タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語
地鳴り
ルビスは再び眼を閉じ、沈黙している
俺はこれまでに教えられた話を、自分の考えに従い理解する事に努め、やがて疲れベッドへ倒れ込む
目覚めてからこれまで、陽が移動し影が伸縮する様子を見ていない
恐らくこの世界には太陽がなく、イシスにあった光苔のようなものが、明かりを作り出しているんだろう
ここは…
魔物が作り出した人間のための住居だ
が、思いのほか、少なくともここは安全で平和なんだ
変な感じだ…
特に意思を持たずとも生き長らえる事が出来る
ただ、意識はないからっぽの状態だが─
「ガランゴトン!」
突如、建物が激しく揺さぶられ、思わず身構える
何事かとルビスを見る
ルビスはしっかと目を開き、しかし表情は対照に不安定だった
「ル、ルビス!! これはなんだ?!」
「わかりません…! ですがこの世界自体に変化が起こっていることだけは…! 断言できます…!」
「わからないって?! あ、あんたは神なんだろう! なんでも知ってるんだろう!」
なにがどうしてしまったというのか
俺たちはその激しい揺れにベッドや椅子から投げ出され、地面に這いつくばった
一向に収まる気配を見せない波
ゴウゴウガキキと、岩や石のせめぎ合う不快な音が飛び交い、
ズズズ、ザザ、と部屋の中にある少ない物達は右往左往とする
これはまるで、
体験したことは無いが、それは世界の崩壊を予感させるほどの激しいうねり──
どれくらい経ったか
ゆうに五分はもうれつに揺れ続けた
ごんおんと耳鳴りがする
何かが"ゴゴン!"と轟音を轟かせたせいだ
揺れが収まっても立つことが出来ない
頭も感覚も、おかしくなってしまったみたいだ
ただルビスだけは、すぐに立ち上がる事が出来ていた
「どうやら─」
ルビスは続けた
「にわかには信じられませんが……
ここは"地上"のようです」
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