タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語
結んだ願い
「ん……?」
確か…
そうだ、気力を失いそして力を吸われ…
「気が、つきましたね テリー」
「ルビス様…」
いつも使うベッドに横たわっている
なぜこうも意識がはっきりしている?
力を失ったんじゃないのか、俺は…
「私が、貴方が眠る前に言った言葉を… 覚えていますか?」
「もちろん… 覚えてます」
眼を閉じ、瞬間を思い出す
「方法があると…」
「……世界を救うにはテリー、貴方しかいません
そしは姉ミレーユをも救うことになるのです」
「本当ですか?!」
勢いよく身を起こし、続く言葉を求める
ルビスはベッドの隣へ立ち、厳しい口調で語り始めた
「今からあなたの力を取り戻します
私は─ あなたが眠り、しばらくこの世界の事を探りました
魔物には知り得ない力を使いましたが─
調べていく内、私に残された能力で力を取り戻せる事がわかったのです」
「ルビス様は……?」
「…この世界で、あなた方と同じように私の力はほとんど抑えられています
更に肉体を持った事で、元々持っていた能力のほとんどを失いました
元の姿に戻ることは不可能、戦いに役立つ事はないでしょう
それに力を戻す事が出来るのは、一回だけなのです」
「で、では…」
「テリー、あなたに託します
たったの一回、この一回が後世の世界を決定付ける
失敗は… 許されません」
……力を取り戻した後、どうすれば?
「あなたはある場所へ向かい…
そこには無数の光が浮かび……
その光は奪われた力や魔力、肉体の精神を形作る元─ "いのちの源"を見るのです」
「命の みなもと…?」
命の根源があるというのか、こんな世界に…
「これを持ち"いのちの源"へ触れて下さい
私の考えが正しければ、タカハシは目を覚ますでしょう…」
ルビスがそっと小さな玉を手渡す
「それはメイが持っていた静寂の玉
彼女が肉体を離れる際、タカハシに託した持ち主の精神を込める事の出来る特殊な石です」
肉体を離れる……?!
「それは… 彼女は死んだと?」
俺はその表現から導き出した言葉で問いかけた
その問いに、ルビスの視線が眠るタカハシへと移る
「……タカハシの手で傷つき、そして守るため彼女は命を落としました」
「えっ??」
「タカハシを手助けしてほしいという私の願い、彼女は命で結んでくれたのです」
どういう事だ?
タカハシが殺したのか??
状況がわからない…
「…ゾーマの罠に掛かり、タカハシはメイを自分の手で斬ってしまった
それでも彼女は、私の願いを…
自身の想いもあったと思いますが究極魔法マダンテでタカハシを助けようとし、命を落とした
ですが… ですがマダンテをもってしてもゾーマが斃れることは無く……
そうして彼、タカハシの開放されようとしていた力は深いところへ、絶望に飲まれ、意識と共に沈んでいった…」
「なんと、いう…」
マダンテがどういった魔法なのかはわからなし、俺にはあいつの苦しみがわかりようもない
さぞ、無念だっただろう……
「この静寂の玉に込められたメイの精神が、"いのちの源"と共鳴しタカハシに働きかけてくれるはず…
メイならば、今のタカハシを闇から引き出す事が出来る…
神とはいえ人間の深く広大な心理全てに対し、働きかけを行うことは出来ないのです
ですから私には、いえ、世界は… "静寂の玉に込められた想い"を信じるほかありません」
神にもわからない人間の深さ
土壇場で力を発揮する、そういう部分がきっと計れない所なんだろうな
俺は彼女とタカハシの関係を知るわけではないが、命を懸けて守ろうとしたんだ
その想いは本物、そう感じる
「ですが、もしうまくいったとしてもタカハシの力はどうなるのです?
一回しか戻せないのでは」
「それは心配いりません
タカハシが意識を取り戻せばそのような事、容易に跳ね除けることができます」
そうか…
ルビス様がここまでしようとするタカハシは、きっと特別な力を持つに違いない
わからない事も多いが今は世界のため姉のため
詳しい事は後で聞けば良い
未来に希望を見出せた俺は、さっそく行動することにした
©2006-AQUA SYSTEM-