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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

大地へ
一本の剣を手に取る
銅の剣に似た、装飾の全く無い扁平な剣
武器庫のどこを探しても、オリハルコンの剣は見つからなかった

「これ、銅の剣ですよね?」

小柄な体に良く似合う、身かわしの服を装備したフーラルへ問いかける

「ん? あー… いや、違うな
 ほら、柄を見てみろよ」

言われるまま柄を見るとなるほど、銅の剣はただの丸い棒に布を巻いたものだったのが、
この剣の柄は楕円をしている

「な? それとこいつはずいぶん軽い
 誰かが銅の剣を真似て造ったんじゃないのか」
「ほんとうだ、軽い…」

試しに構え、縦に斬る動作をしてみたがとても扱いやすい
他にも鋼の剣や破邪の剣も試したが、扱いやすさではこの謎の剣が一番だった

「おう、気に入ってるな
 けどそれ、大丈夫か? ちゃんと魔物と戦えるのか?」
「うーん… やってみなきゃわからないですね
 だけど気に入ったのでこの剣にします」
「ま、銅の剣よりは戦えそうだからな
 何かあっても俺がいるから安心しろ!」

フーラルの言う通り未知の剣だから不安はあったが、妙に気になったのでこの剣に決めた

「お二人とも、装備は決まりましたか?」

ルビスと会話していたクリーニが武器庫へ入ってくる

「お、決まったぜ 先生は武器、いらないのか?」
「私は医者ですから… 魔法も使えませんし、あなたがたを頼らせてもらいます」
「なんだ、そうだったのか! タカハシも先生もそこの"ねえちゃん"も、俺のこの槍で軽く守ってやるぜ!」

このフーラルという男、自分の腕にかなりの自信があるらしい

「さて、準備も出来たことだし後は出口ですが…」

ちら、武器庫へ入ったばかりのトルネコを見るクリーニ

「おっと、忘れていました
 出口はここですよ」

武器庫の奥の壁へ、先ほどと同じ細い棒を差し込む
スゥと、やはり同じように口が開き外の世界が垣間見えた

「…!! そ、外だ! やっと出られる…!」
「落ち着いて、落ちついて… さあ、出ます、みなさんいいですね」

興奮するフーラルをなだめながらクリーニが言う

「ではトルネコさん
 私たちは行きます… 迎えに戻るまで、どうかお気をつけて」
「すぐに戻ってくるからな! それまでみんなを頼むぜ!」

クリーニ、フーラルが外へと出る

「…頼みましたよ」

ルビスはトルネコの眼をじっと見つめ、何か会話しているようにも見えた

「トルネコさん、必ずまた…!」

トルネコの厚く、大きな手を取り固い握手を交わし、ルビスと共に建物の外へと出る
フーラルとクリーニは建物の巨大さに興奮している様子だ
俺は元の世界で高層建築に見慣れているせいか、たいした感動はなかった

「皆さん、お気をつけて」

出口からトルネコが顔を出し、見送ってくれている
我を取り戻したクリーニが浅く頭を下げ、フーラルと俺は右手に拳を作り、高く掲げた

「いきましょう」

合図ともとれるクリーニの言葉
俺たちは振り向かず建物から逃げるように、歩き始めた
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