[] [] [INDEX] ▼DOWN

タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

オリハルコンと魔力の力[2]
ちょっと不満そうなメイと並び、チゾットへ向け再び歩きだす
俺は魔力とオリハルコンの関係が知りたくて魔物と戦いたくて仕方がなかった
そっと、剣に手を添える

…そういえば魔力の使いかたを知らない
魔法と同じような感じなのだろうからメイに聞いておこう

「魔法を使うには、使おうとする魔法を思い描く事から始めるの」
「魔法を思い描く?」
「例えば、簡単に言うとメラなら炎を相手にぶつける様ね」
「なるほど そうすればメラが出るのか」
「そう そうすることで術者の魔力と反応し魔法が使える」
「メイはメラミっていうでっかい炎をよく使っているけど、そういう魔法はどこで教えてもらえるんだ?」
「魔法のほとんどは書物や人から教えてもらったり… 中には魔法自体を封じ込めてある特別な道具からとか」
「特別な道具か きっと賢者の石みたいなものなんだろうな」
「たぶん似たような物ね でも魔法の効果を知ったとしても使えるようになるには訓練が必要なのよ」
「ははぁ 訓練が必要だなんて、剣術と同じなんだなぁ」
「強力な魔法を扱うにはそれ相応の魔力も必要になるの 魔法使いはただ叫んでるだけじゃないのよ」

魔法を使うにも訓練が必要か
じゃあ、オリハルコンの剣が魔力で強くなるって言うのも訓練が必要なのかもしれない

その後、魔力の話を中心にしながら歩き、夜を迎えた
メイは毛布にくるまって休んでいる
夜は交替で見張りをするため、交互に休む
俺は焚火を前に座り、干し肉をかじりながらボウボウと踊る炎を眺めていた

テリーは今ごろどうしてるかな
メルビンとうまくやっているだろうか
剣の事になると他の事が考えられなくなるから、心配だ
もしかすると武器商人を目指していたりしてな はは…

俺は眠い目をこすりながら、そんな事を考え交替の時間まで過ごした


「おはよう…」

今日も朝からよい天気
結局、魔物が現われることはなく夜は明けた

水筒の水で顔を洗い、草の茎で歯を軽くこする
歯ブラシが欲しいけどこの世界には存在しない

「チゾットまでどれくらいかかるかな」
「わからないわね 私も行くのは初めてだから」
「ゆっくり進んで行こう いつかたどり着くだろうし」
「…朝から大雑把ね」
「ゆっくり眠れなくて… 正直、ベッドの上で寝たいよ」
「私が我慢してるんだから、男のあなたはもっと我慢しなきゃ」

よくわからないメイの言葉に思わず言う

「いや、そのりくつはおかしい」
「なにか言った?」
「……いえ」

女を敵にしちゃぁイカン、ここは大人しくしとこう…

イシス周辺の景色とは違う開けた大地
所々に密集した木々があり地面を短い草が覆いつくす、メルキド周辺に良く似ている

寝起きの頭がハッキリしてから歩きだし、三十分ほどでハイオークが行く手を阻んできた

「ここは俺にまかせてくれ 魔力と剣の威力を試したい」

荷物を降ろし、オリハルコンの剣に手をかけながら俺が言う

「危なくなったらすぐに回復しに戻ってきて」
「わかった」

メイには後ろで待機してもらう

「ウゴゥゥ」

俺は剣を構え、ハイオークの前に立つ
剣に対して魔力を送り込むイメージを作り、柄をギュッと握り斬りかかった
剣尖が弧を描き、動きの鈍いハイオークへ刃が当たるギリギリ─

勝負は一瞬で付いてしまった
ゴウと刀身が金色の光を纏い、上半身と下半身がまるで達磨落としのように跳ね、土の上へ不様に落ちるハイオーク
剣は魔物の体には触っていない
だが明らかにいつもと違う感触 それだけだった

「う…! これが オリハルコンの、力…!」

魔物を倒したというのに、剣から放たれる光は一向に収まろうとしない
俺の身体から力を、魔力を吸い取りつづけているような感覚

このよくわからない現象を抑えようと必死に違うことを考えたりしたが─
やがて俺はその場へ膝からガクリと崩れ落ち、立てなくなってしまった
立てなくなっても柄から手を離すことが出来ない
刃にまとわりつく金色の光は一層、大きく強く激しくなる

「魔力を抑えて! お腹の、下腹部へ魔力を戻す様を!」

メイの声に従い、剣から下腹部へ魔力を呼び戻すイメージを必死につくる
すると、カシャリとオリハルコンの剣が手から滑り落ち、力を吸い取られる感覚も無くなった

「な、なんだったんだ今のは…」
「…たぶんあなた自身が魔力の扱いに慣れていないから、このままだったら魔力どころか体力全てを吸い取られていたわね」

吸い取られる?
もしメイの助言がなかったら危なかったって事なのか

"ふぅ"と一息ついて、立ちあがる

「助かったよ、ありがとう
 それにしても魔力を扱うってのは難しいんだな」
「剣に与えたり自分へ戻したりするのはすぐに出来ていたから、すぐに慣れると思う
 後は上手に、自分の思う通りに強弱を付けられれば更に良いわね」
「強弱か それは魔力で出来たあの光の強さを変化させるって事かな?」
「そうよ メラでも、魔力を抑えれば弱くなり効果を抑えられる
 そして魔力を強めれば効果が上がり強くなる オリハルコンの剣も同じだと思うの」

そういう事か 魔力ってのも奥が深い
うまく扱うにはやっぱり訓練が必要って事だ

「今後は意識して魔力をコントロールしなきゃならないな
 戦いかたが全く変わってしまいそうだ」
「こんとろーる?」
「えっと… 操作って意味だよ 魔力を操作しなきゃならないって」
「変な言葉ね どこの言葉?」
「どこの言葉って言われても… 何か変な本でも読んだのを覚えていただけかも」
「ふぅん」

存在しない言葉があるっていうのは、難しい
思わず普段遣いの口調になってしまう、元の世界の

「魔力を増減させるのはそんなに難しい事ではないわ
 経験を積んでいけば自然に体得できるから、あまり考えすぎないで」
「それを聞いて安心した しばらくは俺一人で戦うよ」
「私が楽でいい案ね 出来ればずっと一人で戦ってもいいのよ?」
「いや、それはちょっと…」

実際、魔力をうまくコントロールできるようになれば一人で戦っていけるような気もする
敵に触れることも力一杯叩きつける必要もなく、切り裂いてしまう力
だけどテリーみたいに戦闘マニアじゃないから遠慮しておく

「あ、ちょっと待って」
「ん?」
「魔力は大丈夫? まだ残ってる?」

"残ってる"というのはどういう…

「魔力は限りがあるから、時々休んで回復させなきゃならないの
 経験を積んでいけばその上限は際限なく上がっていくのよ」
「その"残った魔力"はどうやったらわかる?」
「さっき言った下腹部へ魔力を集中させて
 そうして目を閉じると青い光が見えるから、その光の眩しさでわかるはずよ」

下腹部っていうのは丹田の事か
気功みたいだな 本で読んだことがある

「どんな光か、教えてね」

目を閉じ、体全ての末端から力を丹田へ集めるイメージを頭の中で描き、魔力を集中させた
少しして、まぶたの奥に大きな青い光が浮かびあがってくる
その輝きは、少し淋しそう

「大きな光が… でも輝きは弱い」
「魔力が残り少ないと弱い光になるの
 大きな光という事は、魔力自体は強いのね
 でも剣にかなり吸い取られたみたいだから… 少し休んでいきましょう
 魔力の回復は身体を休めるだけでも自然に回復するんだけど、座って今みたいに目を閉じ
 静かに、魔力を下腹部で造り出すようにすれば早く回復できる
 熟練してくるとあっというまに回復できるようになるから」
「わかった」
「今の魔力を知るのも、経験していけば目を閉じて集中しなくても出来るようになる」
「なんだかめんどうな事が増えたなぁ」
「ふふ 頑張ってね
 魔力を集中する練習をたくさんしておくと良いわ」

妄想なら得意分野だし─

「…妄想じゃないから」

!!
まずは思ったことを呟かなくなる練習が必要みたいだな……
[] [] [INDEX] ▲TOP

©2006-AQUA SYSTEM-