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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

顔がいい奴が憎い[2]
このイケ洒落になんねえ。もはや修行という名の拷問である。

朝:ひたすら走る。山道をどこまでも走る。手を抜くと炎や氷の塊が飛んでくる。危ねえ。死ぬ。
昼:ひたすら闘う。イケが連れてくるよくわかんない魔物と闘う。強い。
  負けたら死ぬから気をつけるようにと言われる。笑えねーよ。死ぬ。
夜:ひたすら寝る。死んだように寝る。

これの繰り返しだ。
本人曰く「健全な肉体には健全な精神が宿る」からまずは基礎体力から鍛えなきゃ駄目らしい。
俺は幾度と無く脱走を試みるがその度に捕まりボコボコにされた。こいつは絶対Sだ。極度のドSだ。
しかし珍しくパンツは文句一つ言わない。つらくないのかと聞いてみると飯がうまいから平気らしい。

なるほど。
おそらくこいつは魔王に最高級のステーキを食わせてやると言われたら簡単に寝返るだろう。

そうして一ヶ月ほど経っただろうか。
やっと次の段階に入る事になった。次の修行はようやく魔法の修行に入るようだ。

そしてここからはスペシャルゲストも参加するらしい。
どうせこのクソイケだからろくな奴じゃないだろう。何がスペシャルだくたばれ。

嫌な予想程的中する。
スペシャルゲストとして紹介された…そこにいたのはピエロだった。
おまえまた城から脱走してきたのかよ…

しかしちょっと雰囲気が違う。
どうやら塔の魔力により一時的に若返ってるようだ。ガタイが半端ねえ。
こうしてここからは魔法はイケと、格闘はピエロと地獄の特訓が始まった。

とりあえずとにかくピエロ強え。
こいつの全盛期はこんなに強かったのか。組み合っても普通に力負けする。チクショウ。
わしに勝てないようじゃ魔王になんて簡単にひねり潰されるぞだと!?俺の負けず嫌い魂に火が着いた。
同じ人間だ。本気を出せば負けるはずがねえ!その日からさらに「俺メニュー」として
別のトレーニングも追加した。ピエロ如きに負けてるようじゃこの先どうしようもねえぜ。

そしてイケ。こいつ笑えねえ。
よくわからん強力な呪文を連発してきやがる。危ないとかそんなレベルじゃない。

「実際にその呪文をくらって痛い思いをする事で覚える」のがこいつの教育のポリシーらしい。

いやいやその前に死ぬから…俺とパンツは毎日瀕死になりながら修行した。
後一歩で死ぬって絶妙のタイミングでイケメンが回復魔法をかける。生殺し状態だ。
徐々にだが俺の魔法のレパートリーも増えていった。

そしてさらに一月ほど経った。
正確な時間の経過はもう覚えていない。俺達は確実に強くなった。

パンツ。こいつヤバイ。もともとガタイよかったのだがここ二ヶ月でさらにでかくなった。
どのくらいヤバイかってもはや見た目人間か魔物かってわからんくらいヤバイ。
一人で町に入ったら町人総出で討伐されそうだ。
城とか絶対入れてくれなさそうだ。子供が見たら確実に泣き出すであろう。

そして俺。
俺も確実に一回りでかくなった。
イケメンが変な種を調合した薬とか飲ますせいで飛躍的に身体能力は向上した。
おそらくこっちの世界でいうステロイドみたいなもんだろうか。
副作用が心配だ。ちょっと聞いてみる。最悪死にはしないから問題無いらしい。

それって問題無いって言うのだろうか。もうあまり考えない事にしよう。

俺達は幾度と無く死に掛け(死んだおじいちゃんにこっちきちゃだめだって言われた:パンツ談)
最終試練に入る事になった。最終試練とは塔の中で行うようだ。

ずっと近くにあったのに一度も立ち入る事のなかった塔。
ついにその中に足を踏み入れる時がきたようだ。イケは最初に俺に中に入るように言った。

大きな扉の前に立つ。

扉は簡単に開いた。中は真っ暗だ。しばらく足を進める。後ろの扉が消えた。
もう前進するしかない。暗闇の中をズンズン進む。
しかし真っ暗闇を長時間歩くと不思議なもので段々感覚が麻痺し出す。

どっちが前でどっちが後ろなのかわからなくなってくる。
さらに進む。
もう右も左もわからない。
さらにさらに進む。

ここまでくると自分が上に向かってるのか下に向かってるのかすらわからない。
もの凄く広い部屋の真ん中にいる気もするが細い平均台の上を歩いている気もする。

だがパニックではなく何故か心は落ち着いている。俺はひたすら奥を目指した。

どのくらい進んだだろうか。

急に視界がひらける。見覚えのある村。魔物に荒らされ破壊された村。
俺はその村を空中から見下している。なんとも不思議な感覚だ。やがて数人の人間が入ってくる。

あれは………俺だ。
おれとピエロとじいさんとパンツだ。体中から嫌な汗が噴出す。
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