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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

オリハルコンと魔力の力[1]
「お世話になりました」
「メイの亊、よろしくお願いします」

朝になり、俺はカシムとネリスに礼を告げていた
ネリスが俺に言葉を掛け、カシムは黙ってうなずいている

「今度は勇者様もお招きするわ いってきます!」

メイが元気良く両親に挨拶をし、俺と共に家を出る
俺は食事をして眠っただけだが家族は遅くまで話し込んでいたようだ
娘を苛酷な旅へと送り出す親の気持ち、俺には今後も理解できそうにない

「スープ、美味しかったよ」
「ありがとう 私が唯一、自慢できる料理なのよ」
「唯一? 他は?」
「他は… 勉強中です!」

ちょっと怒った表情で、メイは大声で答えた

旅をしている間は否応なしに軽い食事になってしまう
だけど俺は朝からそんなに腹へ入れられない
だから朝食は昨晩メイの作ったスープを出してもらった
調理されている食事はこれで当分お預け、メルビンに出会えれば別だけど方向が違うから会えないだろう

メイの家から歩き、宮殿正面の大通りへ出る
真っ白な建物には真っ白な店の看板
いくら白が好きだといっても、これじゃ迷うよなぁ

「旅に必要なものを用意しましょう」
「うん、店に寄って準備だ」

話し合い、まずは食料品店へ入り食べ物を買った
栄養価が高く保存も利く、いつもと変わらない乾物だ
それから魔法の鎧の代わりを探すため、武具の店へ

「いらっしゃいませ!」

小さな店主が出迎える
この店は武器と防具両方を扱っているため広い

「鎧を見せてほしいのですが」
「鎧ですね? それなら─」

店主がカウンター奥のカーテンをシャッと引く
その向こうには鎧が二つと木の人形に着せられた衣が一着

「左から"水の羽衣"、"ドラゴンメイル"、"魔法の鎧"となっております」

俺が扱えそうなのは魔法の鎧とドラゴンメイルの二つ
水の羽衣はヒラヒラしすぎていて、剣を持って前に出るには不向きだ
メイはどうする?

「あ、私は大丈夫よ 良いローブを着ているから」

メイが身に着けているのは、薄いベージュで所々がキラキラ光るローブ
そういえば昨日までのローブと違う

「昨夜、母にもらったの プリンセスローブっていって"炎"、"風"、"氷"の魔法ダメージを軽減できるのよ」
「へぇ たいしたローブなんだな」

耐性というやつか
これから長い旅になるんだし、そういう事も考えていかなきゃいけない

「耐性なら魔法の鎧が良いと思いますよ!」

店主がそういいながら魔法の鎧をカウンターへ乗せる

トルネコもちゃんと耐性を考えて俺に装備させていたんだな…

「ドラゴンメイルは耐性無いんですか?」
「炎に対してだけ、高い耐性があります」

"炎だけ"なのか、うーん…
赤い色がかっこいいんだけど、守る範囲は広いほうがいいもんな

「じゃあ、魔法の鎧を」
「ありがとうございます! お代は9000ゴールドです
 今装備している鎧は… おやそれも魔法の鎧ですか!
 穴が空いているようなので1000ゴールドで引き取りましょう
 8000ゴールドのお支払いをお願いいたします」

思ったより高い 金が…
しかし穴があいたままでは気持ち悪いし仕方がないか、この鎧を引き取ってくれるんだ…

俺は残った金17000ゴールドから8000ゴールドを支払う
その場で、穴の空いた魔法の鎧を外し店主へ渡した後、新しい魔法の鎧を装備した

「とてもお似合いですよ! ありがとうございました!」

同じ鎧でも新しいモノは気分がいいな

「鎧だけでいいの?」

メイが俺に問いかける

「そうだなぁ… 兜は重いし、これでいいよ」
「あ! 盾はいかがですか? どんな攻撃でも弾き返せますよ!」

店主が勢いよく提案し、別のカーテンを引く
見ると盾がズラリと立てかけられていた

「すみません 俺は盾を扱えないんです…」
「そ、そうですか 最近、盾が売れないんですよねぇ」

そういえばピピンもテリーも、そしてトルネコも盾は使ってなかった
魔物くらいだろうか、使っているのは
とりあえず俺には必要無いな

「じゃあ、これで…」

今度は武器を薦められてしまいそうな雰囲気だったから、急いで武具店を出る
武具屋の扉から"またどうぞ!"と店主の声が聞こえた

「さて もう準備はいいかな」
「ええ、町を出る?」
「そうしよう」

遠くに見える町の入口へちょっとの時間でたどり着き、階段を昇る
昇りきると、まぶしい陽射しが出迎えてくれた

やっぱり本物の陽は違う
なんというか、暖かさがあるもんな

「よし どっちの方向へ向かえばいいんだ?」

地図を出しながらメイに聞く

「ここからだと… 南ね、この偽物の町をこのまま通り過ぎれば分れ道があるわ
 その先は私も行ったことが無いから地図を頼りに、迷わないように」
「フィッシュベルへ向かう途中、何回か迷ったからな…
 今度はしっかり確認しながら行くよ」

地図をしまい、偽廃墟を通り過ぎる
しばらく進んだところで振り返って見ると、なるほど
普通の人間でもこの距離から眺めれば本物の廃墟だ
しかしこれじゃあ何も知らない旅人はきっと廃墟だと勘違いして素通りするか近付かないだろう

「ホイミ、教えてあげる」

イシスの偽廃墟を眺めていると突然、メイが言った

「あ いや、いいんだ魔法は任せるから」
「任せるって、魔力を持ったのに魔法を使わないつもりなの?」
「うーん、今はオリハルコンと魔力の二つの力を見てみたい
 魔法はまた今度、教えてよ」
「そう? タカハシがそう言うなら良いけど」

ルビスの事を言えないのは面倒だ
"誰にも言うな"とは言われてないんだから構わないんだけど、説明するのがなぁ
俺が違う世界から来たなんて、とてもじゃないけど言えない
今はなんとかなってるから、別にいいか 俺はこの世界からいなくなるんだしな
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