タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語
我が力と
「ぐ!!」
俺の剣が全く効かない!
くそう!
身体さえ完全なら掠るくらいは…!
「楽しくないな まだ人間界で抵抗してきたルビスの使いと女のほうが楽しめた
少なくとも絶望の味は格別であった! クックックックック」
それはタカハシとメイの事か
楽しいとか楽しくないとか、絶望がうまいとか……!!
「おおおお!!」
もう一度、今一度まじん斬りを!
命尽きてもかまわん!!
再び剣を構え全ての力を込め─
「う?!」
身体が動かない…?
な、んだ
何か強い力が俺を抑え付けてくる…!
「どうした? フハハハハハ!」
だめだ…
絶対に考えるのはよそうと決めたんだが
どうしたって絶望を─
「メラゾーマ!!」
ゴオという爆音と共に魔王が巨大な火の玉に包まる
「テリー!!」
「!!」
姉さん!
なぜ戻ってきたんだ!?
「弟が傷つけられるのを、黙ってみていられないわ!」
即座に魔法詠唱をはじめ─
「ベギラゴン!!」
俺の身体は未だ動かせない
魔王は益益、強大な炎に包まれていく
「テリー! 今のうちに!!」
くっ!
だめなんだ姉さん!
動けない、声すらも……あ!
前触れ無くテリーの拘束が解ける
急いてテリーは姉の下へと向かう
「フフ それでこそ、絶望はより深くなるというものだ…」
強い魔力を感じたかと思うと一瞬にして、魔王を取り巻く炎が消えて無くなった
「無くすには惜しい逸材だな」
姉の震えが伝わってくる
正直もう、打つ手は無い
「お前たち 借した力を返してもらおう」
「借した力だと? これは元々じぶんのモノだ!」
わからない
どうなるんだ俺達
どうしたらいいんだ
ルビス様…
「簡単なことだ」
魔王が両手を二人へかざす
「く…!」
身体が持ち上げられ、再び身動きが取れなくなる
今度はミレーユも一緒に─
「死んだ者がどうやって"私の力"へ取り込まれるのは知っているが─」
ググッと姉弟の身体が"いのちの源"へ移動させられる
「生きた者がどう取り込まれるのか、今、知りたくなった」
魔王が手をグイと握る
同時に二人の身体は中央の大きな光へ押し付けられてゆく
「う、うううぅうううぅううぅっぅぅぅ!!!!」
テリーとミレーユの声が混ざり合い、空間へ響く
先刻触れた小さな光よりももっと大きく複雑な"意識"が二人を襲う
か…た、たかはし
た の む……
膨大かつ巨大な意識に支配され、やがて気を失い
身体は溶けるように"いのちの源"へ取り込まれ─
魔王は静かに、感動と共に眺めていた
テリーとミレーユ、二人の取り込まれる様が
魔王にとっては美しいのだ
空間は静けさを取り戻し
夜空は美しく光を湛え
邪心の像は一心に魔力を受け取り
人間達は無心に魔力を送り続けた
「我が力となれる事を 光栄に思うが良い」
利用される"いのちの源"
その悦事に魔王自身、身震いすら覚えるのであった
〜第四部 完〜
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