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◆Y0.K8lGEMAの物語
[第二話]

案ずるより鉄拳制裁[3]
ムチ男が怒声を上げて俺に鞭を振るう。

右肩から一直線に衝撃が走る…痛い…が、俺達の突進は止まらない。
サトチーが片方のムチ男に殴りかかる。
俺も残ったムチ男に掴みかかり、一心に殴りつける。
接近しちまえば鞭も怖くない。ずっと俺のターン。

お前がッ泣くまで殴るのをやめないッ!

「ケエェェェ!!」
突然の衝撃と胃からこみ上げる不快感。
ムチ男の蹴りが俺の腹部にヒットし、相手を掴んでいた俺の手が緩む。

しまった、距離をとられた。

そう認識した時には、相手は既にムチを振りかざしていた。
ヤバイ! 痛恨直撃コースだ!!

「バギ!!」

覚悟を決めた瞬間、ムチ男が見えない何かに吹き飛ばされた。
俺に向かっていた鞭は軌道を変え、明後日の方向に逸れる。
今のはサトチーの魔法か。助かった。

「一気に決めろ! もう僕には魔力が残ってない!」
もう一体と組み合いながら、サトチーが声を上げる。

一気に決める…
しかし、距離がありすぎる…

魔法を…

「ヒャッ!小賢しいマネをしやがって。お前の魔力も吸い尽くしてやるぜ」
起き上がったムチ男が奇妙に体をくねらせる。

くねくねくねくね…

何だ?あの動き…
…ミツメテハイクナイ…

脳が危険を認識した時、俺の中には妙な空虚感が漂っていた。
何だ? 何をされた?

「ヒャヒャヒャ…お前の魔力はあらかた吸い尽くしてやったぜ。後は…じっくりとムチでいたぶって屠殺処分してやらあぁ!!」

遠い間合いからムチ男が鞭を振る。
完全に俺の間合いの外。近付こうにも、唸りを上げる鞭の連撃がそれを許さない。

鞭が吼える、叫ぶ、狂乱する。
俺の前進を阻むように、一撃で倒れないように鞭が俺の体を刻む。

近付かなきゃ…
近付けない…
ならばここから攻撃を…
魔法…
俺に使えるのか…
でも魔力が…
使わなきゃ…
使わなきゃ死ぬ…
考える…
ヤツをぶちのめす一撃…
ソレの在り方…


無意識に、だが自然に俺の拳が天を向く。


「ふん。魔力も残ってないクセにハッタリかましやがって。これで屠殺処分完了だあぁぁ!!!」

ヤツをぶちのめすのは、俺達が毎日転がしてきたアレだ。

そしてソレは…


す ぐ ソ コ に 既 に 在 る ! ! !


俺の拳が勢いよく地面に叩き付けられる。

大きく揺らぐ視界 轟音と震動に支配された空間
ヤツの真上の岩盤が崩れ、岩石がヤツの頭上に降り注ぐ。

「ヒ……ヒャアアアアァァァァ!!!!」


 岩 石 落 と し


飛び散る礫と舞い上がる砂煙が収まった時、ムチ男は岩の下でのびていた。


鉄拳制裁完了


イサミ  LV 5
職業:建設作業員
HP:4/38
MP:0/6
装備:E奴隷の服

呪文・特技:岩石落とし(未完成)
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