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◆Y0.K8lGEMAの物語

迷鏡止水[2]
「イライラさせるヤツだったなあ。眩しい光とか反則じゃね?」
「…接近戦主体のお前にとっては…相性の悪い相手だろうな…」
「ま、ヘンリー様がいれば、マリアさん他三名の安全は保証されてるって事よ」
得意のイオでモンスターを蹴散らしたヘンリーが気分爽快と言った顔で笑い、それにつられたかのように、マリアさんもクスクスと笑ってみせる。

俺はと言うと、初っ端にインスペクターの放つ眩しい光で目を眩まされ、『目がぁ〜目がぁ〜!!』と、軽くパニック。
手に触れた触手を半ば強引に引き摺り下ろし、その目玉を剣で叩き潰した。
惚れ惚れするほど不細工な戦いだったな…畜生。

「はぁ、もう少し攻撃魔法を練習しねえとなあ…ん? サトチーどうした?」
俺達から少し離れた場所で、潰れたインスペクターの残骸を調べているサトチー。
何か宝物でも見つけたかな?
とどめを刺しきれてなかったとか?
実は『ぷるぷる ぼくはいいインスペクターだよ』だったとか…
まさかね。
「サトチー?」
「ん?…ああ、済まない。先を急ぐんだったね」
二回目の呼びかけでやっと気が付いたらしく、俺達の所へ戻って来る。
「あの目玉がアイテムでも持ってたか?ホラ、親分に献上しとけ」
「ははは…残念だけど何も持ってなかったみたいだね」
ヘンリーと笑い合いながら、隊列の先頭を進むサトチー。

最近、サトチーが上の空になることが多いんだよなあ…人の事言えねえけど。

足場の悪い吹き抜けを恐る恐る通り過ぎ、いくつかの階段を上った先は、狭く入り組んだ下層と違い、一直線にのびる通路のみという実にシンプルな、下層とは明らかに雰囲気の違う空間。
その通路の奥の祭壇。燦々と差し込む太陽の光を浴びて輝く鏡が見える。
あれが、ラーの鏡…

だが、祭壇へ続く通路の途中には床の裂け目が存在し、俺達の行く手を阻む。
幅は10メートル強といった所か、助走つきのジャンプでも届かない距離。
裂け目の縁から下を覗き込むと、遥か下の方に中庭が見える。

「イサミ。ジャンプ」(*´∀`)b
「斬るぞ」
にこやかに俺の肩を叩くヘンリーに対して、思わず剣を向けそうになる。
落ちたら一階までまっ逆さま…潰れたトマトみたいになっちまう。
「マジになるな。冗談だよ」

「神は、鏡を手にする者の勇気を試されると言われています。でも、これでは…」
…悪趣味な神だな。コレじゃあ身投げじゃねえか、せめてバンジーにしろよ。
マリアさんの語る神に、心で毒づきながら祭壇を見やる。
「ロープを引っ掛けるような取っ掛かりもないね」
「…跳ぶしかない…な…」
「そうだよなあ…跳ぶしか……は?」
スミスには珍しい冗談か、もしくは俺の鼓膜がイカレたかと思ったが、スミスは既に後方でクラウチングスタートの体勢を取っている。
「…落ちたらもう一回登れば良い…幸い…私は痛みも感じないしな…」
「ちょ…待…」
サトチーが静止するよりも早く走り出し、スミスが一気に跳んだ。

やっぱり跳躍力が足りねえ。スミスはタフだけど基本的に鈍い。
跳躍したスミスの体は、目標の手前で失速。放物線を描いて落下をはじめる。
その姿は、一秒後には床の裂け目の中に消えてしまっているのだろう。

…1…2…3…4…5秒が経過してもスミスは、まだ俺の視界の中にいる…

俺は呆然としながら、足場のない空間を歩くスミスを見つめる事しか出来ない。
不思議そうな顔をしながら歩を進め、祭壇に安置された鏡を手に取るスミス。
「…見えない足場があるみたいですね…」
腰を抜かしてしまい、自力で立つ事の出来なくなったマリアが呆けたように言う。
「…受け取れサトチー卿…ラーの鏡だ…」
何もない空間の上、駆けつけたサトチーに鏡を手渡すべくスミスが一歩進み出る。



……
瞬間。スミスが裂け目に消え、数秒後には下のほうからドチャリ…と音がする。

「スミスーーーーーーー!!」
「あそこだけ、足場が途切れてたみてえだな」
サトチーが叫び、妙に冷静なヘンリーが状況を分析。
マリアさんはあまりの事態に気絶しちまっている。
本当に悪趣味な神だな。人(?)の命をなんだと思ってやがる。
神様に会う機会があるのなら、チェーンソーを持参しようと思います。


慌てて一階に下りてみると…うん、予想通りと言うか…酷い事になってた。
体半分××ったスミスを中心に、駅のホームにぶち撒けてあるアレみたいなモノやら、流し台の排水溝に溜まったソレみたいな残骸やら、夏場放置したカレーみたいな…(ry
…色んな○○がばら撒かれた中庭は、まさに地獄絵図。
「…鏡は無事だ…改めて受け取れ…」
そんな状況でも生きているのは、さすが痛みを感じないアンデッドと言うべきか、ベホイミで治療を受けながら、平然とサトチーに鏡を手渡している。
「イサミよお…こう言っちゃ悪いが、スミスの旦那に任せて正解だったな」
「ああ、俺達だったら破裂したミートパイみたいになってたろうな…」

「よし、これで大丈夫だ。どうだい? 動き難い場所とかあるかい?」
「…問題ない…パーツは足りているし…再接合も上々だ…」
体のあちこちを動かしながら、スミスが事も無げに言う。
「それじゃあ一度、修道院に戻ろうぜ。マリアさんも疲れてるだろうしさ」
「そうだね。軽く休息を取って、もう一度ラインハットに忍び込む作戦を練ろう」

ラーの鏡が太陽の光を反射して輝く。
鏡の中にはどこまでも透明な空色が広がっていた。


イサミ  LV 15
職業:異邦人
HP:69/74
MP:11/11
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌
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