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タカハシ◆2yD2HI9qc.の物語

メイの両親
「ごめん」

宮殿を出てすぐに謝る俺
町の明るさが全く変わらないためどれくらいの時間なのかがわからない
太陽の動きがわかっても早朝、朝、昼、夕方、夜くらいしか判断出来ないが

「儀式で眠る人なんてまずいないから、驚いただけ 泣いてなんかないわ」

目が赤くなってるじゃないか
心なしか鼻声だし
ルビスもタイミングを考えてくれよ…

「ところで、魔力を引き出してもらった感想は?」
「感想? …あまり実感が無いな、俺は魔法を使えないし」
「え、そうなの? 神父さまにそう言われたの?」
「ルビス─ じゃあない! …そうだろうなぁって思っただけ」

危ない、思わずルビスの事を話してしまうところだ

「ルビス様がどうかした?」
「なんでもないんだ たぶん、夢でもみたんだよ ははっ」
「ふーん… 後で簡単な魔法を教えてあげるわね」

困ったな
使えないってわかってて教えてもらうのは、悪い
しかしどう説明したらいいんだろうか

「いや、今は剣を─」
「遠慮しなくてもいいのよ 私は賢者なんだから教える事くらい簡単」

仕方ない
教わっても使えない所をみてもらえば、諦めてくれるか
……なんか悲しいけど

「わかった 楽しみにしておくよ
 それで今どこへ向かってるんだ? 宿屋か?」
「当然、私の家よ
 お金払って宿屋に泊まるなんて、家があるのにもったいないわ」
「そっか じゃあお世話になろうかな」

助かった
これで宿代が浮く
1ゴールドだろうと無駄遣いは出来ないから節約だ

宮殿の正面の大通りを途中で曲がり、民家らしき建物がある通りを歩いていく
"民家らしき"というのは、どの建物も人の住む家に見えないからだ

「ここよ 結構立派でしょ? どう?」

メイが腕を右へあげる

二階建ての四角い石造り
雨が振らないから雨樋を要しておらず余計なでこぼこが無い本当に四角い家
そして空間制御のおかげかとてつもなく広い 軽く百坪はあるだろう
例に洩れず外壁は白だ

家の大きさと合わない扉を開け家へ入る
メイの両親は俺を歓迎してくれた

娘が男と旅をしてるなんて正直、なにか言われるんじゃないかと思っていたが…

父親はカシムといいドワーフ
母親はネリスといい人間
二人はとても温和で、やさしい
俺とトルネコの話をじっと聞いてくれ、それからメイを呪いの解けた勇者様へ送り届けてほしいとお願いされた
メイとの旅は封印の洞窟までと決めていたのだが、その場の雰囲気に押されて"はい"と返事をしまう

この世界で何度、妥協と安請け合いをしてきただろう
俺のこの行動が後々トラブルを起こさなければ良いけど

しばらく談笑し、やがて食事が運ばれてきた
ネリスの作る料理はとても美味しく、メイが作ったという何かのスープも同じく美味い
旅ではゆっくり食事を作る時間も設備も無いから、俺はしっかり堪能した

食事後、疲れていた俺は失礼かと思ったが眠気を我慢できず先に寝かせてもらう事にし、湯を借りた
その後客間へ案内されたのだが、光苔は植えられておらず真っ暗
客間と寝室は、俺はすぐ寝たいので断ったが移動できる台に光苔を植えたモノを使うそうだ

俺が客間へ入った後も家族の会話は聞こえたけど何を話していたのかはわからない
メイと両親は明日から長い時間会えなくなるんだ、いろんな話があるんだろう
気にせず柔らかく厚い布団に潜り込む

明日からまた固い地面と薄い毛布と渇いた食事─
その事を忘れるように目を瞑り、俺は一瞬にして夢の住人となった
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