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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

錆びた世界
身体の奥から溢れ出してくる力
失われていた、充実する魔力

これだ
ずいぶん懐かしい、この気力

「……これで、全てです 力は戻されました」

ルビスは疲れたように、深く、椅子へ腰掛ける
入り口には呼ばれたトルネコ
ルビスの力によって、まるで操り人形のごとく指示を待つ
この、人間を押し込める窮屈な建造物から出るためには彼の力が必要だ

「では、行ってきます」

言葉少なく俺は部屋を出た
トルネコに導かれグルグルと階段を降り続ける
この"絶望の町"にいる"壊れた人間"の、いくつもの目線だけが、その様を追いかける

「ここへ…」

静かに一言、発するトルネコが何も無い壁へ向かい、鍵であろう小さな棒を差し込む
ベージュの壁にぽっかりと穴が開き薄暗い部屋が姿を現す
部屋の中は無数に並んだ武具で埋め尽くされ、その先の壁を更にトルネコが鍵を使い開く
開いた壁の向こう─ そこには錆びた色が見える

「武器はここに隠されていたのか…」

連れてこられた人間の武器を棄却せずに並べてあるという事は、恐らく魔物達で使うつもりなのだろう

ガラガシャと手前から武器防具をひっくり返し剣を探す
が、なかなか見つけることが出来ない
もしや、すでに持ち去られた後なのでは…

そんな不安を抱き始めたとき、奥まった箇所で青白く鈍い光を放つ一振りの剣を見つけた

「あの光…!」

跳ねるように剣へと近づき、柄をグッと掴む

「これだ… 雷鳴の剣!」

剣をゆっくり天井へと突き上げる
見覚えある、刀身に刻まれた一筋の青
まるで再会を喜ぶかのように、魔力と共鳴する雷鳴の剣

この剣を手に入れてから、様々な事があった
ライフコッドでのドラゴンとの戦い…
メルビンとの出会い…
激しい修行の旅…
あれからとても強くなった
今ならあのドラゴンにだって、敗れはしないはず…

身体は小刻みに震え、心は強く奮う─



「きっと、良い結果を持ち帰ります」

トルネコへ、今は理解できないだろう言葉を掛け、外界へと向かう
らせん状に高く伸びたその建物から一歩二歩、振り返るとゆっくり静かに塞がる肌色の穴
真っ赤に染まる煉獄そのもの、炎の鎧を身に纏いゆっくりと錆色の世界を見渡す
赤茶色に焦げた空
不気味な殷紅色の地
匂いも音も無く、時が止まったような空間

「この方向だな…」

空は鈍鈍と蠢いている
雷鳴の剣をしっかと携え、目的へと歩みだす
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