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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

再会と混乱
「関係ない?
 どういう事だ?」

ルビスの意外な言葉は、俺を大きく動揺させた
"いのちの源"は、繋がりを持っているんじゃないのか?
だから俺は、ここにいるんじゃないのか?

「それは、あなたの世界とこの世界では"いのちの源"が違うという事です
 タカハシ、世界は私たち神でさえ到底把握出来ないほど、無数の物質に満ちています
 物質は空間を形成し世界を形作る
 その、それぞれの世界は大きな空間に囲まれ、独立して存在しています」
「じゃあ俺は、たくさんある囲まれたどこかの住人… でいいのか?」
「そうです
 世界はそれぞれで独立しています
 ですから、あなたの世界とは直接かかわりがありません
 そして"いのちの源"も、それぞれ独立しているのです
 ただ、私たちにも詳しくはわからないのですが"いのちの源"同士が、繋がる事もあるようです」

俺はこの世界とは違う別の世界の住人で、"いのちの源"も違う
なるほど、そういう意味で"関係ない"って事か
てっきりルビスに"創られた"のかと考えてしまった…

でも、じゃあ─

ふと、部屋の外に何者かの気配を感じ、出しかけた言葉を喉へと押し込める
何者かが部屋へくる…!

「気配が…」

声を殺しルビスへ話しかける

「ええ、知っています
 問題はありません、トルネコです」

え?
トルネコ? なぜ?

足音が止まり、外光を遮る
一つしかないくり貫かれた入り口は、光をわずかにしか通せない
しかし部屋が暗くなる事はなく、一定の光量を保っている

「おお 意識が戻ったんですね」

この声、その丸い顔に口ひげ
まさしくこの男はトルネコ─

「……トルネコさん!」

身体は素直に、トルネコへと駆け寄っていた
狭い部屋で数歩もあれば届く距離が、まるで映画のワンシーンにも感じた

「トルネコさん!
 俺です、タカハシです!
 元気に、回復できたんですね…!
 よかった─」

トルネコの顔は、まるでキョトンとし、言っていることをわかりかねるといった表情

「はて…? あなたは、確かに名前は知っているが…」
「な、なにを言ってるんですか!
 こんな時に冗談なんて…!」

まさか俺を忘れてしまったのか??

困惑し、無言で向かい合う俺とトルネコ
そんな様子を見かねたのか、ルビスが間に入る

「トルネコ、タカハシは目覚めたばかりでとても衰弱しています
 飲み物と食べ物を、持ってきていただけませんか?」

困り顔のトルネコはルビスの言葉に気を移し、俺の顔から視線をそらす

「ああ、はい すぐに持ってきますよ
 ところで頭が少しぼんやりするんですが、私はどうしていたんでしょう
 どういうわけか倉庫で寝ていて、魔物に起こされ説教されてしまいました…
 昨日、この部屋へ来てからの記憶が、ないんですよ…
 おや? テリーさんの姿が見えませんね」

テリー…?
彼もここにいたのか…

「私にはわかりませんが、先ほど魔王の手下が連れて行きました
 ですから、ここにはもういません」

ルビスはそう答え、トルネコは"ふむ"と頷く

「そうですか…
 ところで名前を思い出す事は、できましたか?」
「ええ、私の名はルビス…」
「ほう? どこかで聞いた事があるような……
 まぁ、思い過ごしでしょう」

言い残し、突っ立ったままの俺の目の前から歩き去るトルネコ
眼前が開け大きな空間が現れ、丸い煙突状の建物内部だけが覘く

「タカハシ、座ってください」

ルビスの声にはっと自分を取り戻し、元のベッドの"へり"へ座る

わけが、わからない
トルネコ、テリー… 混乱する…
俺が夢を貪っているあいだ、一体なにが起こっていたんだ…

「…世界の話の前に、まず今の状況をお話すべきでした」

ゆっくりと、淡々と
茫然とする俺にルビスは、起こっていたことを話し始めた
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