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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

出会いと別れ[2]
カカカこれはこれはこれは勇者サマ!

突然背筋に寒気の走る声がする。振り返るとそこには腕が6本ある骸骨二体と覆面魔術師が立っていた。
この村を襲った残党だろうか。

コンナところで出くわスとハ! その首ヲ我が主への手土産にシましょうカ!

俺達は無言で武器を構える。しかし皆顔に余裕がない。それもそのはずだ。こいつら雰囲気がかなりヤバイ。
明らかに今までの敵とは次元が違う。

均衡状態を撃ち破ったのはじいさんだった。じいさんの手から巨大な火の玉が発射される。
骸骨はそれをかわす。その瞬間残りの4人が飛び掛った。てつのおのにかなりの手ごたえがある。

やったか!?

残念ながらさほどダメージは与えられなかったようだ。逆にパンツとピエロが血を流している。
あの状況できれいにカウンターを決めやがった。こいつマジで強ええ。

じいさんが今度は強烈な氷の突風を放つ。これはかわしようが無く骸骨はその場でふんばり耐える。
このチャンスを逃すまいと俺は骸骨の脳天に全身全霊を込めて一撃を見舞った。
そこにパンツ、ピエロ、勇者と続く。骸骨の6本の剣が踊る。
俺は全身なます切りになりつつも骸骨に留めの一撃を決めた。

もう一体は!?

振り返るとじいさんが必死に杖で対抗している。が、体には深い斬り傷が刻み込まれていく。
骸骨が剣を振り上げじいさんの頭に狙いを定めた瞬間、パンツが後ろからはおい締めにした。
パンツGJ!
骸骨の剣がパンツに深々と突き刺さる。しかしじいさんの火炎球が至近距離で骸骨に直撃する。
骸骨は体半分吹き飛ぶ。

勝った…

辛勝だ。なんとか退けた。鬼浜軍事訓練もあながち無駄ではなかったようだ。
しかしダメージがでかい。とくにパンツとじいさんの傷がひどい。ありったけの薬草を塗り込む。
ひとまず危機は去った。みんな安堵の表情を浮かべる。

…しかしそれはすぐに打ち消された。

そこには見たことも無い魔物の群れを引き連れ薄ら笑いを浮かべる魔術師がいた。

増援。

絶望。

皆一応武器を構える。もう顔に覇気が無い。くそっ俺の野望はこんなとこで潰えるのか…。
誰もが諦めたその時、じいさんがおかしな事を言い出した。

俺の目を見て

いいか
魔法で一番大事なのは信じる心だ。
おぬしは絶対にわしをも越えるだろう。何か普通の人とは違う素質がある。自分の可能性を信じろ。

そして勇者に向かい

父は誰よりも強く、そして優しい立派な男だった。
その存在が重荷に感じることもあるだろうが自分の血筋に誇りを持ちなさい。

パンツにも

この世に意味の無い事などない。おぬしのその人並み外れた腕力にもな。
勇者とこれからも旅を続けなさい。さすれば自分の生きる意味を知るであろう。

最後にピエロに

さらば我が戦友にして親友よ。一足先に向こうでまってるぞ。


と言ったと思うと魔物の群れに向かって駆け出した。





メガンテ





数十秒だったのだろうか。数時間だったのだろうか。
一瞬とも悠久ともとれる時の後、そこには何もなかった。
あるべきはずのものは何もなかった。

パンツは大声を上げて泣いている。ピエロは恐い顔をして考え込んでいるようだ。
勇者は涙ぐみ俯いている。パンツと勇者は口々に魔王軍絶対許さないと言う。


違う。


悪いのは魔王軍ではない。

俺だ。

俺が弱いから悪いのだ。結局これは弱肉強食の潰し合いなのだ。
この村の人も、じいさんも相手より強ければ死ぬ事はなかった。俺は自分の弱さが許せなかった。
何が鬼浜だ。何が世界征服だ。自分の舎弟の命すら守れなくて何が総長だ。
これは相手からの強烈な宣戦布告だと受け取った。俺は売られた喧嘩は必ず買う男だ。
魔王…絶対原型わからなくなるまでぶん殴ってやる。顔面ボコボコに凹ましてやる。


あああああああああぁぁあああぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!


突然俺は叫んだ。頭の血管ブチ切れるくらい腹の底から叫んだ。
パンツと勇者はビクッとなりこっちを見る。俺は空に向かってさらに叫んだ。

新鬼浜爆走愚連隊総隊長、魔王のとこまでブッこんでくんで夜露死苦!!!!!!!!
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