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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

失敗
魔王ゾーマ
俺を冷たい目で見浅む男

「隠蔽は失敗… 我が側近を倒し… なぜお前は力を持つのだ」

魔王の言葉は全て質問のようでそうではない
発するたびに俺の終わりが確実に近づいてくる
そんな言葉だ

「邪神の像を破壊しようとしたのか… やはり隠蔽する術を見つけなければならぬな…」

タカハシはこんな相手と戦ったというのか
対峙して初めてわかった
次元が、そのものが違いすぎる…!

「俺の」

だけど俺は、せめて姉だけは救ってやりたい
どうにか手段を聞き出し─

「姉に何をした…」

魔王が"ほう"とテリーの言葉に興味を持つ

「お前、そうかあの人間の女は姉か」

魔王は、何かを唱えミレーユを指差す

「どうだ 縛りを解いてやったぞ
 さぁ、再会を喜ぶが良い」

姉を見ると確かに、様子が変わり周りを訝しげに見渡す
状況が理解できていないようだ

「姉さん!」

ザッと駆け寄り姉を背に隠す
他の人間達は変わらず像へ魔力を送り続けている

「どうだ、望み通りだろう」

こ、こいつは何を考え…
は!
しまった、姉を知られてしまったのは却って逆効果だったか
タカハシとメイの事を忘れていた─

「テリー! これは一体…」

ミレーユが今にも消えそうな声でテリーへ話しかける

「姉さん、すまない 俺は失敗してしまった…!」

俺の言葉に姉はますます"わからない"という顔をする
今ここで、全てを説明するのは無理だ
そしてなにより、生きて戻る事はないかもしれない

「あれは… 魔王ゾーマなんだ
 詳しく説明することはできないけど、すまない もう、無理かもしれないんだ…」

俺は側近にさえ危うく倒されかけた
そんな俺が満足に戦えるとは到底思えない
先の戦いでの傷だってまだ癒えていないんだ

「そんな…… テリー、私を助けにこんなところへ…」

それもある
それもあるんだが、もう一つ大事な事もあった
そしてそれは幸運にも済ませる事ができた…
くそ!
このままうまくいくはずだった…
まさか魔王が目の前に現れるなど!

「ククク……」

魔王の目が怪しく光る

こうなるとわかっていれば…
俺一人が死ぬだけで済んだかもしれないのに…!

「喜びは分かち合えたか? そろそろ絶望をいただくとする」

殺られる!

「姉さん! 時間稼ぎをする! 白い雲に向かって走るんだ!
 どうにか逃げてくれ!」

ミレーユの背中を強く押し、促すテリー
剣を構え呪文詠唱に入っていた

「ギガデイン!」

ズガガと強力な雷撃がゾーマの頭上へと落ち、テリーの雷鳴の剣がうなりをあげ斬りかかる
その様子を、ミレーユは背後で感じ、だがテリーの思いを無駄にするまいと雲の中を駆けた
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