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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

触れるもの
「タカハシ!!」

響く声にハッと気を取り戻す

「!?」

霧状の魔物は変化無くニヤリと俺を見ている
声の主は目の前じゃない!

「目の前にあるのはあなたが作り出した幻!
 事実とは違うのよ!」

なな、何を言ってるんだ
事実とちがうなんて、違う…
事実なんだ
違うことなんて、何もないんだ!

「違う違う! 私を信じてタカハシ! お願い…!」

信じると言ったって…

「俺は、この声が誰の声なのかを知らないんだ
 いや─ 知ってる
 知ってるけど、それは本当じゃないかもしれない…!
 いや本当で、あるはずがないんだ!」

だからもう、眠らせてくれ
悪い夢のなかで空っぽな夢を、みさせてくれ…

霧の魔物は動かない
ただただ、俺を見下すように、その細く青白い目で刺すだけ

「信じて─」

声の主が言ったその刹那
からだのなかへ何かが入り込んでくる
とても暖かくって切なくって
ずっとずぅっと、欲心深く欲し続けてきたこの感情

目の前の魔物は空気と混ざり合いながら消え
ぎゅうぎゅうに抑え込んでいた感情が、当たり前のように膨れ上がっていく

「こんなこと ほんとに」

景色は一変し暗闇の中
俺の心に触れてくれる確かな声

「メイ… どうして…」
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