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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

言葉の意味
思った以上に広いこの地
竹の水筒を口に当て喉へ胃へ、水を流し込む

「そんなに距離はないと聞いたのだが…ん?!」

突如、あたり一面に生成色の霧雨が立ち込める
同時に邪悪な気配と汚れの無い気配
正体の見えない相手に、息を潜め剣を抜き戦闘態勢で様子を見る

「やはり長くは続かないな… ゾーマ様のおっしゃるように完璧な隠蔽は出来るのだろうか」
「ギャアギャア」

霧雨が薄まり、目と鼻の先に二つの魔物が会話しているのを聞いた
その向こうには幾重にも重ねられた純白の雲─?
あれが邪悪とは違う気配の…

「! おまえ、どうやってこんな所へ!」

鎧の魔物、ガーディアンに見つかった
覚悟を決めキッと睨み返す

「なぜだ? お前から力を感じるな…」

ジリと足元を踏み固める鎧の魔物

「待て! その雲がなんなのかを教えてくれれば、お前達の疑問に答えよう」

ガーディアンの言葉を遮り、逆に質問を投げかけた

「……」

ガーディアンが少し考え話し始めた

「力を持ったとして、我々に敵う訳も無い… いいだろう」
「ギャ!」

もう一つの魔物、ダークサタンも同調したようだ

「この雲の中にはゾーマ様の力が蓄えられている
 いのちの力とおっしゃられていたがよくわからない」

いのちの力
じゃあここに、ルビス様の言っていた"いのちの源"が…

「そして元々魔力の高い人間を選び出し、安定させるためこの中で、邪神の像へと魔力を送らせているのだ」

魔力の高い人間?
それじゃあ─ !

「姉さんもここか?!」
「姉さんだと? そんなもの知るわけがない
 つい最近、女が一人つれてこられたがな」

間違いない、姉さんだ
こんなところに!

「さぁ、お前! どうやって力を取り戻した!」
「すぐに教えてやるさ」

全身の力を込め地を蹴り、ガーディアンへまっすぐ剣を突き刺す

「クッカッ…!!」

突然の事に動けないダークサタン
雷鳴の剣は鎧を貫き、ガーディアンが穴の開いた胸を抑え後ずさりする

「お、お前…! だましたのか!!」

ガーディアンはいきりたち盾を捨て、巨大な刃のついた矛をビュウと俺めがけ振り下ろす

「だましてはいない!」

その刃を横っ飛びで避け、オロオロするダークサタンの目の前へ─

「ギャ!!」

驚いたダークサタン
滅茶苦茶に尻尾を振り回し間合いを取ろうとする
が─ 尻尾を振る事だけに気をとられた魔物
俺は難なく背後へまわり尻尾を切り落とし─

「ギ………!」

地へ転がるダークサタンの頭
背中に飛び乗った俺は胴体と頭の付け根へ剣を叩き付けていた
歴然とした差を見せ付ける

「はっ……!」

敵の力を知り怖気付くガーディアン

「言ったじゃないか、"理由"を教えると」

剣を構えゆっくりと鎧の魔物へ近づいていく
両者はもうほとんど、手を伸ばせば互いの顔へ届く距離にある

「う、か……」

巨大な矛を構えるその態勢は、戦うモノではない
混乱し、ただ持っているものを目の前に突き出す
それは目の前に対峙する、自分より強い者から身を隠すように─

「もう終わりか?」
「ぐぬ─!」

身を乗り出したガーディアンは、その動作よりも早く払われた雷鳴の剣によって矛ごと二つに分かれた
ガシャンと墜ちる二つの身体

「…力を取り戻した方法 それはこうやってお前達魔物を倒し平和を築くと、行動したからだ」

ふわりと気体とも固体ともいえず"いのちの源"へ吸い込まれる魔物
その一言だけを言い放ち、俺はいよいよ向かうべき目の前の雲へと足を踏み入れ雲を割って進んでいく
感触はほとんどない
あるのは視界を遮る白い雲

「この中に…」

確実にわかるのは"いのちの源"がありそして、姉がいる事だ

気配を殺し、確実に前へ歩む
水筒の水が完全に無くなった時、視界が開けた─
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