総長◆Lh6WfP8CZUの物語
東へ[2]
そうこうしているうちに町が見えてきた。おお!これはかなり大きな町だ。
町の入り口で異常なまでの注目を集めてしまった。好奇の視線。
いや、町に着くたび変な目で見られるのはいつもの事なので気にならないが今回はちょっと違う。
むしろ変なのはこいつらだ。服装、髪型どれをとっても今まで旅してきたどの国とも当てはまらない。
ガキが三人近づいてくる。は?何?田舎もんだと?
あっいてコラ服引っ張んな破れんだろがコラやめろって!
ガキどもを振り払う。何なんだこいつらは…
わーいわーい田舎もんが熊つれてきたぞー田舎もが熊連れてきたぞー
総長!あいつら総長の事を熊呼ばわりしてるでやんす!シメてやりましょう!
いや熊に間違えられたのはおまえの方なんだが…しかしうっとしいガキ共だ。
ガアアアアッッ!
突然パンツが奇声を発して驚かした。一瞬固まりその後号泣しだす子供。
正直泣き出す子供の気持ちもわかる。子供に対してよくやる事と言えばよくやる事だがパンツがやってしまうとシャレにならない。子供は泣き止まない。バカでかい声で鳴き続ける。
なんだなんだと人が集まってきた。く…いつもそうだ。いつもこうなる。行く先々で注目を集めてしまうのは俺が天才故に仕方のない事なのか…。気づけばもの凄い人数に囲まれていた。
もはや身動きがとれない。仕方がないこいつらぶっ飛ばして道つくるか。
俺が拳を振り上げたと同時に凄い勢いでおっさんが飛びついて阻止してきやがった。
一般人に手をあげるのはよくないですぞ!ぬおっ!
こいつ弱いくせに。魔物と戦う時も今くらいの根性の一つでも見せて欲しいものだ。
おっさんと取っ組み合ってる間にも事態はさらに悪化していた。
明らかにカタギではない恐い顔した人らに囲まれている。おそらくこの国の兵士だろう。
有無を言わさず俺たちはそのまま連行された。まあこれも経験済みのパターンだ。
この国の王に会って誤解をを解けばなんて事はない。さあ俺を王の前まで連れて行け。
…………。王に会うはずがなぜか地下に向かう。なんだなんだここの王は引きこもりか?
…………。ガチャッ。……え?……。そのまま投獄されてしまった。これは読めなかった。
ちょっと待てコラ!いきなりブタ箱はねーだろ!話くらいさせろクソ共が!
兵士はまったく聞く耳を持たない。てめーマジ黒焦げにすっぞコラ!下っ端兵士のくせに世紀末覇王の俺様を
こんなとこに閉じ込めやがって後悔すんぜ?いいのかコラ!
…………。無視か…。
今まさにボルテージは頂点へと向かっていた。仮にここに閉じ込められるまでの俺の怒りを10としよう。
だが今は10億10!!!お前らに明日を生きる資格は無い!!!!
くらえ!むぅぅえラゾォオオオオ……総長ちゃんだめ!!!!マァァアッァ!!!!
勇者の叫びも空しく俺の放った特大の火炎球が牢の入り口ごと吹き飛ばした。
響き渡る轟音。吹っ飛ばされる兵士。そしてヒッッヒエェ〜!!!!と奇声をあげて逃げ出した。
俺をこんなとこに閉じ込めるからだ。まったく常識のないヤツらだ。
振り返るとみんな有り得ない程の冷たい視線でこっちを見てる。
なんだよ!俺が何か悪いことしたか!?俺のおかげでおまえらここから出れるんだぞ!
ほんとにこいつらも常識が無い。感謝の一つでもしていいとこじゃねーかまったく。
で?
ねーちゃんが恐ろしく低いイントネーションで言う。いやでって言われても…
で?これからどうするわけ?
ヤバい。完全にブチギレしてる。正直恐い。
もうここでの情報収集は望めないわ。とにかく人が来る前に逃げましょう。
一旦船に戻ってからもう一度出直すわよ。
みんなぞろぞろとねーちゃんについて行く。なんだよまるで俺が悪者みてーじゃんかよ!
おっいい事思いついたぜ!多分オーブ程の代物となると宝物庫とかそんな感じの場所にあるから
このまま襲って奪っちまおーぜ!
誰も聞いていない。サッサと行ってしまった。俺は泣いた。
すんなり帰れるわけもなく城の入り口付近で今度は完全に武装した50人はいるであろう兵士に囲まれた。
しかし問題は無い。俺は昔河原で一人対100人で乱闘になっても生還した男だ。
この人数ならいけるぜ。一気にぶっ飛ばしてやる。
いい?絶対殺しちゃダメよ。出来るだけ最小限の相手だけ倒して一気に駆け抜けるわよ!
ねーちゃんが指示を出す。おい待て。俺は売られた喧嘩は買う男だ。この状況で逃げるなんて真似できるか!
と思ったがとりあえずここはねーちゃんの指示に従おう。どーせ一人で暴れててもまた置いていかれるのがオチだ。
…世界征服したあかつきには絶対こいつら全員島流しにしてやる。
おやめなさい!
女の人の鋭い声が響き渡った。兵士が一斉に構えをとく。そこには女と老人がいた。
女の方は勇者と同じくらいの年齢だろうか。兵士が全員ひれ伏した。
そこまでです異国の者達よ。もしこれ以上騒ぎを起こすようならジパングの女王ヒミコの名においてあなた方を処罰します。大人しく武器を下ろしなさい。
このクソジャリ女王だか何だかしらねーが偉そうな奴だ。
結局ねーちゃんとヒミコとやらが交渉した結果、正式に謁見する事になった。そのまま奥の間に案内される。
そなた達は何の目的でこの国に参られたのじゃ?
この国に竜を模ったオーブがあると聞いてきました。
旅の目的達成の為どうしてもオーブ必要なんです!
勇者が答える。
オーブはオルテガ様から預かりし我が国の宝。簡単に旅の者に渡すような物ではない。
いったい旅の目的とはなんじゃ?
旅の目的?んなもん決まってんじゃねーか。
俺らの旅の目的が聞きたいか!耳カッポじって良く聞けよ!俺が世界中を旅すんのは世界征服の為だ!
取りあえずその一環として異常に態度のデカイ魔王とやらを一発ブチのめしてやろうと思ってな。
そのためにオーブが必要だ。さあくれ。
周りがザワつく。ヒミコが噴き出す。
はっはっは異国の者はおもしろいのう!世界征服とは大きくでたな!まあ夢は大きい方がいいわい。
はっはっは
この小娘俺よりだいぶ年下のくせに何を偉そうに…。
だいたいその年寄りみたいな喋り方が感に障る。うぜえ。
お願いします!どうしても必要なんです!
勇者が割って入ってきた。
私は…オルテガの娘です!
一瞬でヒミコの顔つきが変わった。じっと勇者を見つめる。
そなたの眼…嘘は言っておるまいな。
ヒミコは一発で信じたようだ。またこれだ。
こいつは本当に相手の目を見るだけで全てを納得させちまうからすげえ。
しかし今オーブはここには無い。オーブは…
姫!!!!!
隣の老人が割って入ってきた。
姫!異国の者をそんな簡単に信用してはいけませんぞ!もっとジパング大国の女王である自覚を持たれい!
正直老人の言う事は正しい。
自分の事を勇者と名乗る怪しい集団が国宝くれなんて言ってきて信用するほうが問題ある。
老子よ。この者の眼は本物じゃ。それに異国人という事に何の問題がある?
そのような閉鎖的な時代はもう終わったのじゃ。
自らの国の問題を自らで解決出来ないような我が国に置いて異国と交わるのは今後必要であるだろうぞ。
姫!いくら姫と言えどそのような発言は許されぬぞ!選民であるわが臣民は卑下な異国人と関わる必要なんてありますまい!
ヒミコは頭を抱えると老子と呼ばれる老人を退室させた。老人は渋々出て行った。
すまぬな異国のものよ。あやつも人一倍愛国心の強いゆえ、無礼な発言許されい。
いるよなああいう頭の堅いジジイは。ヒミコも大変だな。
それでオーブの件なのだが…ここから北の鳥居のある洞窟に安置されているはずじゃ。
はず?どういう事ですか?
勇者が聞き返す。
この国には「やまたのおろち」という巨大な悪鬼がおりましてな。度々現れては破壊の限りを尽くしわが民を恐怖に陥れておった。
だが先代国王の時オルテガ様がこの国に現れ見事に退治なさった。
ただその生命力の強さ故完全に葬り去る事ができず、北の洞窟に封印されたのじゃ。
そして封印をより強固なものとするためオーブをそこに安置された。
じゃあそこに行きゃオーブあるんじゃねーか。
ヒミコの顔が曇る。
悪鬼が……復活したのじゃ。
あの封印は簡単に解けるような物ではない。しかもオーブで強化されておるので尚更の事じゃ。
おそらく…強大な魔力を持つ者がオーブを持ち去った後封印を解いたのだろう。
もう何度も原因究明のため兵を送ってるのだが誰一人として帰ってこないのじゃ。
強大な魔力を持つ者。おそらくその場にいた全員が同じやつを想像しただろう。
偉大なる勇者オルテガの娘達よ。恥をしのんでお頼み申す。どうか…
断る。
ヒミコが話し終える前に断ってやった。どうせまた退治してくれとか言うんだろ?
何で俺らがそんな事しなきゃいけないんだよ。俺はボランティアでも人助けの為にでも無い。
世の中クソ共全部ぶっ飛ばして俺が覇権を握る為に旅をしているのだ。
自分の国のゴタゴタは自分で解決しろよ。オーブがないならもうここには用は無い。
おまえら帰るぞ。
ちょっと!総長ちゃんそんな言い方無いでしょ!もう少し考えてよ!
勇者が怒った顔でこっちを見る。うるせえ。俺は人助けなんてまったく興味ねえ。
空気を読んだねーちゃんが簡単には返事できないので話し合い明日また返答するとその場をまとめた。
ヒミコは宿を手配してくれた。
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