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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

砂漠の女王[1]
……………………。あちい。

完全になめていた。砂漠。見渡す限り砂漠。歩けど歩けど砂漠。
灼熱の太陽が容赦なく降り注ぐ。ほんとにこんな地獄の向こうに町などあるのだろうか?
俺達は砂の山を登ったり降りたりしながらひたすら西を目指した。
目の前に何匹かのカニがあらわれた。
涎を垂らし目は完全にイってちゃっている。カニの分際でラリってんのか?
俺は先頭きって切りかかった。只でさえ熱い。頭に完璧血が上っている。
ドラゴンキラーを手に入れてからというもの苦戦した記憶がない。
どうせこいつらも瞬殺だろう。

スクルト



スクルトスクルトスクルト

????

カニの分際で何かしらの魔法を唱えやがった。
生意気な魚介類め。まあどっちにしろ俺のドラゴンキラーに敵は無い。
大きく振りかぶると腰を入れて目一杯突き込んだ。金属音と共に派手に弾かれる。
 
硬い。こいつら異常に硬い。なんじゃこりゃあ!!!!?????
カニ如きが俺の攻撃を…天下無敵総隊長の俺の攻撃を…

へこんでいる間に勇者が冷静に強烈な閃光で他のカニを焼き払った。
そっちも援護しよっか?とアイコンタクトを送る。

いらん。
これは俺とカニと男の意地を賭けたタイマンなんだ!
俺は狂ったように殴りまくった。カニはまったく涼しい顔をしている。
あっこいつ今笑いやがった!明らかに俺の事バカにしてやがる!甲殻類の分際で!
クレバーな俺は魔法に切り替える。くらえ!メラ!
多少効いたようだが火力が足りない。ちくしょうどうすればこいつを倒せる!?どうすれば!?

んメエエエェエエエラアアミィイイ!!!!!!!!!!

極限状態の俺はとっさに叫んでいた。
じいさんの見よう見まねだ。俺の手からメラの数倍はある火の玉が飛び出す!
カニは一瞬にして灰になった。出来た。出来てしまった。
勇者はすごいすごい!と手を叩く。はっはっは当然だろうが俺を誰だと思ってやがる。

戦闘後、パンツがこのカニ食えそうだと言い出す。おいおい勘弁してくれよ…
俺と勇者は断固拒否したのでパンツはふてくされながら一人で食っていた。
ありえない。今後もできるだけ距離をおこう。ていうか何でコイツ舎弟にしたんだろ…
ちなみに味はうまかったらしい。

一日中あてどなく歩きついに陽が暮れた。
しかしビックリした。砂漠の夜はハンパなく寒いのである。
今日はもうここで寝る事にした。三人身を寄せ合い寒さを凌ぐ。こんな状況なのに勇者は楽しそうだ。
聞くと「仲間」がいる事が嬉しくて仕方がないらしい。
あっそうかこいつずっと一人で旅してたんだっけ。

急に表情が曇る。私のせいで魔物に狙われてみんなを危険にさらすのが怖いと言う。

アホかこいつ。
俺は勇者を軽く小突く。
舎弟の分際でいらん心配するな。おまえ俺をなめてんのか?天下の鬼浜の総長様だぜ!
勇者は笑顔でありがとうと言った。これからもほんとによろしくねカンダタちゃん!総長ちゃん!

…このアマついに俺までちゃん付けしやがった…しかしこの笑顔を見てると何も言い返す気がなくなる。
ちっ…ほんと調子狂うぜ。
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