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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

私の名は勇者[3]
その日は一日中歩いたがまだまだイシスは遠そうだ。野宿する事にする。
しかし…じいさんとピエロが抜けて少しはまともになるかと思えばそうでもなかった。
ヤンキー、パンツ、少女。違った意味でヤバイ。犯罪の臭いすらする。
俺の世界だと確実にポリに呼び止められ、職務質問くらうだろう。
断じて俺達はこの少女をさらったわけではない。

更にその夜の鬼浜会議でとんでもない事が判明する。この女天然だ。清々しいまでの天然だ。
やべえ…このメンツヤバ過ぎる…

以下会議議事録。

俺:イシス遠いから途中アッサラームという町に寄ろうと思うがいいか?
パ:総長明日の朝はパンがいいでやんす。
勇:異議アリ。パンもう無いよ。野草摘んでスープ作ろうよ。
俺:いやだからアッサラームにだな…
パ:総長!パンを切らすのは緊急事態でやんす!キメラの翼で一旦戻りましょう!
勇:異議アリ!ここまできたのにもったいないよ!
  だいたいカンダタちゃんがつまみ食いするから、すぐなくなっちゃうんでしょ!!!
パ:異議アリ!違うあれは毒見でやんす!みんなのためを思ってこその…
勇:いいわけしないの!ちょっと総長さん黙ってないでなんか言ってよ!
俺:…………。

もうこいつらに意見を求めるのはやめよう。信じれるのは己だけだ。何なんだこの孤独感は。


翌日俺達はアッサラームを目指す。パンツと勇者はまだ口論している。無視して先に進む。
途中パンツが地図を逆さに見ていて迷うというアクシデントもありつつアッサラームには三日後についた。

なかなか活気の溢れる町だ。
よく見ると俺の服ももうボロボロだ。この辺で新調したい。という事で店を探す。

あった。
店に入ると店主が話しかけてくる。妙に慣れなれしい。
あ?友達だと?おまえんか知らねーよどっかいけ。
どこの世界にもサイズ出しますよとか試着しますか的なうるせー!ゆっくり選ばせろ!てタイプの店員はいるようだ。
俺は真っ黒な動きやすそうな服を見つけた。なかなかいい感じだ。

おいこれくれよ。
え?38400ゴールド!?マジで!?…信じられない値段だった。
こいつニコニコしながらかなり悪どい野郎だ。俺をボろうとは舐めたやろうだ。

こんな店で買い物なんかするかいと店を去ろうとすると店主が友達だからまけると言ってくる。
友達だと…?そしてそこから交渉が始まった。

結局俺の巧みな交渉術(途中何度か俺とパンツの鉄拳が飛んだ)
により「くろしょうぞく」は800ゴールドで買う事ができた。
ついでに「てつかぶと」を200ゴールドで、「マジカルスカート」を400ゴールドで買った。
パンツ、勇者に渡す。

鉄兜にパンツ一枚の大男、ミニスカの少女、やたら眼つきの悪い一見モジモジ君にも見える俺…
ひょっとして取り返しのつかない事をしてしまったのではないだろうか…

帰り際店主に頼むからもう来ないでくれと土下座されたがおそらくまた来るだろう。
なんたって友達だからな。

道具屋にも寄るがこいつもさっきのやつの親戚らしく
俺とパンツの交渉術により破格の値段で売ってくれた。

とても良心的な店が多い町だ。世の中まだまだ捨てたもんじゃないな。
町の人の話によるとイシスはここから西の砂漠にあるようだ。水と食料を大量に買いこんでおこう。
その日は宿をとり、翌朝出発する事にした。一同歩き疲れたのか早々にベットに入る。

明け方鋭い空気を裂く音で目が覚める。窓の外を見ると勇者が必死に素振りしていた。

この子は強い子だと思っていた。
一人で旅に出て、数多くの魔物を倒し人から尊敬を集める。
だが本当はプレッシャーに押し潰されそうになってたに違いない。そもそもたかだか16歳だ。
俺の世界の16歳なんてバカ女子高生の極みだ。
携帯いじり髪を染め顔にとんでもないペイントしてヘラヘラ遊びまわっている年頃だ。

俺が16の時なんて朝から晩まで道場で親父にしごかれ、学校はほとんどさぼり深夜単車で走り回っていた。

何だか無性に体を動かしたくなった俺はそこからニワトリの鳴き声が聞こえるまで延々と筋トレをした。
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