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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

経緯
トルネコが運んできた水を一気に飲み干し、俺は頭の中を整理していた
器の横へ無造作に置かれたパンには、手をつけずに─

ルビスが言うには…
ここは魔王の創りだした、能力のある人間から力を吸い取る為の世界 ─魔世界だ
気を失う前、魔王が言っていた、
"この私の為に、その魂を、捧げ続けよ"
とは、この世界で永遠に力を吸われ続けろ、という事なのだろう
"いのちの源"から力を取り出すのも、この世界で行っているそうだ

トルネコは、魔物の進行があったとき、魔王みずからここへ連れてきたらしい
目的はこの建物の管理と、ここに住む人間の"希望"を無くすため…
かつて勇者だった男が魔物達の為に働いている、そんな姿を見せられたら気力も失せるだろう
あの時、ドラゴンの手で心を奪われたのは、このための準備だったのかもしれない

テリー…
彼はこの世界で姉と共に気力を失わなず、ずっと俺の回復を待ってくれていた
どんな思いで、待っていてくれたんだろう
なかなか目を覚まさない俺をみて、何度くじけそうになっただろう……
姉を連れて行かれ、ルビスが現れ、姉と俺を救うため"いのちの源"へ向かった
こんな世界で救うなんて、表現が間違っているかもしれない
だけどテリーは、何もせずにはいられなかったんだろう…

俺は、テリーがルビスに持たされた"静寂の玉"によって、メイに起こされた
起こされた… のだろうか…?
メイの言葉を、俺はただただ待ってただけなのかもしれない
もう聴けないと思っていたその"声"に、すがっていたのかもしれない…

他の人間は、ここで気力を失い力を奪われるか、魔物によって殺されてしまったそうだ
まだ生きて、"下の世界"で抵抗を続けている者もいるそうだが、多くはいない
毎日を魔物の襲撃に怯えながら暮らしていると、ルビスは言っていた…

俺は…
こんな状況を打開し、世界を元に戻せるのだろうか
そして、自分の世界へと戻ることが出来るんだろうか─
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