉぉ!!!!!!!!!

全員さっきの扉をこえると一気に閉めた。今度はみんなで閉める。必死だ。
落ち着け。あまりの突然の出来事に引き返してきてしまった。逃げてどーする…

おーーーーーーっきかったねー

勇者が半笑いで言った。まあ確かに笑うしかない。
冷静に記憶を呼び覚ましてみるがとりあえず頭らしきものが三本見えた。
あれに胴体がついて…うーん…とにかくとんでもないデカブツだ。
これは気を引き締めてかからなければ俺たち全員あの化け物の胃の中に納まる事になる。

ガンッ!!!ガンガンガンッッッ!!!!!!

突然金属音が響き渡る。どうやらあのデカブツが扉を叩いているようだ。

ガンガンガンッ!!!!ガンッ!ガンッ!

…ちょっと様子見るか。

ガンッ!!!ガンガンガンッ!ガン!!!!!!

あーうるせえ!わかったわかった今すぐぶっ飛ばしやるから静かにしてろ!
俺が扉を開けようとするとねーちゃんに止められた。

待って…妙だわ。もう少し待ってみて。

暫くして音は消えた。どうやら帰ったようだ。

やっぱり。やまたのおろちは自分ではこの扉開けられないわ。

え? どういう事だ…? 理解するまで三秒程かかった。つまりだ。あのデカブツは自力でここを開けられない。
でもジパングは襲われている。

わかったでやんす!アイツは透明人間になって瞬間移動できて空を飛べるでやんすね!?
とんでもな化け物でやんすな!

…つまりだ。自力でここを出れないとなると何者かがここをいちいち開けている事になる。
そして国を襲わせていると。一体何の為にだ!?謎だらけだ。

どうやらやまたのおろちを退治すればいいだけの問題じゃなさそうね。

ねーちゃんが難しそうな顔をする。とりあえず俺たちは一旦引き返して出直す事にした。
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