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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

静寂の光
落ち着きと少しの体力を取り戻した俺は"いのちの源"へと歩み寄る

「この静寂の玉をもって、どれでもいいから触れればいいんだよな」

夜空に浮かぶ無数の光
生命全ての元であるこの光に、手を触れるなど通常なら躊躇する
果たして触れていいのか、触れて平気なのか
全く一切の予想も出来ないがそうしなければ世界は滅ぶ

開いた地から沸いてくる光へ触れようと右手をかざす
左手には静寂の玉を持ち、いよいよ光へ手が触れる─

「??!!?」

触れた瞬間
喜びに声を張り上げそうな感覚
怒りに我を失いそうな感覚
哀しみに引き裂かれそうな感覚
楽しさに笑い出しそうな感覚
懐かしさで満たされるような感覚
心へ何かが入ってくるような感触
理解を超える理性に支配されそうな感触
身体が飲み込まれてしまいそうな感触

たくさんの"意識"が一度に大量に押し寄せる
このままでは精神が持たない

「ううぅ…」

た、たしか
ルビス様は静寂の玉が反応すると…
それでわかると しかしどう反応するというんだ!
早く…!
なんなんだこの …!

光が、静寂の玉が反応を始めたのか光を放つ
同時に熱を帯び始め、左手から右手へ身体を巡り─

「これ、が! 反応?!」

右手から"いのちの源"へと伝わったのを感じ、素早く手を引く

「か、はぁはぁはぁはぁ…………
 とにかく、うまくいった はぁはぁ」

静寂の玉から光が失われ、発せられていた熱も無くなった
その不思議な現象に、しばらく心を奪われてしまう

「…これで」

やるべき事は完遂できた
後は姉を連れ戻し、あの建物へ戻る

未だ、バトルレックスと派手に戦っていたというのに邪神の像へ魔力を込め続ける人間達
何も無かったかのように静かに

「姉さん、帰ろう」

姉の肩へ手をかけ話しかける
しかし反応が無い…

「…どうなっているんだ」

手荒な事はしたくなかったが、姉の両腕を掴みそのまま立ち上がらせようとする
が、動かない
いや、動かせなかった
どういうわけか全く、微動だにしない

「くそ! 像を破壊すればいいのか?」

邪神の像は"いのちの源"のすぐ側へ無造作に置かれている
それはこの世の生き物とは思えない姿を形取り、不気味に"いのちの源"を凝視していた
放置したとしても絶対に害にしかならないだろう
俺はそれを剣で破壊しようと構えた時─

「それを破壊されては困る…」

背後に漆黒の霧と禍々しい気配
構えた身体を動かすことが出来ないほどに、強烈なその魔力

「私の… 力に乱れを感じた
 何事かと来てみれば…」

鼓動が激しくなる
汗腺全てから嫌な汗が滲み出してくる
突如あらわれたその男の声
気が遠くなるほどに圧倒的な存在感
"私の力"と言った
この男は"いのちの源"を自分のモノだと言ってのけた

恐恐とその正体を確認する
いや 確認するまでもなく、わかってしまった

こいつは… 信じたくはないが こいつが魔王 ゾーマ、だ

「人間、私の力になにをした」

その言葉に俺は、質問では無く死を感じた
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