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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

新たなる仲間!……。[2]
一瞬時が止まった。ノアール。そう俺と勇者が出会った場所。じいさん最後の場所。
もはやノアールという言葉は町の名前ではない。今となってはただの地名としてしか用を為さない。

誰も口を開けなかった。破壊された民家。あたり一面の血痕。そしてじいさん…全てが鮮明に蘇る。
ノアールは…もう無い。あそこは魔王に滅ぼされた。
またまたご冗談をと笑っていたおっさんも勇者の目を見ると黙り込んだ。
そうですかいやいや酷い世の中ですな!最後にもう一度息子の顔でも見ときたかったわい…
必死に何でもない風に振舞うのが痛いほどわかる。……こいつ強いな。

いやー守るべき場所も家族も同時に無くなってしまうとはさすがに参りましたな。ハハハ

かける言葉がねえ。勇者がいいこと閃いた!っと喋りだした。嫌な予感がする。

ねえねえおじさん!する事無いなら私たちと一緒に旅しよーよ!

へ?

おっさんは突然の申し出に今一状況が飲み込めてない。当たり前だ。俺も訳がわからねえ。
勇者の目はマジだ。もはやこうなったら誰もNOとは言えない。

あのね、私たちと一緒に旅をして、色んな人に出会って色んな場所にいってね、それでおじさんが好きな場所やもしかして好きな人に出会ったら、そこでお別れすればいいと思うんだ。うん絶対そう!

そうですな…ここにいても何もありゃせんし勇者様がそう言って下さるならお邪魔しましょうかな!

わーい♪こちらこそよろしくお願いしまーす♪

まただ。また総長様である俺を差し置いて勝手に話が進む…いいんだどうせ…俺は形だけの総長さ…
てなわけで我が鬼浜爆走愚連隊にまた一人メンバーが加わった。不本意ながら。

その日の晩鬼浜定例会議の議題はもっぱら新加入のおっさんについてだ。とりあえず俺が総長であり、このチームのボスである事、勇者を含めここの構成員はすべておれの子分であることははっきりさせておかなければいけない。ではまず俺がボスである事から説明しよう。

威厳・強さなどから当然言わなくてもわかってると思うがこのチームのボスは俺d…

ねーねー!おじさん何て呼んだらいい?お名前は何て言うの??

く…このクソガキが…

わしの名前はノーマンと申します。好きに呼んで下され。

んとねーじゃあノマさんでいい?そっちの方がかわいいし!

ノマさん…何か照れますな!ホッホッホ

おっさん小娘にデレデレしてんじゃねーよ…しかし相変わらず勇者はすげえ。
家族も使命も一日で失った一人の男がその晩にここまで笑顔で笑えるだろうか。
コイツはアホで天然だけど周りの人全てを巻き込んで幸せにする力を持ってるのかもしれない。

で、次の目的地くらいは決めといた方がいいんじゃない?

ねーちゃんが突っ込む。その通りだ。鬼浜会議はバカ勇者とアホパンツのせいでいつも話がそれる。
今手元にあるオーブは4つ。全部で6つあるらしいから残りは2つだ。しかし何処にあるのか検討もつかない。さてどうしたものか。一応聞いてみる。
おまえら誰かどんな小さな事でもいいからオーブについて何かしらないか?

パ:あっしの考えによりますとですね…

黙れ。おまえは喋んな。

勇者とねーちゃんが首を横に振る。
おいおいあてもなく世界中探し回るなんていったい何十年かかるんだよ…

おっさん(以下‘お’):確かな情報じゃないんだが東の果ての‘ジパング’という国に凶悪な巨竜がおり、先代勇者様がその竜を封じるためにオーブを使ったらしいですぞ。

マジか。これは有益な情報だ。こいつの知識は意外と役に立つかもしれない。
そういやまだ確認してなかった。このおっさん果たしてどのくらい戦えるのだろうか。

お:ハッハッハ戦闘?無理無理!無理ですわ。肉体労働は苦手でしてな。
  その辺の子供にも負ける自信があるぞい。

……聞かなきゃよかった…。戦力は増えないが悩みの種は一つ増えたようだ。
次の目的地もジパングに決定した所で会議はお開きになった。ドッと疲れた。俺はその日すぐ寝た。


―深夜―

今晩は冷える。しょんべんでもしようかと部屋を出る。おっなんかおっさんと勇者が話し込んでいる。
何故か反射的に隠れてしまった。ん…どうやら俺の話題のようだ。

しかしわかりませんな。あの総長とかいう男…ただの乱暴者にしか見えないですぞ。
なぜあんな男が勇者様の御一行に…。しかもあやつ自分がボスだとか勇者様は子分だとか…
ふーむわからぬ…

総長ちゃんは見た目恐いし口も悪いけど頼りなるうちのリーダーだよ。ノマさんもそのうちわかるよ!
ああみえて根はすーっごく優しいんだ。

そうですかな。まあ勇者様がそう言うなら間違いないでしょうな…。あとあのカンダタという男…
あれは本当に人間ですか?なんと恐ろしい風貌!わしには魔物にしか見えんぞい。

えー!そんなことないよ!カンダタちゃんかわいいじゃん!絶対!

うーむ…いやはや最近の若い子の感性はわからんわいハッハッハ

総長ちゃんもカンダタちゃんもあたしの大好きな仲間です!もちろんカンダタちゃんの子分も、おねーちゃんも…それにノマさんもね!


……。
一応俺がボスだという事は自覚しているようだな。殊勝な心がけだ。
おっさんは明日絶対殴る。
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