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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

東へ[1]
―朝―

俺たちは船に積めるだけの荷を積んで港を後にした。
おっさんの事情を知った町の人達が食料やら酒やらをアホみたいにくれたおかげでほとんど買い物せずに済んだ。実は最近かなり金が貯まっている。
何故かと言うと基本的に宿屋もタダだし飲みに行ってもタダだ。
武器も防具も道具も定価の半分から10分の1程で買うことができる。
場合によっちゃお代はけっこうですとか言われる始末だ。
これも全て俺とパンツの巧みな交渉術の賜物だ。特にパンツなんて口を開く事なく目だけで値切る事ができる。こいつにはきっと天性の商才があるのだろう。

ジパングまではまだ暫らくかかりそうだ。最初はパンツが船長な事に生命の危機を感じたがさすがにもう慣れた。たいして強い敵もでないしのんびりしとくか。

いっとくけど気休める暇なんてないわよ。

げ…ねーちゃん…

父から私の使える呪文全部教えるようにって頼まれてるの。まだ全然進んでないじゃない。
ペースあげてくわよ!

いや俺には己の体という最強の武器があるからそこまで呪文にこだわらなくても…

さあじゃあ最初はバギの復習から!

聞いてねえ…

当然俺にブレイクタイムなどあるはずもなくみんながしばしの休息をとってるのを尻目に今日もコツコツと修行に励むのであった。鬼だ。人の皮を被った鬼だこの女は。



ちょっと!こら!寝ぼすけ!起きろー!

うぅうんん…ぶぶぁギは精神の統一よりしいいいん空を巻き起こ…zzzzzzz

こら!意味不明な寝言言ってないで起きろー!

………。ん…?なんだもう朝か。夢の中でまでねーちゃんに特訓されちまったぜ。
お?なんだ勇者。なんでおまえがここにいる。とっとと自分の部屋へ帰れ。

帰れじゃないでしょ!もう!着いたよ!ジパングに着いたの!
みんなもう船降りる準備できてるよ?総長ちゃんも早くしてね!

ランシールを出てから一週間ちょっとか。俺たちはようやくジパングに着いた。
しかし辛かった。ねーちゃんのスパルタ度はあのクソイケにも引けをとらないくらいだ。
ほんとに恐ろしい親子だ。…正直できる事ならもう関わりたくない。

船を泊められそうなポイントを見つけるといつものように船番はパンツの子分共にまかして俺たちは上陸した。
ジパング。言葉の響きもそうだがどこか懐かしい気がする。
おっさん曰くここから東にしばらく歩くと町に着くらしい。このおっさんどうやらかなりのインテリのようだ。
ねーちゃんも頭はいいのだが、如何せんイケと一緒に長いこと塔に引きこもってた分こういう情報面にはうとい。
そういう面では勇者も微妙だしパンツは論外、別世界の俺が知る訳がない。このおっさんカーナビばりに使えそうだ。

やはり地面は落ち着くな。ぼんやりそんな事を考えていると敵が現れた。
不細工面の蛾が5匹にデカいキノコが三匹。杖もった小デブが2匹。…ちっ多いな面倒くせえ。
とりあえず分担して片付けていくか!みな各々近くにいた相手に飛び掛る。

俺はキノコを焼き尽くすとそのまま翻って小デブに切りかかった。

ヒュン!ザクッ!!

そこじゃ!総長殿お見事ですぞ!

危ない!カンダタ殿後ろじゃ!後ろに魔物が!ああ!噛み付かれた!痛いい!

ガブ!ドカッ!グゥエェェェ!!!

勇者様頑張ってくだされ!不肖ノーマン応援しておりますぞ!

バシュッ!!!キーン!カキーン!

総長殿あなたもリーダーならもっと全体を見てですな…あ!ほら勇者様が囲まれておる!

うるせええええええぇぇぇえええええ!!!!!!!!!!
魔物に飛ぶはずの鉄拳がついおっさんに炸裂した。
おまえは戦えないなら黙っとけ!邪魔じゃボケ!

うぬうう…すまんつい血がたぎってしまい…面目ない…

ちょっと総長ちゃん!怒っちゃかわいそうでしょ!せっかく応援してくれてるのに!

敵を片付けた勇者達が戻ってきた。いやだってよ!うるせーじゃんこいつ!
その後しばらく勇者と口論した結果、おっさんは戦闘中必要最低限以外口を開いてはいけないという事で落ち着いた。しょぼくれるおっさん。慰める勇者。
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