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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

無くした希望
「な…… なぜ! なぜこのような所へ…!!」

思わず椅子から飛び降り、片膝を付く
俺は、人間を守る神であるルビスが人間を守らなかったのか
それを聞くより先に、こんな場所へ来た理由を問いかけた

「以前にお話ししました、タカハシの事…
 私はタカハシに全てを託し見てきました
 ですが彼は、ゾーマに破れこの世界へ飛ばされてしまった…」

な…!
タカハシは、魔王とすでに戦って……!

「この世界はゾーマが新たに作った世界
 10番目の世界といえるでしょう
 そしてこの10番目の世界は、私たち神には手を出すことが出来ない世界」

何を、何が今、起こっているんだ
タカハシは魔王に敗れたといい、神であるルビスが目の前に居る
そうして世界が違うとかなんとかと…

「手を出せなくとも、私にはタカハシを導く責任があります
 この世界の事は全く見ることが出来なかったのですが…
 魔物を欺きようやく、この世界へ取り込まれる事が出来た」

わからない事だらけだけど、ここにルビスが来た
神が、直接きてくれた
これは世界が救われる前兆じゃないか…!

「ルビス様! では、タカハシをすぐ目覚めさせて…!」
「いいえ 残念ですが、私の力ではどうする事も出来ないようです
 なぜなら、今の彼は誰の声も届かない深く暗い場所に佇んでしまっています…
 これでは私の声など、役に立たないでしょう」
「え、ですが!
 あなたは神だ!」
「…テリー、言っておかねばなりません
 通常の私は肉体を持たず、見える姿は貴方たち人間の思う女神の姿…
 私はここへ来るため人間の姿へと形を変え肉体を持ちました
 その時、ほとんどの力を消費し、肉体を持った瞬間、多くの力を失ったのです…
 今の私にタカハシを呼び戻す力などありません」
「そん、な……」

じゃあ…
姉さんも助けることが出来ないじゃないか…!

「じゃあ… ルビス様… 一体、何の為に…」

身体から力が抜け、壁を背にだらしなく足を伸ばす
少し、気力というか精神が、抜けていく感じがする

ああ…
俺はもう、だめだ…
力を奪われていくのがわかる…

「ルビス…様……」

無表情のルビスに、俺は話しかけた

「俺はもう、だめです…
 これ以上、気持ちを強く持つことなど、出来ない…
 神でさえ、どうすることも出来ないのでは、タカハシが目覚めたとしてもきっと……」

静かに、言葉を聞くルビス

「せめて、せめて姉さんを自由にしてやる事は、出来ませんか……」

もう、動けない…
俺は今から闇に、飲まれるんだ…

「……方法が、無いわけではありません」

ルビスのその言葉に、安心した俺はやがて、飲み込まれた



姉さん、ごめん
姉さんはルビス様が、助けてくれるよ…
俺は先に、眠ることにする………
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