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◆Y0.K8lGEMAの物語

東奔西騒[2]
「おい。何見てやがる。見世物じゃねえぞ!」

俺達の視線に気付いたのか、DQNの一人が俺達に向かって食って掛かってきた。
う〜ん…間近で見るとますます人間離れしてる顔だなぁ…

「んだと?俺の顔が人間離れしてるだと?ケンカ売ってんのか!!」

ヤベ…思わず口に出しちまった…
俺の言葉に激昂したのか、二人組が俺達に詰め寄る。思わず剣に手を伸ばす俺。
その一触即発の俺達の間に進み出るのはサトチーとピエール。

「何があったのかは知らないけれど、その辺にしておいたらどうだい? 魔物達だって自制心は持っている。人間である君達が持っていないはずはないよね」
「サトチー様の仰るとおりだ…が、無法を目の当たりにして動かぬは騎士の名折れ。お前達がさらに無法を重ねるのならこのピエール、これ以上は自制できぬぞ」
「んだとゴルァ!!」

ちょ…ピエール、逆効果。お前が興奮してどうすんのさ。
ふと見ると、ブラウンまでピエールの横でハンマーを振り回して臨戦態勢だ。
相手は完全に逆上している。こりゃ戦闘は避けられねえな。

覚悟を決めたその時、しゃがれた呟き声が俺達の足を止めた。

「…私の吐息は生者の肺を腐敗させる毒…生きながらに体を腐らせるのは苦しいぞ?」

ぽつりと漏らしたスミスの呟きに、二人組の動きがぴたりと止まる。

「…毒…だと?」
「…疑うのならこの場に留まっていろ…苦しみも意識が途切れるまでの辛抱だ…」

淡々と並べられるスミスの言葉に、二人組の顔がみるみる青ざめる。
スミスの特技『毒の息』の事を言ってるんだろうが、知らなかったら怖いよな。

「あ…兄貴…」
「…ちくしょう!!覚えてやがれ!!」

スミスの仲裁(?)で、二人組が血相を変えて逃げ出す。
すぐにもとの賑わいを取り戻した酒場。これでようやく情報収集ができるな。

「スミスは役者だねえ。結局一人で場を収めちまったな」
「…剣を抜かずに争いを収拾できるのならば、それが一番であろう…」
「サトチー様、申し訳ありません。主君の御前で憤怒に我を忘れようとは、騎士としてあるまじき不体裁。いかなる厳罰も慎んでお受け致します!」
「そんな…頭を上げて…いや、剣はしまって…ね?僕も力が入っちゃってたし…」

また切腹しようとするピエールを慌てて止めるサトチー。
俺とサトチーの二人で取り押さえてもジタバタと暴れるピエールだったが、スミスの説得でなんとか落ち着きを取り戻した。
スミスが発したのは一言『命を粗末にするな』…って、凄げぇ破壊力。

―☆☆??―
「…あぁ…すまねえだ、どこも怪我はしてねえだよ」

カウンター席の端では、絡まれていた男にブラウンが薬草を渡している。

「災難でしたね。怪我がなくて何よりです」
「いや、あんたらのお陰で助かっただよ。やっぱり都会は怖い所だやな。だども、おらぁ村の期待を背負ってるだ。おめおめと逃げ帰るわけにはいかねえ」

この男、場違いな雰囲気だと思ったが、やっぱり田舎から出てきたばかりらしい。
懐かしいねぇ。俺も群馬から上京した時は、だだっ広い東京駅で右往左往したなぁ…

「ところで、あんたら腕がたちそうd…」
「いつかは故郷に錦を飾れるといいな。俺も応援してるぞ」

男の境遇に妙な親近感を覚えた俺は、その肩にポンと手を置いて激励する。
頑張れ若人!(…俺より年上っぽいが…)

「いや、おら達の畑を荒らす魔もn…」
「慣れない都会生活は大変だろうが、体を壊したら田舎の母ちゃんが悲しむからな」

それじゃあ元気で。世界は違えど大都会に同じ夢を見た同士。
ここでの素晴らしい出会いを俺は生涯忘れない!!

「お礼は3000G。前金で1500G渡すだ。これで仕事を引き受けて欲しいだ」
「…何の話だ??」
「イサミ…熱くなるのは悪くないけど、人の話は最後まで聞くべきじゃないかな…」

突然大金を手にして呆気に取られる俺に、困った様子のサトチーが言葉を投げ掛ける。

「…なんだったらもういっぺん言おうか?」
「悪りぃ…全っ然聞いてなかった」
「本当にごめんなさい。もう一回最初からお願いできますか?」

サトチーに促され、話を再開した男。その目は完全に俺から逸らされていた。
…仕方ないっちゃあ仕方ないけどね…


イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:77/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鉄の胸当て
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――
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