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総長◆Lh6WfP8CZUの物語

出会いと別れ[1]
―次の日の朝―

その辺の人曰く勇者は「いざないのどうくつ」なるとこに向かったらしい。
何か痕跡が掴めるかも知れないので、そこに向かう事にした。

今日はど突き合いではなくじいさんに魔法を習いながら歩く。なんとなくコツがわかってきた。
要はイメージなのだ。
炎が上手くイメージできるやつは炎系の呪文が得意だ。
氷を上手くイメージ出来るやつは氷系の呪文が得意なのだ。

何にせよ、「イメージ」と「確信」と「集中力」が大切なのだ。
俺はやはり天才なのかもしれない。そんな事を考えているうちに洞窟についた。

薄暗い陰気な感じの洞窟だ。
洞窟の中にもじいさんがいたが俺はもう年寄りはお腹一杯なので無視した。
いかにも怪しい爆弾によるだろう吹き飛んだ壁を抜けしばらく歩くと紫色の角うさぎが数匹でてきた。
どうせ雑魚だろうといつものように三人で突撃する。

ラリホー

何故かそこからの記憶は無い。目が覚めるとじいさんが一人でゼーゼー言いながら汗だくで立っていた。
じいさんはキレ気味で初めての敵にはもっと慎重にだの何だの説教を始めたが無視した。
鬼浜には特攻あるのみだ。これだから年寄は嫌いだ。

洞窟を抜ける。妙に懐かしい感じが。とりあえず近くの町に…っておい!ここバカ王の城じゃん!
ピエロがここは無視して先に進もうとしきりに主張する。何故だ。まあいい。
俺ももうこの町に特に用は無いし先に進む事にした。

しかしこのまま北に行くと俺が初めてこの世界に来た町に着くな。ジジイは元気でやってるだろうか。
いやそんな事よりもあのバニーの姉ちゃんはまだあの格好で仕事してんのだろうか。
そう考えると足取りが軽くなる。軍事訓練にも気合が入るというものだ。
三人のボルテージも飛躍的に上がっていく。
町に着く頃には三人ともボロ雑巾のようだった。
このままいくと訓練中に死人が出てもおかしくないかもしれない。

町の中に入る。いきなりガキとすれ違った。
ガキはヤンキー、パンツ、ピエロという三人組を目の前にして固まった。
そりゃそうだろう。正直俺も怖い。まだ酒場は開いてないようなので教会に向かう。
ジジイに再会する。まだ生きててくれたのかと喜ぶジジイ。たりめーだろうが。
ジジイの話によるとこの町に三日前勇者が来たらしい。
なんて事だ。クソ入れ違いかよ…勇者はさらに北の村へ向かったそうだ。

が、その村は数週間前に魔王に滅ぼされた町だというのだ。
一応止めたが聞かずに行ってしまったらしい。
それならまだその辺にいるのかもしれない。これは追いつけるぞ!俺達は急遽そこに向かう事にした。


その村には半日程歩くとついた。

そしてそこで俺は自分の認識の甘さを思い知る。

村。

いやもうそこはそう呼べないだろう。
民家は原型を留めていない。生々しい血の痕がそこらじゅうにある。

魔王はやはり魔王だった。生易しい相手ではなかった。ひとまず村を一周してみる。
普段は陽気なパンツもピエロも終始無言だった。
しかし気になるのは血痕の多さの割には死体が一つもない。

答えはすぐそこにあった。

そこには墓を掘る一人の少年の姿があった。
おそらく村に着いてからずっと掘り続けてたのだろう。
服は真っ黒で顔は疲弊しきっている。だが目は凄まじく澄んでいた。

それをみたパンツとピエロとじいさんが無言で墓堀を手伝う。
墓堀が終わった。少年がこちらに向かいありがとうと言う。

…え!?その声は少年ではなく少女のものだった。

この子が勇者のようだ。

俺は全身ありえないくらいの脱力感に襲われた。屈強な大男との死闘を想像していたのだ。
俺がこんな女の子をぶん殴ったらそれこそ問題じゃないか。犯罪だ。こいつを倒す必然性は無くなった。
パンツが話しかける。じいさんも色々聞きたい事があるらしくこの子に駆け寄る。

話の内容は大体こうだ。
何故一人旅なのか。この子は先代勇者の娘らしい。
それで常に魔物に狙われるのでできるだけ他の人を危険に晒したくないと。
それで16歳になり先代が旅に出たと同じ年齢なったので旅に出たと。

俺は無性にむかついた。この世界のやつらはみんなそうだ。「勇者」という名にすがりたがる。
実際16歳のガキに一体何を望むのだ?魔王がムカつくなら自分で喧嘩売りにいけばいいじゃないか。
世間の理不尽さはどこの世界も変わらないようだ。
と、その時。
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